激しい気分の落ち込みや意欲低下に襲われるうつ病。
発症すると、SOSサインとして心身にいくつかの症状があらわれ、中には「口数が減る」「興味を示さない」などの行動として生じるケースもあります。
自分や身近な人に異変がみられた場合、早めの治療とサポートが大切になるので、うつ病の人がとる行動やおかしいと感じたときの対策法をみていきましょう。
このコラムの監修医師
新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
うつ病の人にはいくつかの特徴的な行動がみられる
うつ病になると、
「何事も楽しめなくなる」
「不安から眠れない」
「疲れやすく集中が続かない」
などの特徴的な行動がみられるようになります。ほかにも、イライラしたり暴力的になったりすることから、周りとの関係が悪化するケースもあるようです。
特徴的な行動がみられた際は、うつ病を疑い病院へ相談するようにしましょう。
「自分は大丈夫」
「今は少し疲れているだけ」
と受診を先延ばしにする方もいますが、悪化すると取り返しのつかないリスクを招く可能性もあるので、早めの段階で対処しておくことが大切です。
うつ病の人がとる代表的な行動
うつ病の人は、身体面でもいくつかの異変が出るため、
「外出を避ける」
「ずっと寝ている」
「喋らなくなる」
といった行動をとるようになります。以下では、身体面と精神面でみられる代表的な行動について解説します。
身体面
- 以前と比べて口数が減る
- 遅刻や欠勤が増える
- 仕事でのミスが増える
- 連絡頻度が減る、遊びの予定を断りがちになる
- アルコール摂取量が増える
- 無表情になったり表情が暗くなったりする
- どこか虚ろでぼーっとした表情になる
- 作り笑いが増えて無理をしているように見える
- 表情が暗くなる
精神面
- 幻聴に従うようになる(例:「食べてはいけない」という脳内の言葉に従い食べなくなる)
- 妄想が激しくなる(例:自分は太っている、食べ物に毒を盛られていると思い込む)
- 他人と関わることが怖くなり人に会うのを避ける
- 自殺願望が強くなり自傷行為にはしる
- 気力がなくなり何もする気が起きない
- 思考力・集中力が低下して物事を決められない
うつ病の人がとる行動がみられる場合は、体が限界を感じているサインかも
症状は、強いストレスや疲労で限界を迎えたときにみられるため、休息が必要と知らせるサインになります。
仕事中は問題なくても、
「何となく疲れが取れない」
「常に眠いと感じる」
などの症状が続いている場合は、うつ病の一歩手前で疲労が蓄積しているかもしれません。
症状を軽視し、心身のSOSを無視してしまうと、後々重度のうつ病を引き起こし治療が難航する恐れがあるので、初期段階で適切なケアを行うと良いです。
参考
うつ病患者の「こころ」「身体」「行動」|宮岡 等(北里大学 名誉教授)、宮岡 佳子(跡見学園女子大学臨床心理学部)
うつ病・不安症の理解と治療|中尾 智博(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野)
うつ病の診断と治療(順天堂医学.2005,51 P.386~391)|荒井 稔(順天堂大学医学部精神医学講座客員助教授)
うつ病の人がとる行動<家庭編>
家庭内でとる行動としては、
「口数が減少する」
「朝起きなくなる」
「家事ができず家が散らかる」
などの行動があげられます。また、寝ている時間も増え無気力になるので、家族との交流も減るようです。
以下では、家庭でとる代表的な行動をご紹介します。
うつ病の人がとる行動<家庭編>①口数が少なくなった
気力や思考力が低下することで、普段はよく喋っている人でも口数が減るようです。
口数の減少から会話が成り立たない場合、悩みを共有する手段が1つ失われるため、孤独感から引きこもりがちになるといわれています。
また、家族に対して無関心になり関係が悪化するケースもあります。家族との溝ができてしまう前に、症状によるものだと診断や治療を通して示すことが大切です。
うつ病の人がとる行動<家庭編>②朝起きなくなった
生活に対する意欲がなくなるため、朝起きることが難しくなります。家族が起こしても中々起きず、そのまま会社を休んでしまう人もいるようです。
1日中ベッドの中にいることも珍しくなく、疲れが取れなくなったり不眠症状が出たりする人も多いといわれています。また、起きたとしても食欲が湧かず、がりがりになって栄養不足に陥るといった悪循環を招くようです。
うつ病でずっと眠ってしまう原因については下記記事でも解説しています。
うつ病の人がとる行動<仕事編>
仕事でとる行動としては、遅刻や欠勤、業務のミスなどがあげられます。そのほかにも、
「集中力が低下して指示を聞き逃す」
「同僚とのコミュニケーションが取れない」
といった行動がみられるようです。
「大丈夫だろう」と考え働き続けると、限界を迎えて働けなくなる可能性もあるので、仕事でみられる症状を理解して早めに休むことが大切です。
以下では、仕事でとる代表的な行動をご紹介します。
うつ病の人がとる行動<仕事編>①集中力が低下してミスが増える
集中力の低下により仕事に支障が出て、業務上でのミスが増えてしまう傾向にあります。
例えば、書類の入力ミスや指示の聞き間違い、大切な会議を忘れるなどのミスが積み重なることがあります。また、疲れやストレスから遅刻も増えるようです。
勤務態度や作業ミスにより会社からの信頼が損なわれると、「自分はダメな人間だ」と自己肯定感が低くなり症状が悪化するといわれています。
うつ病の人がとる行動<仕事編>②不清潔な身だしなみで出社するようになる
身だしなみがどうでもよくなるため、シワシワのシャツや寝癖などの不清潔な格好のまま出社することが多くなります。髪型や服装に加えて体臭ケアもおろそかになり、気付かずそのまま過ごしてしまうこともあるようです。
以前はしっかり身だしなみを整えていた人が、同一人物とは思えないボロボロの恰好で出社をするため、周囲から心配の声があがるケースも少なくありません。
うつ病の人がとる行動<恋愛編>
うつ病は、恋愛関係においても様々な影響を及ぼします。
例えば、感情の起伏が激しくなることで、相手に対して不安を感じたり依存したりします。また、不安定な行動によって相手を振り回し、関係が悪化することもあるようです。恋愛でのストレスは、うつ病を悪化させると考えられているので、自分の症状を理解したうえで相手と向き合うことが大切です。
以下では、恋愛でとる代表的な行動をご紹介します。
うつ病の人がとる行動<恋愛編>①その日の気分でデートをドタキャンする
気分の変動が激しくなることで、デートのドタキャンが増えるといわれています。
前日までは楽しみにしていたデートでも、その日の不調によって「行きたくない」「今日は外に出たくない」という気持ちが強まり、キャンセルしてしまったり連絡を返さなかったりするようです。
症状を説明しても理解を得られにくく、繰り返されるドタキャンにより関係が破綻するケースも少なくありません。
うつ病の人がとる行動<恋愛編>②相手に対して依存するようになった
心の拠り所を求めるあまり、パートナーに依存する人もいます。
強い孤独や不安から依存につながるようですが、行動がヒートアップするとパートナーに負担をかけてしまい別れを告げられるケースもあります。
場合によっては、互いに依存しあう共依存に陥るリスクもあり、暴力やストーカー行為などの間違った行動を引き起こす可能性も高めるようです。
恋愛のストレスによりうつ病が悪化することも
うつ病を抱えながら恋愛をすると、普段よりもストレスを感じやすくなると考えられています。
例えば、強い自己否定感から「相手は自分の事を好きではない」と思い込んだり、浮気をしていないかと妄想したりすることで、パートナーに対するストレスが増えて症状の悪化を招くようです。
また、恋愛を通じて心のつながりが深くなるため、パートナーにうつが伝染することもあります。このような状況では、お互いが正常な判断を下せなくなるので、治療を通して精神状態の安定を目指すと良いでしょう。
また、失恋が原因でうつ病になることもあります。下記記事では失恋とうつ病に関して詳しく解説しています。併せてチェックしてみてください。
参考
・恋愛病 ~人を愛することのリスクとポイント~|太刀川 弘和(保健管理センター 精神科)
親しい人がうつ病で行動がおかしいと感じたらどうする?
親しい人がうつ病になった場合、間違った接し方をすると相手を苦しめてしまう恐れがあるため、病気について理解を深めたうえで正しく接することが大切です。
以下では、親しい人がうつ病になった際の対応方法について解説するので、ぜひ参考にしてください。
うつ病で行動がおかしいときの対策①安易に励まさない
うつ病を抱える人に対して、安易に「頑張れ」や「元気を出して」といった励ましの言葉をかけることは避けましょう。
症状によってはどうしても頑張れないときがあり、励ましが逆にプレッシャーになるため
「休んでいいよ」
「病気を理解しているよ」
と示すことが大切です。
また、本人が口にする大丈夫というセリフも注意深く観察すると良いです。口では「大丈夫」といっていても、心の中では苦痛を抱えている可能性があるため、表情や口調に違和感がないかチェックしてみましょう。
うつ病で行動がおかしいときの対策②医療機関へ相談する
異変が続いている場合は、精神科・心療内科へ相談すると良いです。
うつ病は、早期治療を行うことが何よりも大切であり、受診するタイミングを逃してしまうと症状の悪化を招くかもしれません。
本人が行きたがらない場合でも、
「一緒に行こう」
「疲れているのが心配」
と優しく声をかけ、病院へ付き添いつつ気持ちを支えてあげると良いでしょう。
うつ病で精神科・心療内科の診断を受けるべきか気になる方は下記記事をご覧ください。
うつ病の人がとる行動がみられたら、新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
今回は、うつ病の人がとる行動や身近な人に異変がみられた際の接し方について解説しました。
うつ病になると心が不安定になるため
「ミスが増える」
「朝起きなくなる」
「遅刻が増える」
といった行動が目立つようになります。
身近な人に症状がみられる場合は、優しく声をかけ、話を聞くことが大切です。本人は「自分はまだ大丈夫だ」と受診を拒むかもしれませんが、いち早く治さないと慢性化する可能性もあるので、治療の必要性を伝えたうえで病院に付き添ってあげると良いです。
「うつ病かもしれない」とお悩みの方は、新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください。
臨床心理士・公認心理士在籍のカウンセリングや専門医による詳しい検査により、症状を明確にしたうえで悩みに合わせたサポートを提供いたします。患者様の不安を減らすため、「副作用が怖い」「通院負担を減らしたい」などのご要望にも柔軟な対応が可能です。
突然のうつ気分や不眠で悩んでいる場合でも、状態に合わせた治療提案が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
<新宿うるおいこころのクリニックで行ううつ病の治療についてはこちら>
うつ病の治療にはTMS治療も効果的です。
<新宿うるおいこころのクリニックのTMS治療についてはこちら>
よくある質問
うつ病になると、何もする気が起きなくなりますか?
うつ病になると興味や意欲が低下するため、何もする気が起きなくなります。症状は、
「朝起きる気力なくずっと寝ている」
「食欲がなくて何も食べられない」
「友達と会いたいと思えず引きこもりがちになる」
など様々な形であらわれます。
認知行動療法でうつ病は回復できますか?
認知行動療法は、うつ病の回復が期待できる治療法です。治療では、ネガティブな思考を見直すことで心身の安定を促すため、症状の根本改善を目指せるといわれています。