一度でも発症すると治るまで時間がかかるうつ病。
少しでも症状を軽度に抑える際は、初期段階で治療を始めることが大切ですが、
「このくらいの症状なら大丈夫」
「先月までは楽しかったし疲れているのは今だけ」
と症状を軽視している人も少なくありません。
そこでこの記事では、うつ病の前兆でみられる症状や、身近な人がうつ病になった時の接し方について解説します。病院に行きたがらない時の対応もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
このコラムの監修医師
新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
うつ病の症状は、酷くなると慢性化してしまう
うつ病は、前兆となる症状がみられてから徐々に重症化する可能性があります。
重症化すると回復しにくく治療が長引くため、前兆にいち早く気付き治療を受けることが大切です。
うつ病の初期症状の特徴
うつ病の初期症状は、ただの疲れと勘違いし治療につながりにくいことが特徴です。
周りからうつ病を指摘されても、本人が否定しそのまま見逃すケースも多く、放置していると気付かぬうちに症状は酷くなることもあります。
「会社に行けているから」
「つい最近まで楽しめていたから」
「辛いと思っていないから」
など大丈夫な理由を見つけるのではなく、今の状態を冷静に見つめ直し、疲れや無気力感を感じている場合はクリニックへ相談すると良いです。
うつ病の前兆としてみられる症状
うつ病の前兆としてみられる代表的な症状は、以下のとおりです。
- 眠れない等の睡眠障害がみられる
- 食欲が落ちて体重が減る
- 疲れが取れず体がだるい
- 活力がなくなり楽しめなくなる
- 頭痛・めまい・吐き気などの身体症状がみられる
- 会話を避けひきこもりがちになる
- リストカットなどの自傷行為にはしる
- イライラしたり暴力的になったりする
うつ病の前兆では、精神的な不調よりも疲れやだるさなどの身体的な不調がみられます。夕方にかけて症状が改善するケースも多く、周囲から病気だと気付かれにくい傾向にあります。
うつ病の症状が酷くなるとどうなる?
うつ病が酷くなると、日常生活が困難になるほどの重い症状に悩まされることが特徴です。
強い疲労感や無気力状態が続き、死にたいと考えたり生きる意味を見出せなくなったりします。強い不安から妄想に囚われることもあり、
「自分は無価値だ」
「誰にも必要とされていない」
という考えに陥ります。
場合によっては入院が必要となるケースもあるので、重症化する前に治療を始めると良いです。
うつ病が酷いときにみられがちな症状
うつ病が酷くなると、自殺企図に関する症状が目立つといわれています。
- 自殺や死に関連付けた発言をする
- 遺書を書いている
- 自殺に使う道具を用意しだす
- 身辺整理を始める
- 自殺未遂をする
症状が酷くなると、強い抑うつ気分のほかに、自殺をほのめかすような行動がみられる傾向にあります。また、喜びや悲しみを感じられなくなり、感情の起伏が減ることも特徴です。食欲低下や睡眠障害もみられ、極端に痩せたり不眠に悩まされたりする人も多いようです。
うつ病の原因については下記記事でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
参考
うつ病|こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~(厚生労働省)
うつ病の症状が酷くなるリスク
うつ病が酷くなると深刻な抑うつ状態に陥るため、自殺念慮のリスクが増えるようです。また、社会との関わりが希薄になることで、日々の充実度が大幅に低下します。
症状によっては入院が求められますが、それでも放置し続けると回復が難しくなるので、不調を見極めて適切な対応をとるようにしましょう。
うつ病の症状は薬を正しく服用しないと悪化する
薬を処方された際は、正しく服用しないと症状が悪化する可能性があります。薬は、医師が検査結果をもとに処方しているので、指示された服用方法やスケジュールは守りましょう。
また、自己判断で中止したり服用量を変更したりするのはNGです。いきなり中断してしまうと、副作用が強く出る恐れがあります。
うつ病の症状を重症化させないためには周りのサポートが大切
身近な人がうつ病になった場合は、日常生活での些細な異変を察知しつつ、普段と変わらない生活を続けると良いでしょう。患者自身が安心できる環境を整えることで、不安の軽減や前向きな気持ちの回復につながり、悪化を防げるようです。
うつ病の症状を軽視すると重大なリスクに発展する可能性も
症状を軽視していると、自殺企図や慢性化リスクが高まります。
軽い気分の落ち込みや疲労は誰もが経験しますが、症状が長引いている場合は、ただの疲れと捉えずクリニックに相談してみると良いです。
また、
「今休職したら仕事に影響が出る」
「周囲に迷惑をかけたくない」
といった考えから無理を続けると、より深刻な状態に発展するかもしれません。
うつ病は、悪化すればするほど治りづらくなる病気です。少しでも早く治療を始めることで、仕事や私生活への影響を最小限に抑えられるので、不調がある際は迷わず受診しましょう。
うつ病の症状で悩んでいる人への接し方
ここでは、症状で悩んでいる人への接し方について解説します。
安心できる接し方を心がけることで、患者自身がサポートを受け入れやすくなるので、具体的なポイントをみていきましょう。
うつ病の症状で悩んでいる人への接し方①過度に励まさず優しく見守る
うつ病の人にとって、励ましの言葉はプレッシャーになりかねません。
言葉がけをする際は、病気を理解して
「それくらいなら大丈夫だよ」
「早く元気な姿を見せてね」
と励ますのではなく、
「大変だね」
「何かあったら相談してね」
と共感する姿勢を表すと良いです。
無理に元気づけようとしなくても、ただそばにいるだけで支えとなるので、気持ちを尊重しながら優しく寄り添いましょう。
うつ病の症状で悩んでいる人への接し方②今まで通りの生活を心がける
過度の配慮が負担となることがあるので、今まで通りの生活を心がけると良いです。
例えば、普段通りに会話をしたり同じリズムでご飯を食べたりと、いつもの日常をキープすると良いでしょう。特別な配慮をするのではなく、あくまで自然体で接することが孤立感の軽減につながります。
うつ病の症状で悩んでいる人への接し方③「頑張って」は禁句
「頑張って」という言葉は、過度な励ましと同様で逆効果になります。
言われた本人は、
「もっと努力しなければならない」
「自分には頑張りが足りていない」
と考え、気持ちがさらに落ち込むことがあります。
声掛けをする際は、「頑張って」の代わりに「いつでも味方だよ」と優しく伝えたり、「そうなんだ、大丈夫?」と気持ちに寄り添ったりしてみると良いでしょう。
うつ病の症状で悩んでいる人への接し方④話を温かく聞く
うつ病を抱える人と話す際は、耳を傾けてじっくり話を聞くようにしましょう。
患者は気持ちや状況を理解してほしいと考えているため、話しやすい環境づくりが大切です。
話を聞く際は、意見を押し付けたり急かしたりせず、話に共感しながら「それは辛いね」といった言葉を添えましょう。また、沈黙が続いても無理に聞き出すのではなく、相手のペースを尊重しながら待つ姿勢が大切です。
身近な人にうつ病の症状が出た時は病院へ付き添うこともオススメ
うつ病の症状で身近な人が心療内科の受診を検討している際は、病院への付き添いがオススメです。本人が不安を感じている場合でも、信頼できる人がそばにいることで安心感を与えられます。
症状によっては、自己判断ができずパニック状態になる可能性もありますが、信頼できる人が付き添うことでリラックス状態を促しやすくなります。受診の際は、本人の希望を尊重しながら、必要に応じて付き添ってあげましょう。
うつ病の症状で心療内科を受診するメリット
うつ病の症状で心療内科を受診するメリットは、以下のとおりです。
- 初期段階での改善を目指せる
- 適切な治療で早く治る可能性が高まる
- 自己判断による悪化を防げる
- 同じ悩みを抱えた人の体験談を知れる
- 併発している他の精神疾患に気付ける
- 休職や各種支援を受けられる
- 自身の状態を客観視できる
適切な治療により、症状の悪化を防げることは大きなメリットです。病院では、同じ悩みを抱えた人の体験談も知れるので、治療に対して前向きに考えるきっかけにもなります。
また、症状に合わせて身体検査なども実施するため、併発している他の精神疾患に気付けるかもしれません。各種支援や診断書の発行も可能で、負担を軽減しながら徐々に回復を目指せるでしょう。
うつ病の症状が出ても病院へ行きたがらない時の接し方
症状が出ているにも関わらず、病院へ行きたがらない場合は優しく寄り添うと良いです。
まずは相手の気持ちを尊重し、無理に行かせようとするのではなく共感を示しながらアプローチしましょう。例えば、「病気だから診てもらおう」とは伝えず、「疲れが楽になるから行ってみよう」などと言い方に工夫を凝らすのもオススメです。
また、仕事や金銭面での影響を心配して病院へ行きたがらない場合は、治療を優先する重要性を伝え、必要な支援やサポートが得られることを説明してみましょう。
うつ病の診断を受けるべきかの目安については下記記事をご覧ください。
うつ病の症状でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックにご相談ください
今回は、うつ病の前兆としてみられる症状や、身近な人がうつ病になった時の接し方について解説しました。
うつ病の早期回復を目指すためには初期段階での受診が大切ですが、症状を軽視する人も多く、気付かぬうちに慢性化しているケースも珍しくないようです。
うつ病の症状で身近な人が悩んでいる際は、無理に病院へ行かせようとせず、まずは話を聞いたり適切な声掛けを行なったりしましょう。相手に安心感を与え、必要に応じて病院へ付き添うことで、受診の抵抗感の軽減につながります。
新宿うるおいこころのクリニックでは、うつ病の診断・治療に対応しています。
経験豊富な専門医が、症状や重症度に応じて治療を提案することで、一人ひとりに合わせた症状改善を目指せます。
また、治療では、精神療法や薬物療法などを使用。患者様の不安を減らすため、
「副作用が怖い」
「通院負担を減らしたい」
などのご要望にも柔軟に対応いたします。
ご予約は公式HPやLINEから24時間承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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よくある質問
うつ病と適応障害の症状は違いますか?
はい、うつ病と適応障害の症状は違います。
うつ病は、長期間にわたる抑うつ状態が続く病気で、日常生活全般に大きな影響を与えます。適応障害は特定のストレスに反応する病気で、ストレスに触れていない場面では症状が軽減します。
うつ病の患者が食べてはいけないものはありますか?
うつ病と診断された際は、糖分の高い食品やカフェイン、アルコールは控えると良いです。日々の食事では、栄養バランスを意識し心身の健康を保ちましょう。
参考
精神疾患の新たなリスク要因(砂糖の過剰摂取)と表現型(脳毛細血管障害)を発見|国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
アルコールとうつ、自殺|厚生労働省
食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~|厚生労働省