適応障害とは、特定の事柄に対して大きなストレスを感じ、不調をきたす精神疾患です。誰にでも起こり得る可能性を秘めていますが、身近な人が診断された場合や適応障害の疑いがある場合は、どのようにサポートしていけばいいのでしょうか。
この記事では、適応障害の概要や併発しやすい精神疾患、なりやすい人の特徴について解説します。また、治療をすすめる目安やかけるべき言葉、NG言葉の一例をご紹介しますので、適応障害について知りたい方は参考にしてみてください。
目次
適応障害セルフチェック診断
以下の症状に当てはまる場合、適応障害の可能性があります。
- ストレスや疲れを感じやすくなった
- 会社や学校に行きたくないと感じる
- 憂うつになることが増えた
- 寝付けない、何度も目が覚めてしまう
- 2週間以内に2kg以上の体重の増減がある
- 勝手に涙が流れる
- 何に対しても興味や意欲がわかない
- 寝ているはずなのに体がだるい
- 自分はだめな存在だと感じる
- めまい、立ち眩み、吐き気がある
- 動悸、息苦しさがある
上記の項目は、適応障害と断定するものではありません。心当たりのある方は、医療機関へ相談するようにしましょう。
適応障害とは
適応障害とは、ライフスタイルの変化やおかれた環境に対してストレスを感じ、身体・精神面で不調が現れることです。適応障害になる場面は、転職や引っ越し、人間関係、家庭内問題などさまざまで、ストレス要因から距離をおくことで症状は回復します。
また、適切な治療を受けることで完治できる疾患ですが、症状を放置すると慢性化したり、他の精神障害を併発させたりする可能性があるため、早めに医療機関へ出向くことが大切です。
適応障害とうつ病の違い
適応障害とうつ病は、意欲低下や抑うつ気分、不安など症状が似ていますが、症状が出るタイミングに異なる点があります。
例えば、適応障害の場合、ストレス源に触れない環境であれば、いつも通りの元気な姿であることが多いです。一方うつ病の場合、何をしても楽しめないことが多く、一日中落ち込んでいたり常に食欲がなかったりします。
下記記事では、適応障害の主な症状や治療法などについて、詳しく解説しています。
適応障害とパニック障害の関係性
適応障害により、特定の場所に対して強い不安や恐怖を抱えると、パニック障害でみられる呼吸困難や動悸が起こることがあります。
パニック障害になると、発作が起こるかもという恐怖から外に出たくなくなったり、うつ病を併発させたりするため、早い段階でストレスから距離をおくことが大切です。
適応障害と診断されやすい人の特性と併発しやすい精神疾患
次に、適応障害と診断されやすい人の特性や併発しやすい精神疾患をご紹介します。
発達障害
発達障害は、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)など、生まれつきの脳機能の障害を指す総称のことです。
発達障害の人は、人に合わせることが苦手だったり、ストレスに弱かったりするため、環境に馴染めず適応障害を併発する可能性があります。
以下では、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)のそれぞれの特性を解説します。
ADHD(注意欠如・多動症)
ADHDは、集中力が低く衝動的でじっとしていられない特性を持っています。
人が話している途中で飽きてしまったり、自己管理ができず遅刻をしてしまったり、感情のコントロールができなかったりすることから社会生活に支障をきたし、適応障害を招く可能性があります。
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ASD(自閉スペクトラム症)
ASDは、こだわりの強さや対人関係での苦手意識などの特性を持っています。
他者とのコミュニケーションを築けなかったり、相手の気持ちが分からなかったり、社会的ルールを守れなかったりすることから、孤立し引きこもりがちになり、適応障害を併発させる可能性があります。
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HSP
HPSは、感受性が高く外部からの刺激に敏感で、繊細な人のことです。
相手の顔色を常に窺うことで気疲れしたり、音や匂いに敏感だったり、環境の変化に対応するまで時間がかかったりすることから、適応障害になりやすい傾向を持っています。
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適応障害と診断されやすい人の特徴
適応障害と診断されやすい人の特徴は以下のとおりです。
- ストレスに対する耐性や処理能力が低い
- 几帳面で完璧主義
- 責任感が強く真面目
- 物事を否定的にとらえがち
- 心配性
- 周囲からどう思われているのか気になる
- 人に頼ることに苦手意識を持っている
- 他人の感情を優先してしまう
- 繊細で些細な変化に敏感
- 相談や信頼できる人がいない
- 忙しく常に休息の取れない環境にいる
その他、適応障害になりやすい人の特徴など、詳細に知りたい方は下記記事をご覧ください。
適応障害の診断・治療は病院で受けるべき
適応障害は、適切な治療によって回復が見込める精神疾患です。うつ病やPTSDなどの別の症状と間違えやすいため、自己判断はせず病院で診断・治療を受けるようにしましょう。
適応障害の診断・治療は何科?
適応障害が疑われる場合は、精神科・心療内科への受診がおすすめです。
精神科・心療内科では、カウンセリングや専門治療を通して、見逃しがちな心の問題やストレス源の特定、症状の根本改善が叶います。また、休職を申請するための診断書も発行してもらえるため、医師に相談してみると良いでしょう。
適応障害の治療法は?
適応障害の治療法では、カウンセリングや認知行動療法、TMS治療、オーソモレキュラー栄養療法などが用いられます。
カウンセリング、認知行動療法ではストレスに対して心理的にアプローチ、TMS治療では磁気により脳の機能を調整、オーソモレキュラー栄養療法では体内の栄養素を調整、とそれぞれ治療方法が変わってくるため、症状やご希望に合わせて治療方針が定められます。
適応障害の診断をすすめる目安
身近な人が適応障害かもと思った場合、以下の症状がみられたら適応障害の診断をすすめると良いです。
こんな症状が出たらクリニックへ
- 話をしていると涙を流している
- いつもよりイライラしているようにみえる
- パニック発作が起こっている
- 一緒にいるときに笑顔が減った
- 無表情で焦点が合わない
- 疲れているようにみえる
クリニックへ行くべき症状の持続期間
症状が1~2週間以上継続している場合、クリニックへ相談すると良いです。
また、学校や仕事に行くのを拒み始めた、引きこもりがちになったなどの症状がみられる場合は、期間を問わず早めに受診すると良いです。
適応障害の診断基準と方法
適応障害を診断する場合は、米国精神医学会(APA)が定めるDSM-5に基づいて判断されます。
- 1.ストレスによる精神・身体的症状が三カ月以内に発生している
- 2.症状は1.2のどちらか又は両方に当てはまる
2-1.ストレス源に釣り合わないレベルの苦痛がある
2-2.症状により日常生活において大きな支障がある - 3.症状は他の精神疾患に該当しない
- 4.症状は死別により生じているものではない
- 5.ストレス源がなくなった場合、症状は6カ月以上続かない
適応障害の診断書は休職・退職に有効
ここでは、適応障害の診断書が休職・退職に有利に働く理由を解説します。
適応障害の診断書をもらうメリット・デメリット
診断書をもらうことで、休職や退職の理由として適応障害を明示した際に、医学的根拠を示すことができます。また、診断書があれば傷病手当金等の申請を行えるため、大きなメリットとなるでしょう。一方で、診断書発行にかかる費用は全額自己負担となることは、診断書をもらうデメリットの一つです。
適応障害の診断書をすぐにもらえる方法
適応障害の診断書をすぐにもらいたい場合は、診断書の即日発効に対応しているクリニックへ出向くようにしましょう。また、受診前に電話等で発行にかかる期間を確認したり、早く欲しい理由を伝えたりすることも大切です。
適応障害による休職までの流れについて、詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
適応障害と診断された症状の実例
ここでは、適応障害と診断された症状の実例をご紹介します。自身や身近な人の症状に当てはまっているか確認してみてください。
不眠症状がみられた
仕事のストレスや人間関係の悩みを抱え、夜になっても眠れなくなることが増えた方がいるようです。また、眠りについてもすぐに目が覚めてしまったり、悪夢をみてもうなされたりすることから疲れが取れず、仕事上でのミスやトラブルが増えたと困っている方もいらっしゃいます。
笑えなくなった
適応障害になると、笑う回数が減ったと感じる方もいます。常にストレス源を考えてしまったり、自分の気持ちを抑えたりすることから、友人や家族と話していても楽しいと感じることが減ったようです。中には、症状の放置によりうつ病を併発した方もいるため、このような症状がみられる際は、早めに受診をすると良いです。
朝が来るのが怖くなった
ストレス源に立ち向かいたくないという気持ちから、朝を迎えるのが怖くなる人もいるようです。そのほかにも、ベッドから出られなくなったり、なぜか脚が動かなかったり、活力が沸かなかったりなどの症状がみられる場合もあります。
身近な人が適応障害と診断されたらかけるべき言葉
身近な人が適応障害と診断された場合、本人に寄り添った声がけを意識すると良いです。以下では、かけるべき3つの言葉をご紹介します。
「ゆっくり休もう」
適応障害の人の中には、自分のキャパを無視して無理をしてしまったケースもあります。そのため、まずはゆっくり休むことが一番大事だと促すと良いです。休むことに対して罪悪感を覚える人もいますが、周囲の人が声掛けをすることで安心感を持って休めるようになるでしょう。
「何も心配しなくていいよ」
仕事に行かないことに対する恐怖や、社会に馴染めないことに対する不安を抱えている場合、何も心配する必要はないと声かけすると良いです。
不安や恐怖は症状によって作り出された感情であり、現実に起こっているものではないため、心の緊張を解消するような声掛けをすることで、本人の自信を取り戻すきっかけになります。
「いつでもサポートするよ」
孤立や孤独を感じていたり、悩みを打ち明けられなくなっていたりする場合、いつでもサポートするよと声をかけることで、信頼できる相手であるということを示せます。
心の内を話したり、支えになる存在を見つけたりするだけでも、気持ちを安定に良い影響をもたらすため、寄り添う姿勢を見せると良いでしょう。
身近な人が適応障害と診断されたら言ってはいけないNG言葉
適応障害の人に誤った声掛けをしてしまうと、プレッシャーを感じさせたり、自分の殻に閉じこもったりするきっかけになることがあります。以下では、代表的な3つのNG言葉をご紹介します。
「頑張って」
「頑張って」という言葉は、まだ頑張っていないというマイナス要素に結び付いたり、プレッシャーを感じてしまったりする可能性があります。
また、相手の苦悩を理解していないという印象を与えかねないため、「頑張らなくていいよ」と声かけした方が良いです。
「みんな大変だよ」
「みんな大変だよ」という言葉は、自分の気持ちを否定されたり、状況に甘えていると思ったりするきっかけになりかねません。また。抱えているストレスを軽視しているという印象を与える可能性があるため、他人と比べた発言は控えた方が良いです。
「気持ち次第で治るよ」
適応障害は決してやる気の問題などではないため、気持ちで治るものではありません。「気持ち次第で治るよ」と声かけしてしまうと、自分の力不足を実感したり、感情をコントロールできないことに対する苦しみを助長させたりするきっかけになる可能性があります。
無理に改善を促すのではなく、「一緒に治していこう」という姿勢を見せることが大切です。
身近な人が適応障害と診断されたらすべきサポート
ここでは、身近な人が適応障害と診断された際にすべきサポートをご紹介します。
干渉しすぎない
適応障害と告白されたとき、原因を詮索したり無理に元気づけようとしたりする行為は逆効果になります。
あくまで本人のペースを大切にし、求められたときに優しく声掛けをしたり、寄り添ったりすると良いでしょう。
症状について知る
症状について知っておくことで、本人がどのような悩みを抱えているのか理解できるようになります。また、必要があれば医師やカウンセラーと連携を図り、適切なサポートをとるよう心掛けることも大切です。
本人への理解を示す
症状を責めたり無理強いしたりせず、本人への理解を示すことで、回復にあたり大きな支えになります。静かに寄り添ったり必要なときに話を聞いたりと、あくまで普段の態度を変えずに見守ると良いでしょう。
周囲の方で適応障害の疑いがある場合は、精神科・心療内科新宿うるおいこころのクリニックへ気軽にご相談ください
新宿うるおいこころのクリニックでは、適応障害の治療に対応しています。
治療では、投薬不要のTMS治療やオーソモレキュラー栄養療法も採用しているため、投薬嫌いの方でも安心して治療に挑めます。また、周囲の方で症状に疑いがあったり日常生活に支障が出ていたりする場合は、当事者以外のサポート相談も可能ですので、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
適応障害は甘えが原因ですか?
適応障害は甘えが原因ではありません。大きなストレスがかかることで生じるものであり、誰にでもなる可能性を秘めている疾患です。
適応障害を放置するとどうなりますか?
適応障害を放置すると、うつ病やパニック障害の併発につながる可能性があります。適応障害適切な治療によって回復が見込める疾患ですので、症状がみられた段階での受診をおすすめしています。