「こだわりが強くパニックに陥ってしまう」
「なぜか周囲に馴染めない」
などASDの特性でお困りの場合、治療によって症状の改善が期待できます。
では、具体的にどのような治療法が有効であり、得られる効果は何なのでしょうか。
そこでこの記事では、治療の効果や症状を放置するリスク、治療事例について解説します。
また、ASDの治療にあたり注意するべきポイントもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ASD(自閉症スペクトラム)とは
ASD(自閉症スペクトラム)とは、対人関係や日常生活に影響を及ぼす発達障害の一種のことです。
症状は個人差が大きく、社会性や言語能力に問題がない軽度のものから、自分の世界に閉じこもり、ほとんど話さない重度までさまざまです。
また、原因は明確に判明していませんが、生まれつきの脳の機能障害といわれており、育て方や環境が原因で起こるものではありません。
大人のASDの原因や症状、セルフチェック診断などについて、詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
ASD(自閉症スペクトラム)は治療できる?
ASDは生まれつきのものであり、完全に治すことはできません。しかし、早期に発見し適切な支援や療育を受けることで、日々の生活を円滑にしたり、対人関係で必要なスキルを身に付けたりすることが可能です。
また、ASDは人によって個性や能力、特徴が異なるため、ひとり一人に異なる支援が実施されます。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療の効果
一般的にASDの治療を行うことで、以下のような効果があると考えられています。
- コミュニケーション面や社会性で生じる障害の軽減
例)言語発達、非言語コミュニケーションの向上、共感力の習得 - 不安感やイライラなどの情緒面で生じる問題の改善
例)自己管理法・ストレス対処法の習得、薬物療法による気分の安定 - 学習や就労など生活面で生じる困難の解決
例)教育プログラム・職業訓練の実施による能力向上、支援者の協力やアドバイスによる問題解決
ASDの治療を行うことでさまざまな効果が期待できますが、治療には長期的な取り組みが大切となります。
そのため、ASDの治療をする際は、専門家や家族間でよく相談した上で最適な治療法を探すようにしましょう。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療が必要なパターン
日常生活に支障をきたしていない場合は、ASDと診断されても治療を受ける必要はありません。一方で、下記の症状に該当する場合は、治療を推奨される可能性が高いです。
<h3>特性により日常生活に問題が生じている</h3>
「学校や職場での人間関係が上手くいっていない」「日々の自己管理ができない」など特性によって日常生活に問題が生じている際は治療が必要になります。
例えば、集中力の低下や衝動性の高まりが起こっている場合、特性を理解しコントロールするためのカウンセリングや心理療法などが行われます。
合併症がみられる
ASDの人は、他の精神障害や身体的な疾患を併発する可能性が高いです。
中でも、不安障害やうつ病、注意欠陥多動性障害(ADHD)などがみられた場合、ASDの特性を悪化させ、日常生活をさらに困難にするといわれています。
また、自傷行為や自殺企図などの危険な衝動に駆られるリスクもあるため、早期の治療が大切です。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療をせずに放置してもいいの?
ASDの治療を行わず放置していると、さまざまな問題につながる可能性があります。
例えば、症状の悪化によるストレスや不安の増加、コミュニケーション難による対人関係でのトラブル、集中力や記憶力の低下で起こる学習・就労面での困難などがあげられます。
これらの問題は、家族や周囲の人にとっても大きな負担となるものです。そのため、生活に支障をきたしている場合は、精神科・心療内科に相談して適切な治療を受けるようにしましょう。
ASD(自閉症スペクトラム)に適応される治療法
下記では、ASD(自閉症スペクトラム)で用いられる代表的な3つの治療法について解説します。
心理療法
心理療法とは、感情について話すことで症状の改善を促す治療法です。
心理療法には、自分の考えを過去の意識から振り返る「個人療法」、第三者に自分について語る「グループ療法」、家族間で問題改善策を学ぶ「家族療法」があり、症状や目標に適した方法で治療が採用されます。
これらの治療では感情を整理でき、自己肯定感を高めたり、症状の軽減を促したりすることが叶います。
環境調整
環境調整とは、生きづらさを感じないように、特性に合わせた生活環境に変えていく治療法のことです。
例えば、騒音が少ない環境したり、落ち着くものを身近に置いたり、職場での働き方を整えたりすることなどがあげられます。
環境調整を行うことで、特性により生じているストレスを軽減でき、集中力の低下や不安感を改善することができます。
薬物療法
薬物療法とは、かんしゃくや不眠、抑うつなど生じている症状に合わせて薬物を投与する治療法のことです。
治療は、あくまで症状の緩和を目的として行われるため、一般的に環境調整や心理療法と併用されることが多いです。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療で用いられる薬
ASDの治療では、主に下記の薬が用いられます。
薬の種類 | 症状 |
中枢神経刺激薬 | 多動、衝動性、不注意 |
抗精神病薬 | 多動、衝動性、チック |
抗不安薬 | 不安、緊張、不眠 |
抗てんかん薬 | てんかん |
ASD(自閉症スペクトラム)の治療事例
ここでは、ASD(自閉スペクトラム)の治療事例を症状別にご紹介します。
対人関係面
意思疎通が上手くできない、対人関係を築けない、他社の気持ちが理解できない、などの特性を持っている場合、生きづらさを軽減する「環境調整」、感情のコントロールを学ぶ「認知行動療法」、関わり方やコミュニケーションのスキルを取得する「ソーシャルスキルトレーニング」などの治療が行われます。
治療を重ね、困りごとに対する成功体験や自信を積むことで、自分らしく生きる力や社会参加の意欲が高まるようになります。
【治療事例:集団行動に参加することが苦手】
環境調整として、適度な休憩や空間を確保したり、事前に活動内容を共有したりすることで、集団行動に対する不安や苦手意識を軽減。
こだわり面
急な予定変更に対応できずパニックになる、自身のやり方を変えられない、作業のペースが遅いなどの特性を持っている場合、行動のくせや思考を変えていく「認知行動療法」や、パニックを抑える「薬物療法」が行われます。
治療を行うことで、物事への柔軟な対応力や問題改善法が身に付き、症状と付き合いながら自分らしい生き方を見出せるようになります。
【治療事例:やり方や価値観を変えられずパニックになる】
認知行動療法で、考え方の見直しや行動のサポートを実施。自分のやり方や価値観が絶対的でないことや、他者との違いを受け入れることでパニックを軽減。
環境面
周囲の人より音が大きく聞こえてしまう、匂いや光に敏感になる、一つのことに集中できない、などの特性を持っている場合、ストレス原因から離れたり解決策を考えたりする「環境調整」を行います。
特性に合わせて環境調整を行うことで、ストレスによる影響を最小限に抑えることができます。
【治療事例:職場で音が気になり作業に集中できない】
職場に症状を伝え、イヤーマフの使用許可を申請。聴覚刺激を軽減させることで、作業効率が向上。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療時の注意点
ASDの特性は個人差が大きく、症状や程度もさまざまです。そのため、ASDの治療を受ける際は、以下のポイントを把握しておくことが大切です。
- ASDは完治する病気ではないと理解しておく。
生涯にわたって継続的な支援を受けることで、社会参加や自立を可能にする。 - 学校や職場、家族の協力を仰ぐ。
本人の強みや興味を活かしながら生活環境を整えていくことが大切。 - 個々に合わせた目標・計画の設定を行う。
強みや興味を把握することで、自己肯定感やモチベーションの向上につながる。また、無理な期待や要求ではなく、医師の指示に合わせて治療を進めることが大切。 - 科学的根拠や効果性に基づいた治療法を選択すること。
不確かな治療法を試すことで悪化したり、無駄な時間や費用をかけたりしてしまう恐れがある。 - 治療にあたり、本人の意思や感情を尊重する。
本人の気持ちに寄り添ったり、自己表現の方法を教えたりすることで、コミュニケーション能力の成長につながる。また、周囲の人々にも理解や配慮を促すことで、生きづらさの軽減がされる。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療はどこで行える?
ASDの治療をする際は、専門的な知識や技術を持った医師や心理士、教育者などが関わる必要があります。そのため、一般的な医療機関ではなく、発達障害に対応した医療機関や支援センター、精神科・心療内科で治療が行われます。
中でも精神科・心療内科では、原因や症状に合わせた治療法を選択できたり、生活で生じる問題を軽減するためのサポートを受けられたりします。
また、対人関係スキルを向上させるためのトレーニングやカウンセリングも受けられるので、精神科・心療内科での治療は効果的な選択肢となるでしょう。
ASD(自閉症スペクトラム)の治療なら、精神科・心療内科新宿うるおいこころのクリニックがおすすめ
精神科・心療内科新宿うるおいこころのクリニックでは、薬物療法や認知行動療法によるASDの治療が可能です。
患者様一人ひとりの症状に合わせて治療計画を立てるため、薬の副作用が心配な場合でも安心して治療をお選びいただけます。
また、足りない栄養素を補う「オーソモレキュラー療法 」や脳の働きを調整する「TMS治療」も行っています。これらの治療は投薬不要なため、身体への負担を抑えた上での症状改善が可能です。
ASDは生涯にわたり持ち続ける特性ですが、適切な治療により生活の質を高めることができます。症状にお悩みの方やASDの疑いがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
よくある質問
ASDは治療を受けることで完治しますか?
ASDは治療により完治することはありません。ですが、治療を行うことで症状の軽減が可能です。
ASDかはっきりしていないのですが、受診することは可能ですか?
もちろん可能です。発達障害の検査をしたい、グレーゾーンと判断された場合でもお気軽にご相談ください。