人前に出ることに恐怖を感じ、日常生活に支障を及ぼす社会不安障害(SAD)。
症状は、薬によって改善が見込めますが、副作用や注意点を知っておかないと、悪化リスクにつながることも。
そこでこの記事では、社会不安障害(SAD)の治療に使用する薬や副作用、注意点について解説するので、社会不安障害の症状に悩んでいる方や、治療を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
このコラムの監修医師
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。
私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
社会不安障害(SAD)は薬で改善される?
社会不安障害(SAD)は、特定の状況や人前で恥をかくのではないかと強い不安を感じ、パニックや極度の緊張に襲われる精神疾患です。
明確な原因は判明していませんが、脳の神経伝達物質の機能異常により起こると考えられており、薬を用いることで改善を目指せるといわれています。
社会不安障害(SAD)は、症状に合わせた薬の服用が大切となるので、医師と相談しながら薬を選択しましょう。
社会不安障害(SAD)が薬で治るメカニズム
明確な原因は判明していませんが、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの機能異常が関与していると考えられており、薬を使用することで脳内を調整できるといわれています。
そのため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いると、セロトニンの機能の正常化が果たされて社会不安障害(SAD)の改善が図れます。
参考
・社交不安症の薬物療法|塩入 俊樹(岐阜大学大学院医学系研究科精神病理学分野)
薬で改善できる社会不安障害(SAD)の主な症状
社会不安障害(SAD)としてあらわれる症状は、薬で不安感を軽減させることで改善できるといわれています。主な症状は以下のとおりです。
赤面 | 緊張や不安を感じた際に、顔が赤くなることがある |
手足の震え | 極度の緊張によって手足が震えることがある |
多汗 | 人前に出るときに、手や顔に汗をかきやすくなる |
食事がのどを通らない | 人前での食事が難しいケースがある |
口の渇き | 不安が高まると、口が乾くことがある |
吐き気 | 強い不安や緊張で、胃が不快になり吐き気を伴うことがある |
肩こり・頭痛 | 慢性的な不安から肩こりや頭痛があらわれる |
疲労感・倦怠感 | 不安や緊張状態が続くことで、常に疲れを感じることがある |
頻尿 | 不安が高まるとトイレに頻繁に行きたくなる |
動悸・めまい | 心拍数が上がり、胸がドキドキしたり目が回ったりする |
社会不安障害(SAD)から合併したうつ病や依存症にも薬を使用
社会不安障害(SAD)からうつ病や依存症を合併した場合も、薬を使用した治療を行います。
薬を使用することで、体内に不足している物質を補えたり、働きを正常化したりできるといわれており、うつ症状ではセロトニンの機能を高める薬、不眠症状には眠りを導入する薬など、個々の症状に合わせた処方により改善を目指します。
下記記事では、社会不安障害(SAD)の原因や症状についてより詳しく解説しています。
社会不安障害(SAD)に有効とされる薬の種類
社会不安障害(SAD)の治療では、主に「SSRI」「SNRI」「TCA」「BZ」が使用されます。ここでは、それぞれの薬の特徴や副作用についてお伝えします。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬「SSRI」
選択的セロトニン再取り込み阻害薬「SSRI」は、脳内のセロトニンの再取り込みを阻害し、セロトニンの濃度を高めることで働きを活性化させる薬です。効果としては、気分の安定や抗うつ作用、ストレスに対する過剰な不安の軽減が期待できるといわれています。
「SSRI」の副作用
服用開始初期には、不安や焦燥感が強まる傾向にありますが、症状は一時的なものといわれています。また、悪心や胃部不快感、攻撃性、興奮などの副作用がみられる際は、担当医に確認することが大切です。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬「SNRI」
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬「SNRI」は、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、それぞれの神経伝達物質の濃度を高める薬です。SSRIと作用が似ていますが、ノルアドレナリンにもアプローチできるという違いがあります。
服用することで、抗うつ作用と抗不安作用により意欲回復が期待できるほか、ストレスから生じる心因性疼痛にも効果があるようです。
「SNRI」の副作用
副作用としては、眠気や頭痛、吐き気、全身倦怠感などがあげられます。
また、自殺念慮リスクも0ではないようですが、リスクよりもメリットが大きいと考えられているので、副作用に注意を払いながら服用することが大切です。
三環系抗うつ薬「TCA」
三環系抗うつ薬「TCA」は、セロトニンやアドレナリンだけでなく、アセチルコリン受容体、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体等に対する再取り込み阻害作用を持つ薬です。
抗うつ作用が期待できますが、副作用が生じやすいため使用が限られていることが特徴で、指定の薬物が効かなかったり使えなかったりする場合に処方されるケースが一般的です。
「TCA」の副作用
三環系抗うつ薬「TCA」の副作用としては、眠気やめまい、せん妄が生じるといわれています。また、非常にまれな事例ですが高熱や手足の震え、動悸といった悪性症候群が出る可能性があり、これらの症状が複数みられた際は担当医に確認することが大切です。
ベンゾジアゼピン系薬物「BZ」
ベンゾジアゼピン系薬物「BZ」は、GABA受容体・複合体を作るベンゾジアゼピン受容体に作用する薬です。
GABA受容体・複合体は神経興奮を抑制する作用を持つため、不安が出た時に服用することで症状が軽減されるようです。また、抗不安作用のほかにも、筋弛緩作用、催眠作用、抗けいれん作用があるといわれています。
「BZ」の副作用
即効性がある薬ですが、依存リスクが生じるため長期使用は推奨されていません。
薬の種類によっては、使用した翌朝に眠気や頭重、頭痛、ふらつきなどの副作用が出るといわれており、突然の中断により症状が悪化するケースもあるようです。
また、高齢者の場合は、代謝機能が低下していることで血中濃度が上昇しやすく、依存症を合併リスクが高まるといわれています。
参考
・社交不安症の薬物療法|塩入 俊樹(岐阜大学大学院医学系研究科精神病理学分野)
・SSRI/SNRIにおける不安障害でのエビデンス|貝谷 久宣、安田 新、土田 英人、福原 秀浩、山中 学
・選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)等と攻撃性等について|医薬品・医療機器等安全性情報
・薬物の副作用 ・相互作用 ベンゾジアゼピン系睡眠薬の主な副作用および薬物相互作用|北村 正樹、景山 茂
・児童・青年期における SSRI/SNRI の使用実態と安全性に関する全国調査|宇佐美 政英、齊藤 万比古、傳田 健三、斉藤 卓弥、岡田 俊、松本 英夫、山田 佐登留
社会不安障害(SAD)で薬を使用する際の注意点
社会不安障害(SAD)の薬物治療を受ける際は、いくつかの注意点を知っておくことで、治療効果を最大限に引き出せたり、副作用のリスクを減らせたりできるといわれています。
社会不安障害(SAD)で薬を使用する際の注意点①自己判断で服用をやめない
処方された薬は、自己判断での服用中止は避けるようにしましょう。
医師の診断に基づき処方しているので、自己判断で服用を中止してしまうと、症状の悪化や再発を引き起こす可能性があります。
薬が合わないと感じた場合は、担当医に確認することで代替薬の提案や調整が可能ですので、まずは相談してみると良いでしょう。
社会不安障害(SAD)で薬を使用する際の注意点②症状が重いからといって量を増やさない
副作用や薬物依存を引き起こす恐れがあるため、自己判断で薬の量を増やす行為はリスクが高いです。薬はたくさん飲めば早く治るという訳ではありません。治すためには、用法容量を守って適切に服用することが大切です。
社会不安障害(SAD)で薬を使用する際の注意点③余っても他人に薬をあげない
薬が余っているからといって他人にあげてしまうと、医薬品医療機器法や麻薬及び向精神薬取締法の対象となり、場合によっては罰則が課せられます。
また、薬は1人ひとりの症状や進行具合に基づいて提案しているため、他人が使用することで、アレルギー反応や予期しない副作用を引き起こす可能性があります。安全を確保するためにも、処方された人だけが使用することが大切です。
参考
・医師が処方した薬はあなただけの薬です|兵庫県警察
社会不安障害(SAD)の症状がみられたら薬を使用しながら正しく改善
社会不安障害(SAD)の症状がみられた際は、薬を服用しながら治療を継続することで、症状緩和や日常生活の回復を目指せます。
また、医師の指導の下、生活環境やストレス管理にも気を付けておくと徐々に症状が安定するので、焦らず治療を続けていきましょう。
社会不安障害(SAD)で薬を処方してもらうためには精神科・心療内科へ受診
社会不安障害(SAD)の薬を処方してもらうためには、精神科・心療内科へ受診すると良いです。
社会不安障害(SAD)は心の病気と考えられているため、専門医である精神科・心療内科に行くことで、個々の症状に合った適切な処方が受けられます。
症状が酷い場合は、診断書の発行により治療に専念することも可能なので、一度相談してみると良いでしょう。
治し方や発作が起きた場合の対処法などが気になる方は、下記記事もチェックしてみてください。
社会不安障害(SAD)でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
今回は、社会不安障害(SAD)の治療に使用する薬や副作用、注意点について解説しました。
治療では、主にセロトニンやアドレナリンの再取り込み抑制作用を持つ「SSRI」「SNRI」が処方されます。
服用により、気分の安定や意欲向上などの効果が期待できますが、用法用量を守らないと症状の悪化や依存症につながるリスクがあるので、医師の指示に従いながら正しく使用しましょう。
新宿うるおいこころのクリニックでは、社会不安障害(SAD)の治療に対応しています。
治療では、経験豊富な専門医が症状に応じて薬を提案することで、1人ひとりに合わせた症状改善を目指せます。
「何となく不安を感じるけど相談していいか分からない」
「誰かに症状を打ち明けたい」
などのお悩みにも対応していますので、まずはお気軽にご相談ください。
<新宿うるおいこころのクリニックの社会不安障害(SAD)の治療についてはこちら>
よくある質問
社会不安障害(SAD)のセルフチェック診断テストはありますか?
以下の症状に当てはまる場合、社会不安障害(SAD)の可能性が考えられます。
- 他者の注目を浴びる可能性のある状況で強い恐怖や不安を感じる
- 症状により他者に迷惑をかけたり、否定されたりすることを恐れる
- ①の状況に陥ると、動悸や赤面などの症状があらわれる
- ①の状況を回避しようとする
- 状況に釣り合わないほどの恐怖や不安がある
- 症状により、仕事や日常生活に支障が出ている
- 症状は薬などの影響によるものではない
- 症状は他の精神疾患によるものではない
- 他の精神疾患がみられる場合でも、症状とは無関係である
※上記の項目は、症状は断定するものではありません。正確な診断を希望される場合や症状に該当する場合は、精神科・心療内科にご相談ください。
参考
・社交不安症の診断と評価|朝倉 聡(北海道大学保健センター・大学院医学研究科精神医学分野)
社会不安障害(SAD)の症状あるあるを教えてください。
社会不安障害(SAD)の症状あるあるとしては、
「人前で話そうとすると言葉が詰まる」
「レストランで食事ができない」
「恥をかくことが怖い」
「他人の目を気にして常に緊張している」
などがあげられます。
うつ病やパニック障害など、他の精神疾患を併発している可能性もありますので、心あたりのある方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください。