後天的な疾患である適応障害と先天的な特性である発達障害。
適応障害は過度のストレスが主な原因のため治療による完治が可能ですが、発達障害は生まれつきの脳機能の障害が関係しているため、根本改善は難しく病院によっては治療対象外であることも。
そこで今回では、適応障害と発達障害の違いや特徴、接し方を解説します。併発リスクも含めてお伝えするので、2つの精神疾患について正しく理解していきましょう
このコラムの監修医師
新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
適応障害と発達障害の違いとは
適応障害と発達障害は、環境に対する不安やイライラなどの似ている症状がみられる疾患ですが、性質や発症原因には大きな違いがあります。
適応障害とは、特定のストレス要因に反応して現れる後天的な疾患です。一方、発達障害は生まれつきの特性であり、しつけや家庭環境などの外的要因は発症に関係ありません。
また、適応障害はストレスがなくなることで症状が解消されるのに対し、発達障害は生涯にわたり持続する可能性があります。
適応障害はストレスが引き金となる疾患
適応障害は、何らかのストレスを受け止めきれず、心身に不調をきたす精神疾患です。
原因は、職場の問題や人間関係のトラブル、引っ越し、離婚などさまざまです。症状は、ストレス源から離れると改善することが特徴で、治療によって完治が見込めます。
適応障害の診断基準では、ストレス自体の度合いの基準はないため、日常の些細な出来事でも発症を招く可能性があるようです。
適応障害でストレスを感じたときに見られる症状については、下記記事でも詳しく解説しています。
発達障害は生まれつきの特性
発達障害は、脳機能の発達の問題により、コミュニケーション難や強いこだわりといった支障がみられる生まれつきの特性のことです。
後天的に発症することはありませんが、子どもの頃は特性が目立たず大人になってから発達障害に気づくケースもあることが特徴です。また、発達障害の症状からくるストレスなどにより適応障害を併発するといわれています。
適応障害と発達障害の症状の違い
適応障害の症状は、特定のストレス要因に対する心理的反応として現れ、不安感や抑うつ気分、頭痛などの症状が心身にみられます。
一方、発達障害は生まれつきの特性であり、他人の気持ちがわからない、じっとしていられない、感覚過敏といった脳の機能障害による症状がみられます。発達障害でも、共通して強い不安などの精神症状が現れますが、特性により混乱しやすいことが影響しているようです。
適応障害の症状
適応障害では、ストレス原因に触れている環境で以下の症状がみられる傾向にあります。
- 常に緊張が続いている
- 不安から落ち着く感じがしない
- 強い不安や恐怖を感じる瞬間が増えた
- 食欲が低下した、ご飯を食べても味がしない
- 抑うつ気分が続いている
- 数週間の間に激しい体重の増減がある
- 寝ようとしても不安で眠れない、朝早く目が覚めて眠れないなどの睡眠障害がある
- 寝ても疲れが取れず1日中だるい
- 前触れもなく突然涙が流れる
- 自己肯定感が下がり、自分はダメな人間だと感じる
- めまいや立ちくらみ、動悸などの不調がみられる
- 自殺について考えるようになる
詳しい適応障害の症状や病院に行く目安について知りたい方は、下記記事をご覧ください。
適応障害とうつ病の違い
適応障害の症状は、うつ病にも似ているといわれていますが、両者には明確な違いがあります。
適応障害は、原因となるストレス要因があり、ストレスに晒されていない状況であれば症状は落ち着いていることが特徴です。一方うつ病は、常に抑うつ気分が続く疾患で、ストレスのない環境でもネガティブ思考や絶望感に悩まされます。
適応障害の場合、ストレスが解決されると症状も自然に治る傾向にありますが、うつ病は複数の要因が重なることで発症しているため、症状が持続しやすく治りづらいという特徴を持っています。
発達障害の症状
以下では、代表的な発達障害であるASD(自閉症スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の症状について解説します。
【ASD(自閉症スペクトラム症)】
- 話し始めるのが遅い
- 会話の中でオウム返しが多い
- 会話が成り立たない
- 相手の事を考えず一方的にしゃべる
- 感情や興味関心の共有が苦手
- 興味関心のある分野が限定されている
- 強いこだわりがある
- 感覚が過敏(臭いに敏感、音や光に反応しやすいなど)
【ADHD(注意欠如・多動症)】
- 気が散って活動に集中できない
- 物を無くしやすい、忘れ物が多い
- 順序建が苦手で計画立てられない
- じっとしていられず動き回りたくなる
- 順番待ちが苦手で他人の邪魔をしてしまう
- 不安やイライラなどの感情のコントロールが苦手
適応障害と発達障害の接し方の違い
適応障害と発達障害は、そもそもの発症要因や現れ方が違うため、接する際のポイントも異なります。
症状に向き合ったり回復を目指したりする上で、周囲のサポート体制は大切となるのでそれぞれの接し方をみていきましょう。
適応障害の接し方「完治を目指すためのサポートをする」
適応障害の場合、ストレス要因を特定した上で、問題解決を目指し症状をなくすためのサポートが大切となります。
そのため、発症した際は本人が感じている不安を理解し、親身に話を聞いて寄り添う姿勢をみせると良いでしょう。
生活では、原因となるストレスから距離を置かせることを意識し、不安や恐怖を軽減するためのリフレッシュタイムを一緒に過ごしたり、心身の回復を目指すために励ましなどの声掛けを行ったりすると良いといわれています。
発達障害の接し方「特性を理解して受け入れる」
発達障害を持つ人と接する際は、特性を理解し受け入れる姿勢が大切となります。
例えば、癇癪やパニックを起こしやすい場合、症状がでないよう事前に配慮したり落ち着け方を学んだりと、症状に合わせた具体的な対策を講じると良いです。
特性やコミュニケーションスタイルは人によって異なるため、周囲の人が理解を示し適切なサポートを提供することで、生きづらさの解消につながる環境を作り出せます。
発達障害から適応障害を併発することもある
発達障害を持つ人は、特有の特性からさまざまな場面で困難を感じやすいため、ストレスから適応障害を併発することが少なくありません。
例えば、コミュニケーションの障害や強いこだわりがある場合、環境にうまく対応できず精神的な負担が増えることがあります。負担を放置していると、適応できない場面に対する恐怖や不安が強くなり、適応障害につながるようです。
また、発達障害に隠れて症状が見逃されているケースもありますが、気づかないまま過ごしてしまうと社会的孤立を招くこともあるので、周囲の人々が些細な変化に対して気を配ると良いです。
適応障害になりやすい人の特徴
過度なストレスを感じやすい人や刺激に敏感な人は、適応障害になりやすいといわれています。完璧主義者や責任感が強すぎる人も、プレッシャーに耐え切れず適応障害を発症するリスクがあるようです。
また、周囲とコミュニケーションをとることが苦手で、何かあってもサポートを求められない場合、問題を自己解決しようと自分自身を追い詰めてしまうため、適応障害につながるといわれています。
下記記事では、適応障害になりやすい人の特徴や仕事が与える影響、予防法について解説しています。
自身が適応障害なのかチェックしておくことも大切
「仕事や勉強に対する嫌悪感が前より強い」「平日は疲れて何もやる気が起きない」などの不調がみられる場合、症状や気持ちを定期的に振り返り、適応障害に当てはまるかチェックしておくことも大切です。
適応障害は、特定のストレス環境以外では元気でいられる人も多いため、一時的な疲れやストレスの影響と勘違いしやすいですが、持続的な不調が続く場合は注意が必要です。
症状は、不安感や抑うつ感などの精神症状のほかに、「頭痛や胃痛が増えた」「肩こりがひどい」などの身体症状もみられるので、自分自身の状態をしっかり観察しましょう。
適応障害なのか発達障害なのか分からないときは病院へ相談
ストレスや不安を抱えているが原因が分からない場合は、症状を明確にするためにも一度病院で診断を受けると良いです。発達障害は適応障害を併発することも多く、自己判断が難しいケースがあります。
いち早く自分の状態を明らかにし、症状に合った治療法や日々の向き合い方を見つけることがより良い生活を送る手助けになるので、一人で悩まず専門医に相談してみましょう。
適応障害や発達障害の診断は精神科・心療内科へ行こう
適応障害や発達障害の診断を受けたい場合、精神科・心療内科がオススメです。
精神科・心療内科では、心身の負担やストレス要因を明らかにした上で検査を行うため、症状の根本原因を把握できるでしょう。
また、適応障害や発達障害は他の精神疾患との合併も多いため、検査を通して総合的な心身状態を知ると、不調に合わせた適切な治療を受けられます。
適応障害がつらい場合は休職も選択肢に
適応障害の症状がつらく、人間関係や仕事に支障をきたしている場合は、休職も一つの選択肢として考えてみましょう。
適応障害は明確なストレス要因からなる精神疾患のため、休息できる環境を作ることで回復が見込めます。
休職をする際は診断書が必要となりますが、精神科・心療内科に受診し症状が認められると診断書を受け取れるので、不調から限界がきている場合は一度相談してみましょう。
下記記事では、適応障害で休職するまでの流れを解説しています。併せてご覧ください。
新宿うるおいこころのクリニックでは、適応障害・適応障害を併発している発達障害の診断・治療に対応しています
今回は、適応障害と発達障害の違いや併発する理由、接し方について解説しました。
適応障害は、環境やストレスに対する反応として現れるもので、通常はそのストレス要因を解決することで回復します。一方、発達障害は神経発達のアンバランスさや特性によって生じると言われており、長期間にわたって特定の行動や認知のパターンがみられます。
どちらも治療により症状の軽減を目指せますが、接し方やサポート方法には違いがあります。適応障害はストレス要因からの解放、発達障害は特性への理解が大切となるので、まずは病院へ受診するようにしましょう。
適応障害・適応障害を併発している発達障害の診断や治療ができる病院をお探しの方は、新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください。
臨床心理士、公認心理士在籍のカウンセリングや、専門医による詳しい検査により、特性を明確にした上で悩みに合わせたサポートを提供いたします。
他の精神疾患を併発している場合でも、症状に合わせた治療提案が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
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よくある質問
適応障害とうつ病の違いは何ですか?
適応障害とうつ病は、発症原因と回復までの経過に違いがあります。
適応障害は、環境に適応できず大きな負担がかかると発症するもので、他の疾患の原因なることも多いです。一方うつ病は、特定の原因がなくても慢性的に抑うつ気分が続くことが特徴で、症状を治すためには長い時間を要します。
適応障害と発達障害は同時に現れますか?
適応障害と発達障害は異なる障害ですが、同時に現れることもあります。
例えば、発達障害を持っている場合、特性により仕事に馴染めないとストレスが増えて仕事への嫌悪感が増し、適応障害を引き起こすことがあるようです。