突然強い不安に襲われて、息苦しくなったり動悸を伴う激しい発作が起こったりするパニック障害。
不安がきっかけとなることから、社会不安障害や強迫性障害同様、不安障害の一つとして扱われています。しかし、
「パニック障害と他の不安障害はどう違うのだろうか」
「どのようにして見分けることができるのか」
と、他の精神疾患との違いがイマイチ分かっていない方もいるはず。
そこでこの記事では、パニック障害が不安障害の一種である理由やほかの精神疾患との違い、見分け方について解説します。
このコラムの監修医師

新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
パニック障害は不安障害の一種として分類される
不安障害とは、日常生活に支障をきたすほどの過剰な不安や恐怖が現れる精神疾患の総称です。パニック障害も、強い不安によって引き起こされるため、不安障害の一種として扱われています。不安障害は、種類によって異なる特徴をもっていますが、パニック障害の場合、心臓がバクバクする、息ができないなどの身体症状を伴い、日常生活に大きな支障をきたすことが特徴です。
不安障害の種類と症状
不安障害に分類される主な精神疾患は、
「パニック障害」
「社会不安障害(社交不安障害)」
「強迫性障害」
「全般性不安障害」
です。
パニック障害は突然の発作に襲われる、社会不安障害は人目が怖く何もできない、強迫性障害は不安を打ち消そうと行動を繰り返す、全般性不安障害は常に漠然とした不安を持つ、とそれぞれ特徴・症状が異なるので、一つずつみていきましょう。
パニック障害
パニック障害は、予期せぬタイミングで起こるパニック発作が特徴です。発作時には動悸や発汗、めまいなどの身体症状が現れ、息苦しさから「死んでしまうかもしれない」という恐怖を感じます。パニック発作が続くと、予期不安と呼ばれる次の発作への不安感情から、電車や人混みなどの逃げ場がない場所を避けたり、外出をしなくなったりする傾向にあります。
詳しくは下記記事をご覧ください。
社会不安障害(社交不安障害)
社会不安障害は、人目についたり評価されたりする状況下で強い不安を感じる精神疾患です。例えば、プレゼンテーションや会議での発言、初対面の人との会話など、人前で何らかの行動をすることに過度の恐怖を感じ、何もできなくなってしまいます。
社会不安障害の人は、
「恥ずかしい思いをするかもしれない」
「否定的に見られるかもしれない」
といった不安でいっぱいになり、人前で何かをしようとすると赤面したり手が震えたりする傾向にあります。
詳しくは下記記事をご覧ください。
強迫性障害
強迫性障害は、おかしいと分かっているのに頭から離れない考え(強迫観念)と、生じた不安を和らげるための行動(強迫行為)を繰り返すことが特徴です。例えば、汚染に対する恐怖から過度の手洗いをしたり、何か悪いことが起きるのではないかという不安から何度もドアの施錠を確認したりする行動が見られます。強迫行為をすることで一時的に不安は軽減しますが、何度やっても症状が落ち着かず、日常生活に支障をきたすほど行動を繰り返すこともあるようです。
詳しくは下記記事をご覧ください。
全般性不安障害
全般性不安障害は、特定の対象ではなく日常のあらゆる事柄に対して過剰な心配をしてしまう精神疾患です。健康面、仕事面、家族問題などについて心配が止まず、不安はコントロールできません。また、不安から体が常に緊張状態になっていることから、疲労感、集中力低下、イライラ、睡眠障害など様々な問題を引き起こすといわれています。
詳しくは下記記事をご覧ください。
パニック障害と他の不安障害の違い
ここでは、パニック障害と他の不安障害の違いをひとつずつ解説します。共通する部分もありますが、症状の現れ方や対処法に違いがあるので、早速見ていきましょう。
パニック障害と社会不安障害(社交不安障害)の違い
パニック障害と社会不安障害(社交不安障害)は、どちらも強い不安を伴いますが、不安になるタイミングや現れ方が異なります。
パニック障害では、特定の引き金がなくても突然パニック発作が起こり、「死んでしまうのではないか」という身体的な恐怖を感じます。一方、社会不安障害では、人前でのスピーチなど、他者から見られたり評価されたりする状況が不安を引き起こします。
また、パニック障害の人は発作そのものへの恐怖から公共の場を避けるようになりますが、社会不安障害の人は恥ずかしい思いをしたくないという理由から、社会的場面を避けるという違いがあります。
パニック障害と強迫性障害の違い
パニック障害と強迫性障害は、不安への対処方法が違います。例えば、パニック障害では予期せぬパニック発作が起こり、「また発作が起きるのではないか」という不安から発作が起きた場所や状況を避けるようになります。
一方、強迫性障害では、不合理だと理解していながらも頭から離れない考えからくる不安を和らげるために、特定の行動を繰り返します。(例:汚染への恐怖から何度も手を洗う、「火事になるのでは」という不安からガスコンロを何度も確認するなど)
パニック障害と全般性不安障害の違い
パニック障害と全般性不安障害は、不安の現れ方に違いがあります。パニック障害の場合、突然の激しい恐怖発作が主な症状で、発作は通常10〜30分程度で収まり、発作がない時は比較的落ち着いています。
一方、全般性不安障害では、健康面、仕事面、家族関係など日常の様々な事柄について過剰に心配し、常に不安を感じている状態が続きます。
パニック障害は突然起こる強い恐怖に悩まされますが、全般性不安障害では慢性的に不安が湧き出て不調を引き起こすのです。
参考
不安障害|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~(厚生労働省)
不安障害(専門医部会 シリーズ:内科医と災害医療)|金 吉晴
パニック障害と他の不安障害の共通点
不安障害に分類される精神疾患は、それぞれ異なる特徴を持っていることが特徴ですが、いくつかの共通点もみられます。以下では、パニック障害と他の不安障害に共通してみられる特徴について解説します。
パニック障害と他の不安障害の共通点①強い不安に襲われる
すべての不安障害に共通する点は、通常の心配事とは比べられないほどの不安に襲われることです。
不安は、パニック障害では突然の激しい恐怖発作、社会不安障害では人前での極度の緊張、強迫性障害では特定の考えに対する強い不安、全般性不安障害では日常的な事柄への過度の心配といった形で、それぞれの不安障害であらわれます。
また、不安に至るまでの思考がおかしいことは当人も理解しているケースが多いですが、感情をコントロールできないという苦しさがある点も共通しています。
パニック障害と他の不安障害の共通点②何らかの身体症状がある
心理的な不安だけでなく、何らかの身体症状が現れる点も共通しています。例えば、パニック障害では発作時に動悸や発汗、社会不安障害では人前での赤面や声の震え、強迫性障害では持続的な緊張からくる頭痛や筋肉の凝り、全般性不安障害では慢性的な不安による疲労感や睡眠障害が生じるといわれています。
パニック障害と他の不安障害の共通点③回避行動がみられる
不安を引き起こす状況を避ける回避行動も、不安障害に共通する特徴としてあげられます。例えば、パニック障害では発作が起きた場所や、逃げ場がないと感じる電車を避ける傾向にあります。このように、社会不安障害では人前でのスピーチ、強迫性障害では不安を起こす対象(例:菌に侵されないためにドアを触らない)、全般性不安障害では新しい状況や変化といったように、それぞれに異なる回避行動がみられます。
パニック障害と他の不安障害の共通点④特定の物事に対して思考の偏りがある
不安障害には、特定の状況や感覚に対する思考の偏りが共通してみられます。例えば、パニック障害では少しの動悸でも心臓発作が起こったと勘違いし、死ぬかもしれない恐怖からパニックに陥ります。社会不安障害では、失敗したら嫌われると他者からの評価を恐れ、常に最悪の事態を想定します。
このように、不安障害では事実ではない悪い出来事を考えてしまい、さらなる不安を引き起こしているようです。
パニック障害と他の不安障害の共通点⑤症状によりに日常生活の質が低下する
不安障害の種類にかかわらず、発症すると症状によって日常生活の質が著しく低下するといわれています。例えば、パニック障害や社会不安障害になると、外で不安な気持ちになるのが怖くなり、外に出られなくなることがあるようです。不安障害からくる不安は、単なる心配性とは異なり仕事や学業、人間関係に悪い影響を及ぼすので、早めの改善が大切です。
パニック障害と他の不安障害の見分け方
不安がパニック障害によるものなのか否かが分からない場合、パニック障害の診断基準に当てはまるか確認してみるといいでしょう。確定診断ではないため、正確な診断を受けるには医師による検査が必要ですが、まずは見分け方をもとに自分の症状を確認してみましょう。
パニック障害と他の不安障害の見分け方①前触れのないパニック発作が起こるか
前触れがなく突然パニック発作が起こる場合、パニック障害の可能性があります。社会不安障害や強迫性障害、全般性不安障害では、不安の引き金になる事柄は明確に存在し、対象となる出来事からくる不安によってさまざまな症状が引き起こされます。
一方、パニック障害は、リラックス時でも突然パニック発作が起こるので、「次はいつ発作が起きるか分からない」という恐怖を生み出してしまうのです。
パニック障害と他の不安障害の見分け方②パニック発作は10分以内にピークに達するか
パニック障害の発作は、発症から10分以内に症状がピークに達する傾向にあります。パニック発作が起きると、動悸、呼吸困難、めまいなどの身体症状が一気に起こり、
「死ぬのではないか」
「自分ではないみたい」
という恐怖体験を引き起こします。発作はピークを過ぎると徐々に治まっていき、その後はいつも通り過ごせることも特徴です。
一方、他の不安障害では、何度も行動を繰り返しても不安が消えなかったり、常に不安があったりと慢性的な不安が続くといわれています。
パニック障害でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
パニック障害でお悩みの方は、新宿うるおいこころのクリニックへお越しください。新宿うるおいこころのクリニックでは、患者様お一人おひとりのニーズに寄り添うために様々な治療法をご用意しています。
臨床心理士在籍のカウンセラーもあり、認知行動療法や薬物療法を組み合わせた総合的なアプローチが可能なので、症状改善を目指したい方はお気軽にご相談ください。
よくある質問
パニック障害と不安障害は同じものですか?
パニック障害と不安障害は厳密には違うものです。不安障害は過剰な不安や恐怖を伴う精神疾患の総称で、その中の一つの種類としてパニック障害が存在しています。
パニック障害以外の不安障害には、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害が含まれ、それぞれ異なる症状や特徴を持っています。
パニック障害の症状を教えてください
パニック障害の主な症状は、突然の強いパニック発作です。発作時には、動悸や息切れ、めまいなどが伴い、苦しさから「死ぬかもしれない」という恐怖を伴います。発作は10分以内にピークに達し、通常30分以内に収まりますが、予期不安から外出自体が怖くなる人もいるようです。