日常生活に支障をきたすこともある強迫性障害ですが、薬によって症状が治まるといわれています。
しかし、薬と聞くと
「副作用などの安全面は大丈夫なのだろうか」
「本当に飲むだけで効果はあるのか」
と不安に感じる人もいるはずです。
そこでこの記事では、強迫性障害で使う主な薬について分かりやすく解説します。強迫性障害で使う薬を知っておくことは、強迫性障害の治療に対して前向きに考えるきっかけになるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
強迫性障害は薬で改善を目指せる
強迫性障害は、頭に浮かぶ不安な考えを打ち消すために、同じ行動を何度も繰り返してしまう病気です。強迫性障害になると、症状により普段通りの生活を送りにくくなりますが、薬を使った治療をすると改善が期待できます。
ただし、実際に治療を行う際は、効果が出るまで時間がかかる可能性もあるため、医師とよく相談しながら治療を進めることが大切です。適切な治療によって、普段通りの生活を送るきっかけになるので、症状に悩んでいる際は検討してみると良いでしょう。
そもそも強迫性障害とは何かが知りたい方は下記記事をご覧ください。
強迫性障害で薬を使うメリット
ここでは、強迫性障害で薬を使うメリットについて解説します。症状の緩和から生活の質の向上など、いくつかのメリットがあげられるので一つずつみていきましょう。
強迫性障害で薬を使うメリット①つらい症状を早めに緩和できる
薬を用いた治療では、強迫性障害に伴い現れる抑うつ・不安の軽減を図ります。症状として強く現れていた不安感などが抑えられるので、日常生活が送りやすくなるようです。
また、どうしようもない恐怖からくる自己否定感も減少するといわれています。思考に働きかける心理療法では、効果が出るまでに時間を要する傾向にありますが、薬であれば辛い症状を早めに緩和できるので、治療に前向きに取り組むきっかけにもなるでしょう。
強迫性障害で薬を使うメリット②他の治療と組み合わせられる
薬を用いた治療は、認知行動療法や曝露反応妨害法などの心理療法や、家族療法と組み合わせて治療を行えます。薬によって症状を軽減しておくと、心理療法に取り組む余裕が生まれ、前向きな気持ちで治療を受けられるかもしれません。また、直接体内にアプローチできる薬を使うことで、他の治療法では賄えない部分を補足できるので、より効果的な治療になるでしょう。
強迫性障害で薬を使うメリット③生活全般において活動しやすくなる
強迫性障害の症状は、仕事や学業、対人関係など生活のあらゆる面に影響を及ぼす可能性があるようです。例えば、脅迫行動から遅刻を繰り返す、強い不安から外に出られなくなる、などの症状があげられますが、薬を使うことで強迫観念や強迫行為に費やす時間が減少し、生活全般において活動しやすくなるといわれています。
また、強迫行為が出る恐怖からいけなくなった場所に再び足を運べるようになるため、活動の幅も広げられるでしょう。
強迫性障害で薬を使うデメリット
強迫性障害で薬を使うデメリットとしては、副作用の可能性や根本的なアプローチの限界、効果の個人差などがあげられます。以下では、主なデメリットについて解説するので、治療を検討する際の参考にしてみてください。
強迫性障害で薬を使うデメリット①副作用が起こる可能性がある
強迫性障害の治療で薬を用いる場合、何らかの副作用が伴う可能性があります。副作用は薬によって違いますが、一般的に吐き気、頭痛、めまいなどの不調がみられる傾向にあります。また、自殺念慮のリスクが高まったり、攻撃的になったりするという副作用も報告されています。
ただし、症状は服用初期に出現する傾向にあり、時間の経過とともに軽減していくケースが多いようです。
強迫性障害で薬を使うデメリット②体質的に薬が合わない場合がある
強迫性障害は、人によって症状の現れ方や程度が異なります。薬においても、薬が体質的に合わないケースもあり、どうしてもつらい場合は別の薬を試したり服用量を調整したりする必要が生じます。強迫性障害の薬自体、徐々に効果が出るものであり回復までに時間を要しますが、自分に合う治療法が見つかると症状は楽になっていくので、無理のない程度で焦らず治療を続けると良いでしょう。
強迫性障害の治療で使われる主な薬
強迫性障害で使われる主な薬としては、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬」「新規抗精神病薬」「抗不安薬」の3つがあげられます。それぞれ特徴を解説していくので、薬の違いが分からない人やこれから治療を始める人は参考にしてみてください。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:セロトニンの再取り込みを阻害する薬
- 抗精神病薬:不安や緊張、恐怖感情を軽減する薬
- 抗不安薬:不安や緊張を和らげる薬
では早速、1つずつみていきましょう。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、強迫性障害の治療で最もよく使われる第一選択薬です。脳内のセロトニンという物質をなるべく減らさないように調整することで、強迫症状の改善を図る作用を持ち、日本ではフルボキサミンやパロキセチンなどが承認されています。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、副作用として不安や焦燥感、パニック発作が生じる可能性があるようです。また、攻撃性が増してイライラする場合もありますが、効果が表れると徐々に落ち着いていくといわれています。
参考
選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)等と攻撃性等について|医薬品・医療機器等安全性情報 No.258
抗精神病薬
抗精神病薬とは、ドーパミンの過活動を抑えて強い衝動などを出にくくする薬です。
抗精神病薬は、強い不安がみられてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のみでの改善が難しいと判断された場合に併用されます。
ただし、抗精神病薬には体重増加や血圧低下、筋肉のこわばりなどの副作用がみられるため、少量から始めて経過に合わせて量を調整することが大切です。
抗不安薬
強い不安から脅迫行為が悪化している場合、抗不安薬を用いることがあります。抗不安薬は、不安を抑えて精神を落ち着かせる薬で、服用により強い不安が一時的に抑えられるといわれています。
抗不安薬は、副作用として催眠作用がみられるため、強い眠気で何も手につかなくなることがあるようです。また、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬では、長期間使用すると依存や認知障害リスクが増えるとも考えられています。服用を続けると、交通事故や認知症の原因になるそうなので、医師の指示に従いながら服用することが大切です。
参考
2.抗精神病薬にはどんなものがありますか?|大塚製薬株式会社
強迫性障害の自分でできる治し方
自分でできる治し方としては、症状を客観的に理解するために行動をノートにまとめる方法がおすすめです。
行動を書き起こし自分で見返すことで、強迫行為に至るまでの思考がおかしいと気付けたり、強迫行為をしなくても大事に至らないことを理解できたりするかもしれません。
また、症状を振り返る余裕ができた際は、なるべくストレスのかからないような生活リズムを意識するといいでしょう。十分な睡眠や健康的な食事、適度な運動をすると心に余裕が生まれて、強迫性障害の症状に対して落ち着いて対処できるようになるといわれています。
強迫性障害の病院での治し方
病院では、薬で行う治療の他に、認知行動療法を行い根本的な改善を目指します。
認知行動療法は、思考自体にアプローチする心理療法です。強迫性障害の場合、不安を引き起こす状況にあえて晒し、つらい状況でも強迫行為を行わないように訓練していく治療を行います。
例えば、汚染恐怖から手洗いを繰り返す場合、徐々に「汚いもの」に触れる練習をし、手洗いを我慢する時間を延ばしていきます。治療を繰り返すと不安は自然に軽減され、強迫行動をする機会が減るようです。
また、強迫観念の背後にある誤った思考パターンを特定し、正しい考え方に修正する治療も行います。例えば、自分は何かに狙われているという思考に脅かされている場合、事実ではないと徐々に植え付けていき、症状に至る思考自体を出現させないように調整していきます。
認知行動療法については下記記事で分かりやすく解説しています。併せてチェックしてみてください。
強迫性障害でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
新宿うるおいこころのクリニックでは、強迫性障害の治療に対応しています。
治療では、経験豊富な医師が症状を丁寧にカウンセリングした上で、最適な治療計画を立てます。精神科・心療内科自体が初めてで、
「どのような治療を提案されるか怖い」
「精神科と聞くと少し通いづらい」
と不安に感じる方もいるかもしれませんが、患者様が通いやすい環境を整えています。
また、誰かに悩みを相談したい場合は、公認心理師在籍のカウンセリングも設けています。強迫性障害は、症状がひどくなると普段通りの日常生活が送れなくなることもありますが、適切な治療により症状の改善を目指せる精神疾患ですので、症状でお悩みの方はどうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
強迫性障害を治療する際に意識することを教えてください
強迫性障害を治す際は、治療を始めてもすぐに完治できるものではないことを意識するといいでしょう。強迫性障害は、継続した治療により徐々に回復を目指せる精神疾患なので、焦らず少しずつ取り組みましょう。
また、強迫性障害の治療では、不安を引き起こす状況にして、強迫行為をしないように耐える治療を行うことがあります。最初はつらく辞めたくなるかもしれませんが、少しずつ進歩がみられると、治療に対して前向きに考えられるようになるので、医師と相談しながら諦めずに治療を進めていきましょう。
強迫性障害の人は頭がいいって本当ですか?
強迫性障害の人は頭がいいという医学的根拠は示されていません。強迫性障害は、誰もが発症する可能性のある精神疾患であり、知能の高さとの関係はないと考えられています。