PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?知っておきたい症状や特徴について解説

PTSD・トラウマ

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?知っておきたい症状や特徴について解説

トラウマ体験がきっかけとなり起こるPTSD(心的外傷後ストレス障害)。
自然治癒するケースもありますが、症状が長引き慢性化することも。異変に早く気付き改善を目指すためには、PTSDについて理解しておくことが大切です。

今回は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の特徴や症状、治療法について解説します。PTSDに悩まされたときの相談先も含めてお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。

 

このコラムの監修医師

大垣 宣敬

新宿うるおいこころのクリニック院長

大垣 宣敬

患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。
私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。

目次

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、強い恐怖やトラウマになる体験をした後に起こる精神的な障害のことです。「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字をとってPTSDと呼ばれており、日本では阪神淡路大震災をきっかけに知られるようになりました。
症状としては、フラッシュバック、悪夢、回避行動、感情の萎縮などがあげられ、過去の体験により日常生活に支障をきたすことが特徴です。
多くの場合は自然治癒するといわれていますが、トラウマ体験から6カ月経過しても回復しない際は、自然治癒が難しいため治療が大切となります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の特徴

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の特徴

PTSD(心的外傷後ストレス障害)では、トラウマ体験を連想させる事柄に対して恐怖条件付けをすること、トラウマ体験の記憶が断片化していることが特徴です。
例えば、過去に暴力事件に巻き込まれた場合、特定の場所や加害者だけでなく、間接的に連想させるような空間や人の特徴に対しても強い恐怖を感じます。
また、断片化した記憶はネガティブな感情と結びついており、不安定でコントロールを失いやすいため、トラウマ体験が突然フラッシュバックすることもあります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、トラウマ体験に巻き込まれたり目撃したりして心に傷を負った際に、「侵入症状」「過覚醒症状」「回避・麻痺症状」「否定的な認知・感情」の4つの症状があらわれます。
それぞれの症状の特徴は、以下のとおりです。

  • 侵入症状:トラウマ体験を突然連想し、今まさに体験しているような感覚になる。
    (例)退役軍人が、花火の音で体験を思い出す。
  • 過覚醒症状:常に不安・緊張状態が続き、些細な刺激にも過剰に反応する。
    (例)少しの物音でも、あり得ないくらい驚いてしまう
  • 回避・麻痺症状:トラウマ体験を連想させる状況を避ける、考えないようにするあまり他人事のように感じる
    (例)交通事故の経験から、横断歩道を渡るのを避ける。レイプ被害から、人と会話することを避けて殻に閉じこもる
  • 否定的な認知・感情:「世の中は危険だ」「自分が悪かった」など否定的な考えをしてしまう。
    (例)トラウマ体験をしたのは自分のせいだと感じ、すべてに対してネガティブになる

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因

極度のストレスや恐怖を伴う出来事が、記憶に深く刻まれたり消せなくなったりすることが原因と考えられています。
生物学的には、トラウマを受けた際に大量の神経伝達物質が出ることで、偏桃体の反応を高めて恐怖条件付けを促したり、記憶に関わる器官を刺激してより記憶が定着したりするといわれています。
また、過覚醒症状はアドレナリンの過剰分泌が関わっているため、交感神経を活発にさせる飲酒やカフェイン摂取、激しい運動などの刺激が症状を引き起こす原因になるようです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する割合

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する割合

日本のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の生涯有病率は1.3%といわれています。
また、体験したトラウマの種類によっても発症率が変動するとされ、生死の危険が比較的低い自然災害よりも、精神的苦痛が大きい上に他人に打ち明けづらい戦闘・レイプといった体験の方が発症率は高いようです。

参考文献
・PTSD / 心的外傷後ストレス障害|e-ヘルスネット(厚生労働省)

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を見逃していることも

PTSD(心的外傷後ストレス障害)に伴い抑うつ症状がみられたり、初診ではトラウマ体験について話さなかったりするため、他の精神疾患に隠れて見逃していることも少なくありません。
例えば、最初は不眠症と診断されたが後々PTSD(心的外傷後ストレス障害)だと判明したり、診察を重ねるにつれてトラウマ体験を打ち明けたりするケースがあげられます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の検査方法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の検査方法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断には、心理的評価や問診が用いられます。
医師は、患者のトラウマ体験や症状を詳しく把握し、「治療と並行して法的保護などの支援制度を活用すべきか」「他の精神疾患を併発している場合の治療優先度」「自然治癒との兼ね合い」を判断します。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準は、以下のとおりです。

  • ①実際に重傷を負う、瀕死状態に陥る、暴力を受けるなどの経験をする。又はそのような場面を目撃した、身近な人が体験したと突然知らされた
    ※他人の体験を人づてに聞いた場合は該当しないが、体験に直面しなければいけない職業に就いている場合は該当する(遺体収容業者、警察官など)
  • ②「侵入症状」「過覚醒症状」「回避・麻痺症状」「否定的な認知・感情」のすべての症状が一ヶ月以上続いていること

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、患者の状態や進行度に応じてレベル1~3に分類されます。
レベル1では落ち着きを取り戻すための支援、レベル2では心理療法によるPTSDの発症予防を実践し、PTSDに分類されるレベル3では薬物療法や心理療法を用いた治療を行います。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法①支援を受けていることを実感するための心理的保護

家族から理解を得るための心理教育、福祉サービスの活用、生活習慣の確認などを通して患者が落ち着きを取り戻し、支援を受けていることを実感するためのサポートを行います。
また、リラクゼーションとして呼吸法や瞑想などを練習したり、カフェインや飲酒が及ぼす影響を指導したりして症状の悪化を防ぎます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法②薬を用いた薬物療法

薬物療法として、日本の保険医療で適用が認められているのは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されるセルトラリンとパロキセチンのみです。
しかし、過覚醒症状が強い場合は抗うつ薬、SSRIの効果が弱い場合はSNRIや三環系抗うつ薬、再体験症状が強い場合は向精神病薬など、症状によっては他の薬剤を使用することもあります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法③トラウマ体験を整理する心理療法

心理療法としては、トラウマ体験からくる苦痛の解消を目指す持続エクスポージャー療法を行います。治療では、断片化した記憶を整理することで、生まれる恐怖と実際に起きた体験が違うと認識させ安心感を与えます。

最初は治療に不安を覚えますが、効果がみられると治療に対して前向きになるようです。また、他の心理療法として認知行動療法やEMDRもあげられますが、治療の目的は変わりません。

参考文献
・ストレス・トラウマ 第一部 基本知識|国立精神・神経医療研究センター

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を克服するためのケア方法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を克服するためのケア方法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を克服するためには、日常生活における自己ケアも大切となります。ここでは、大切な2つのポイントをお伝えするので、日々意識しながら治療を進めていきましょう。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)のケア方法①無理をせず自分のペースで頑張る

トラウマ体験による症状はすぐに解消されるものではなく、徐々に時間をかけて治していく必要があります。焦って心に負担をかけてしまうと症状が悪化する可能性も考えられるので、中々治らないからといって無理をすることは避け、自分のペースで頑張ることが大切です。
また、段々と成果がみえるようになると、回復に対して前向きな気持ちを持てるようになります。気持ちが変わっていくことは心の安定につながるので、焦らずゆっくりと回復を目指しましょう。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)のケア方法②1人で抱え込まず誰かに相談する

症状に悩まされている場合は、1人で抱えずに家族や友人に相談することが大切です。
誰にも相談せず放置してしまうと症状が悪化する可能性があり、自殺企画や依存症リスクを高めます。
「身近な人には相談したくない」「頼れる人がいない」と悩んでいる場合は、国や自治体、病院が運営している相談先を頼ることもおすすめです。適切な支援を受けることで、心の負担が軽くなったり解決策を知れたりするので、勇気を出して相談してみましょう。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の相談先

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の相談先

ここでは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされたときの相談先をご紹介します。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の相談先①保健所や精神保健福祉センター

保健所や精神保健福祉センターでは、PTSDを含む精神的な問題についての相談ができ、必要に応じて医療機関やカウンセリングサービスを紹介してもらえます。
また、厚生労働省が設置している「働く人のこころの耳相談」では、仕事に関する悩みを産業カウンセラー等の相談員に電話やSNS、メールを通して相談できるので、周りの目を気にすることなく気軽に話せます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の相談先②精神科・心療内科

精神科・心療内科では、薬物療法や心理療法を用いた専門的な治療が受けられます。病院によってはカウンセラーが在籍している場合もあり、悩みや心の不調を打ち明けやすい環境が整っています。
精神科・心療内科に行くことで、解決策が知れたり症状緩和を目指せたりできるので、症状がつらい場合は早めに相談すると良いです。

新宿うるおいこころのクリニックでもPTSD(心的外傷後ストレス障害)の相談が可能です

今回は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の特徴や症状、治療法について解説しました。
PTSDは、トラウマになる体験をした後にみられる精神的な不調のことです。自然治癒するケースもありますが、時間が経つと改善が難しく、適切な治療が大切となるので早めに相談すると良いです。
「どこに相談すればいいか分からない」「誰かに打ち明けたい」と悩まされている場合は、保健所や精神保健福祉センター、精神科・心療内科に相談することで、適切なサポートを受けられるので活用してみましょう。

新宿こころのうるおいクリニックでも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の相談が可能です。
臨床心理士、公認心理士在籍のカウンセリングや専門医による詳しい検査により、悩みを打ち明けられたり気持ちを整理できたりします。治療では、症状に合わせた治療提案が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は自然治癒しますか?

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は自然治癒するケースもありますが、トラウマ体験から6カ月程度を過ぎると自然治癒する確率は減少すると考えられています。
自然治癒が難しい場合でも、適切なサポートにより回復を目指せるので、放置せず病院へ受診することが大切です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)はどんな意味がありますか?

PTSDは「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字をとったもので、心的外傷後ストレス障害という意味があります。
心的外傷とは、普通は起こり得ないようなつらい体験(トラウマ)のことをさし、体験により生じた精神的不調(ストレス)により、日常生活に支障が出ている状態をPTSDといいます。

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