実際には異なる精神疾患ですが、名前が似ているため違いがよく分かっていない方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の違いについて解説します。違いを知ることで、自己理解が深まったり適切な治療法が分かったりするので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の違いとは
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害は、症状や特徴において違いが存在します。
例えば、強迫性障害は不安を打ち消すために行動を繰り返すことが特徴です。一方、強迫性パーソナリティ障害は、物事を自身の思い通りにコントロールしたいという考えが心底にあることが特徴で、異常なまでに秩序や規則に囚われてしまいます。
発症に至るまでの思考が違いますが、どちらも発症すると日常生活に支障をきたすといわれているので、それぞれの特徴を理解して症状に合う適切な治療を受けることが大切です。
境界性パーソナリティ障害では強迫観念などの症状はみられない
境界性パーソナリティ障害では、ルールに囚われて行動を繰り返したり柔軟な考えができなかったりしますが、
「手を洗わないと不安になる」
「何かをやり忘れていたらどうしよう」
といった強迫観念はみられません。
不安を打ち消すための手段ではなく、物事をコントロールしていくことに対する囚われから症状に至っているため、対人関係においても自分の思い通りにならないと苛立ちを感じたり柔軟な対応ができなかったりします。
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の特徴の違い
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害は、似たような症状がみられることがありますが、先ほども解説したようにそれぞれ異なる特徴をもっています。
そもそもパーソナリティ障害とは、人とは違う思考や行動パターンによって問題が生じる状態のことを指します。
一方、強迫性障害は頭の中に何度も浮かぶ不合理な考えに悩まされる疾患です。
2つの根本的な違いを踏まえたうえでそれぞれの特徴をチェックし、症状に対する理解を深めていきましょう。
強迫性障害は脅迫行為に悩まされる
強迫性障害は、嫌悪感や不安を引き起こす考え(強迫観念)を払拭するために、納得のいくまで何度も同じ行動を繰り返してしまう(脅迫行為)疾患です。
例えば、「もしドアを閉め忘れていたら事故が起きる」といった、不合理な不安が突然浮かび、頭がいっぱいになることがあります。一度沸き上がった不安は、同じ行動を繰り返して自身を納得させると和らぐので、本当に閉まっているか何度も確認したり、ドアを閉める動作を繰り返したりするのです。
強迫性パーソナリティ障害はルールに過剰に囚われる
強迫性パーソナリティ障害は、決められた秩序に囚われすぎてしまい、物事をコントロールできていないと気が済まなくなる障害です。例えば、ゴミが一切落ちていない状態を追求して床を磨き続ける、トラブルがあっても予定を遂行しようとするなどの行動がみられます。
このように柔軟性に欠けるため、全ての行動を定めた規則通りに動こうとしたり、他人にも自分と同じ基準を押し付けたりします。また、仕事に打ち込みすぎるあまり、休みの日やリラックスタイムが無駄な時間だと考える傾向にあり、恋人や友人の反感を買いやすいようです。
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の原因の違い
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害は、どちらも明確な原因は判明していませんが、強迫性障害は遺伝的要因や環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
一方、パーソナリティ障害自体は、感情のコントロールや対人関係などの精神機能に偏りが生じるものといわれており、幼少期の体験などの影響が大きいようです。
強迫性障害の原因について詳しく知りたい方は。下記記事をご相談ください
参考
パーソナリティ障害|こころの情報サイト(国立・神経医療研究センター)
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の症状からみる違い
強迫性障害は、不安や恐怖によって起こる考えを消すために、過剰に手を洗ったりルールに縛られたりします。一方、強迫性パーソナリティ障害になると、物事を完璧に遂行しなければいけないという思考から、強いこだわりがみられたり完璧にできるまで繰り返したりします。
以下では、症状の違いや日常生活への影響について解説するので、自身の症状がどちらに当てはまるのかチェックしてみましょう。
強迫性障害の症状「不合理な考えを消すために同じことを何度もする」
強迫性障害の主な症状は、「強迫観念」と「強迫行為」です。
例えば、ドアが閉まっていないかもという考えが浮かぶと、不安を解消するために何度もドアを確認します。汚れた手が病気を引き起こすかもしれないと考えた場合は、過剰に手を洗う行為がみられます。
また、何度も繰り返し大丈夫か質問するなど、確認作業に他者を巻き込むこともあり、行動によって周りが疲弊してしまうこともあるようです。
行動自体は無意味だと理解していても、
「誰かに殺されるかもしれない」
「知らない間に信号無視をしたかも」
「特定の数字を使わないと悪いことが起きるかも」
などの強迫観念に悩まされることから、不安を解消させるための脅迫行為がやめられなくなります。
強迫性障害の症状や体験談を知りたい方は、下記記事をご確認ください。
参考
強迫性障害|こころの情報サイト(国立・神経医療研究センター)
強迫性パーソナリティ障害の症状「柔軟性がなく完璧な状態にこだわる」
強迫性パーソナリティ障害の症状は、完璧主義的な思考や行動が特徴です。
例えば、完璧に仕上げたいあまり提出物の締め切りを守れなかったり、臨機応変な対応ができなかったり、休憩時間が勿体なく感じたりするようです。また、計画的に規律正しく実行することに強く固執しているため、他人の考えに対して寛容になれない傾向にあります。
また、自身の「こうしたい」という欲求から症状が現れているため、完璧にこなしたり厳格なルールを守ったりする行為を苦痛に思っていないことが特徴です。
強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の接し方の違い
異なる症状や特徴をもつ強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害では、症状に悩んでいる方に対する接し方にも違いがあります。
例えば、強迫性障害の方の場合は不安によって行動が引き起こされるため、本人の苦しみを理解し、優しく共感的に接することが大切です。一方、強迫性パーソナリティ障害の方の場合は自己の基準に従って行動しようとするため、柔軟性をもってサポートしつつ、非難せずに冷静にアドバイスをすると良いです。
接し方の違いを理解しておくと、身近な人が診断された場合に適切な支援ができるようになるので、それぞれの詳しい接し方をチェックしてみましょう。
強迫性障害の方に対する接し方
強迫性障害の方の場合、本人がやめたくてもやめられないことが特徴なので、行動に対する否定的な態度をしないよう心がけましょう。
例えば、
「なんでそんなことを繰り返すの?」
「恥ずかしいからやめてくれない?」
などの脅迫行動を無理矢理やめさせたり不満をいったりする発言は、プレッシャーから症状が悪化する可能性があります。
また、行動には苦しみが伴うため、つらさや抱えている悩みに寄り添い理解を示すと良いです。
強迫行為が少しでも減った時には、
「ここまで治るなんてすごい」
「努力していて偉いよ」
などと自信を与える言葉をかけることで、治療意欲の向上とさらなる症状改善が期待できます。
強迫性障害を気にしない方法を知りたい方は、下記記事をご確認ください。
強迫性パーソナリティ障害の方に対する接し方
強迫性パーソナリティ障害の方の場合、ルールに固執し柔軟な発想ができなくなっている状態なので、完璧でなくても問題ないと伝えていくことが大切です。行動を無理に変えようとすると反発されるケースもあるため、柔軟性をもって穏やかにコミュニケーションをとると良いです。
(例:提案を受け入れつつ他の選択肢があることをやんわり伝える、意見が異なる場面でも相手の意見を否定せずに受け入れるなど)
また、思考を尊重しながら冷静にアドバイスしたり、過干渉になりすぎず相手のペースで行動できるよう配慮したりすると、症状改善に向けた意欲が高まると考えられています。
強迫性障害に悩まされたら病院へ
強迫性障害の症状に悩んでいる場合、早めに病院を受診することが大切です。
放置していると、強迫観念や強迫行動が悪化し、仕事や家庭での人間関係に支障をきたすことがあります。また、ストレスが常にかかる状態では心身が疲れ、生活全般に対する意欲が低下してうつ病などの二次的な障害を引き起こすリスクを高めるようです。
症状が悪化する前に受診することで、症状の悪化や二次障害への発展を防ぐことができます。ただの性格だと思っていたものが強迫性障害の可能性もあるので、症状に悩んだ際は早めに専門医へ相談するよう心がけましょう。
強迫性障害でお悩みの方は精神科・心療内科に相談
強迫性障害でお悩みの方は、精神科・心療内科への相談がおすすめです。
強迫性障害は、不安や恐怖からきているため、精神科・心療内科で精神面にアプローチすることで解決を目指せます。治療法としては、心理療法や薬物療法が一般的であり、認知行動療法で思考を変えたり抗うつ薬で不安を減らしたりします。
また、カウンセラーへの相談を通してつらさや不安を共有することもおすすめです。悩みを打ち明けることが改善のきっかけになり得るので、症状がつらい際は1人で抱えず専門家を頼ってみましょう。
強迫性障害でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックにご相談ください
今回は、強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害の違いを原因や症状、接し方から比較しました。強迫性障害は不安からくる脅迫行動、強迫性パーソナリティ障害はコントロールしたいという思考からくる行動という違いがあります。
強迫性障害の場合は、精神科・心療内科での治により不安の軽減が期待できるので、早めに治療を受けて生活の中で生じるつらさや違和感の解消を目指しましょう。
新宿うるおいこころのクリニックでも、強迫性障害の診断・治療に対応しています。
経験豊富な医師が、症状や進行具合に応じて治療を提案することで、1人ひとりに合わせた症状改善を目指せます。
治療では、精神療法や薬物療法などを使用。患者様の不安を減らすため、「副作用が怖い」「通院負担を減らしたい」などのご要望にも柔軟に対応いたします。
ご予約は公式HPやLINEから24時間承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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よくある質問
強迫性障害の特徴を教えてください
強迫性障害は、突然不安や恐怖で頭が支配され、不安を和らげるための行動を繰り返すことが特徴です。症状はやめたくてもやめられず、朝のルーティンを繰り返して遅刻したり、納得がいかず次の行動ができなかったりと日常生活に支障をきたします。
強迫性障害の症状である強迫観念とは何ですか?
強迫観念とは、無意識に何度も浮かぶ不安や恐怖を伴う考えやイメージのことです。
例えば「手が汚れているのではないか?」「何か悪いことが起きるのではないか?」という疑念がうまれ、不合理だと分かっていても考えを訂正することはできません。