「寝ても寝ても倦怠感が消えない」「日中の強い眠気が続いている」
このような抑うつ気分が伴う過眠症状がみられる場合、うつ病が原因の可能性があります。
うつ病から睡眠障害を合併しているケースもあり、放置すると悪循環を招くので異変がある際は早めに病院へ行くこと が大切です。
この記事では、過眠とうつ病の関係性や発症割合、症状別の対処法について解説します。過眠以外の症状も解説するので、うつ病かも?と不安な方はぜひチェックしてみてください。
目次
十分な睡眠をとっても、ずっと寝てる場合は何かしらの病気を疑った方がいい?
十分な睡眠をとっているにもかかわらず、ずっと寝てる場合は何かしらの病気の可能性も考えられます。例えば、睡眠障害や無呼吸症候群、慢性疲労症候群などを発症しているケースがあり、放置していると日常生活に支障をきたしかねません。
また、心理的なストレスが原因となって症状に至っている可能性もあるため、体や心に異変を感じた際は早めに医師に相談するようにしましょう。
過眠の定義
過眠とは、過剰な睡眠をとる状態のことをいい、一日の睡眠時間が10時間以上又は通常よりも多く眠っている状態が2週間以上持続している場合を過眠と定義されます。
過眠の場合、睡眠をとっていても十分に休まらないため、昼間に強い眠気を感じたり、日中に寝てしまったりする傾向にあります。
過眠のほかに気分の落ち込み等がある場合はうつ病の疑いも
過眠に加えて、気分の落ち込みや意欲低下などの症状がみられる場合、うつ病の可能性も考えられます。
うつ病における過眠症状としては、何度も睡眠をとる、長時間寝ても体が休まらない、日中の眠気、居眠りなどがあげられ、夜間睡眠の延長は診断基準に含まれないことが特徴です。
ずっと寝てるだけであれば問題ないですが、上記のような症状や抑うつ気分などがみられる場合はうつ病かもしれないので、一度クリニックを受診すると良いかもしれません。
うつ病で過眠などの睡眠障害がみられる割合
うつ病で過眠がみられる割合は、10~20%といわれています。症状は男性よりも女性、高齢者よりも若年層に多くみられるようです。
また、過眠がうつ病の発症に影響を及ぼすとも考えられています。うつ病が治った後も、約70%の患者が過眠症状に悩まされる傾向にあるため、再発予防においても過眠は注意しておくべき症状なのです。
参考
・気分障害における過眠への対応|精神神経学雑誌オンラインジャーナル
うつ病と過眠の関係性
うつ病になると意欲低下や倦怠感などの身体症状や、現実逃避しようと脳が働くことが影響して過眠に発展するようです。
また、うつ病患者の約36.3%に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の合併がみられるとされており、うつ病ではなくOSAの症状によって過眠が起こって いる可能性も考えられます。
参考
・気分障害における過眠への対応|精神神経学雑誌オンラインジャーナル
健康な場合、睡眠リズムは一定のサイクルを保っている
健康な場合、24時間周期で体内活動を調整する概日リズムによって、一定の睡眠リズムが保たれています。
睡眠リズムが一定だと、レム睡眠とノンレム睡眠が正しく働くため深い睡眠の確保につながり、体の回復が促されるのです。
睡眠は、健康を守る上 で大切な要素ですが、生活習慣や睡眠環境によって乱れることがあり、リズムが崩れると様々な病気の発症リスクを高めるといわれています。
参考
・健康づくりのための睡眠ガイド 2023|厚生労働省
・眠りのメカニズム|厚生労働省
うつ病でずっと寝てる原因
では実際に、うつ病でずっと寝てる原因をみていきましょう。
うつ病でずっと寝てる原因①ノルアドレナリンやセロトニンの低下
うつ病の発症原因とされるノルアドレナリンやセロトニンの低下は、過眠につながるといわれています。
ノルアドレナリンやセロトニンは、意欲向上や精神安定、興奮に作用する脳内の神経物質で、低下するとストレスや疲れを感じやすくなるため過眠を引き起こすようです。
参考
・こころもメンテしよう|厚生労働省
・セロトニンの働き|エーザイ株式会社
うつ病でずっと寝てる原因②現実逃避による過眠
精神や環境的要因が原因となって起こるうつ病の場合、問題から現実逃避をするための手段として過眠が引き起こされると考えられています。
現実逃避からくる過眠は、無意識のうちに働く防衛本能が関係しているようです。寝ることで、ストレス要因から一時的に距離を置くことができますが、根本的な解決にはならないため症状を理解した上で適切なアプローチを行いましょう。
参考
・気分障害における過眠への対応|精神神経学雑誌オンラインジャーナル
過眠以外の代表的なうつ病の症状
うつ病になると、過眠以外にも様々な精神・身体症状があらわれます。以下では、代表的な5つの症状について解説します。
過眠以外のうつ病の症状①気分が落ち込む・気持ちが沈む
気分が落ち込む、気分が沈むといった抑うつ症状は、うつ病の代表的な症状の一つです。
抑うつ症状があらわれると、日常生活の楽しみを感じにくくなったり、普段は気にならないことに対して過度に悲観的になったりします。また、前触れもなく突然涙が出るなど、感情のコントロールが難しくなることも特徴です。
過眠以外のうつ病の症状②悪いことを考えてしまう
不安や焦燥感が強くなることで、物事に対して常に悪い方へと考えるようになります。
自己否定的な思考が続くと考えが暴走し、最悪の場合自殺などの深刻なリスクも高まるといわれています。
また、正常な判断ができなくなるため、怒りっぽくなったり暴力的になったりする人もいるようです。
過眠以外のうつ病の症状③体がだるくなる
うつ病になると、強い倦怠感や疲労から体のだるさが続くようになる傾向にあります。体のだるさは、睡眠や休息をとっても回復しないことが特徴です。
また、症状が酷いと座る、顔を洗う、着替えるなどの最低限の動作すら難しくなるケースもあります。
過眠以外のうつ病の症状④集中力が低下する
集中力が低下したり、注意力が散漫したりすることも症状の一つです。
仕事や勉強においてミスが増えたり、簡単な作業ができなくなったりするため、作業効率が悪くなることがあります。
また、理解力も低下することから、相手の発言の意図が読めなかったり、自分の作業に自信が持てず繰り返し確認したりもするといわれています。
過眠以外のうつ病の症状⑤何に対しても興味がわかない
うつ病になると、何に対しても興味がわかなくなり、活動意欲の著しい低下がみられるようになります。以前は楽しんでいた活動や趣味に対しても無関心になるため、孤独感や引きこもりにつながることがあるようです。
やる気が起きないと身だしなみへの関心や自己肯定感も下がり、うつ病の悪循環を引き起こすといわれています。
また、下記でもうつ病の症状や原因について詳しく解説していますのでチェックしてみて下さい。
<うつ病の症状や原因の詳細はこちら>
【症状別】病んだ時の対処法
過眠や気分の落ち込みから病んだと感じる時は、症状に応じて休息をとったり環境調整をしたりすることが大切です。以下では、症状別の対処法をお伝えします。
病んだ時の対処法①何事にも意欲がなくなった場合
何事にも意欲がなくなった場合は、小さな目標を設定して達成感を取り戻すよう促すと良いです。最初は簡単なタスクから始め、負担のない範囲で徐々にレベルを上げていきましょう。
目標は、短時間散歩に行ってみる、趣味を少しやる、友達と話すなど些細なもので良いです。小さな成功体験を重ねることで、自信の復活や意欲向上が期待できます。
病んだ時の対処法②うつで寝すぎる・過眠がみられる場合
うつで寝すぎる場合、日中に適度な運動を取り入れると良いかもしれません。軽いジョギングやストレッチなどを行い、夜間の深い睡眠を促すようにしましょう。また、睡眠環境や栄養不足が寝すぎの原因になっている可能性もあるので、健康的な食事を心がけたり快適な睡眠環境を作ったりすると良いです。
病んだ時の対処法③イライラがある場合
イライラがある場合は、リラクゼーション法を取り入れて、気持ちを落ち着かせるよう意識すると良いです。
例えば、イライラした時に深呼吸をすると、緊張状態が緩和されて冷静な判断ができるようになるでしょう。
また、ストレス源や思考回路を自己分析することもおすすめです。自分がどのような状況でイライラしやすいか理解することで、根本的な解決につながるかもしれません。
病んだ時の対処法④気分の波が大きい場合
気分の波が大きい時は、自信の気持ちをノートなどに書き出す「ジャーナリング」を実践してみると良いでしょう。
ジャーナリングとは、頭に浮かんだ気持ちや悩みを、思いのまま紙に書き出す手法です。考えを客観視することにより、頭の中の整理ができるため、自分自身を受け入れたり気分を落ち着かせたりするきっかけとなるといわれています。
病んだ時の対処法⑤うつで一日中眠い場合
うつで一日中眠い場合、体内リズムを保つために15分程度の仮眠をとる と良いでしょう。
15分程度の仮眠には、午後に生じる眠気の改善効果が期待できるとされており、気分をリフレッシュさせるきっかけになります。
寝すぎてしまうと夜間に眠れなくなったり、体内リズムが乱れる要因になったりする可能性があるので、時間を意識しながら仮眠をとることが大切です。
過眠の原因がうつ病かも?と思ったら病院へ行こう
過眠や気分の落ち込みなどが続き日常生活に支障をきたす場合は、うつ病を発症しているかもしれません。
うつ病かも?と思う症状がみられた際は、早めにクリニックへ受診すると良いでしょう。早期に治療を始めることで、症状の悪化を防げるかもしれません。
寝すぎる原因がうつ病だと感じる際は、精神科・心療内科へ受診
寝すぎる原因がうつ病だと感じたら、精神科や心療内科への受診がおすすめです。
精神科や心療内科では、うつ病の診断と治療に精通しているため、適切なカウンセリングやアプローチ法によって負担の少ない症状改善が目指せます。
専門医からアドバイスを受けることで、気持ちの整理やストレスへの対処にもつながるので、一度受診して自身の状態を客観視すると良いです。
過眠以外でうつ病を疑う目安
過眠以外で、以下の症状のうち2つ以上が2週間以上ほぼ毎日続いている場合、うつ病の可能性があります。
- 毎日の生活に充実感がないように感じる
- 趣味や遊びなど楽しめていたことが、なぜか楽しめなくなった
- 以前は簡単にできていたことが、気分がのらず面倒に感じる
- 自分に自信がなく、何の役にも立てないと感じる
- 理由もなく疲労感がある
症状について気になる方は下記記事でもセルフチェックできるやり方を解説していますので、チェックしてみてください。
うつ症状や過眠がある方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
新宿うるおいこころのクリニックでは、うつ症状や過眠の診断・治療に対応しています。
経験豊富な専門医が、症状や進行具合に応じて治療を提案することで、一人ひとりに合わせた症状改善を目指せます。
治療では、精神療法や薬物療法などを使用。患者様の不安を減らすため、「副作用が怖い」「通院負担を減らしたい」などのご要望にも柔軟に対応いたします。
ご予約は公式HPやLINEから24時間承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
ずっと寝てる症状があるうつ病と疲れの判断基準はありますか?
うつ病による過眠と単なる疲れの違いは、症状の持続期間と影響範囲にあります。
うつ病の場合、症状が少なくとも2週間以上は続き、倦怠感や意欲低下から日常生活に大きな支障をきたします。
疲れであれば、過眠症状は一時的なもののため、十分な休息をとることで回復が期待できます。
過眠ではなく不眠症状がある場合もうつ病ですか?
うつ病の症状には、過眠だけでなく不眠症状もあるといわれています。
不眠症状には、入眠困難、夜間の覚醒、早期覚醒などいくつかの種類があり、過眠と同様に日中の活動力を低下させます。不眠からうつが悪化する可能性もあるので、症状がみられる場合は精神科や心療内科に出向くようにしましょう。