高熱やのどの痛み、咳が伴うコロナウイルス感染症。中には、回復後も味覚障害や倦怠感などの後遺症に悩まされている方もいるはずです。
後遺症は徐々に回復していきますが、長期間続いたり認知機能の低下などの症状がみられたりするケースも存在します。
そこで今回では、コロナウイルス感染症の発症割合やメカニズム、症状、後遺症の一つであるブレインフォグについて解説します。
目次
コロナの後遺症(罹患後症状)は長引く
感染すると咳やのどの痛み、高熱、味覚障害などの症状が出ることで知られていますが、回復後も後遺症に長期間悩まされることがあります。
後遺症は頭痛や倦怠感、記憶障害などさまざまで、日常生活において支障をきたすような場合もあります。
コロナ後遺症の割合や頻度
厚生労働省が大阪府八尾市の感染者17,450人を対象に行った調査によると、後遺症ありと答えた18~79歳の層は15.0%(640人)、5~17歳の層では6.3%(114人)という結果が出ています。
また、感染前にワクチンを二回以上摂取している場合、摂取なしの人に比べて後遺症が出る割合が少ない傾向にあり、摂取なしは1,026人中23%が後遺症あり、二回以上摂取は3,206人中12.4%が後遺症ありと答えています。
オミクロン株は後遺症が少ない?
厚生労働省が八尾市、品川区、札幌市を対象に行った調査によると、後遺症ありと答えた成人の割合は、アルファ・デルタ株流行期で25.0~28.5%、オミクロン株流行期で11.7%~17.0%となっています。
このことから、オミクロン株は後遺症をもたらす可能性が、アルファ株・デルタ株より低いということが分かります。
コロナワクチンによる後遺症はあるのか
コロナワクチンは、感染予防や重症化防止に効果があるとされていますが、人によっては注射部の腫れや頭痛、高熱などの副反応が出現します。
ほとんどの場合、副反応は10日以内で収まりますが、ごくまれに31日間以上持続したケースも確認されています。
参考文献
・「新型コロナウイルス感染症による他疾患を含めた医療・医学に与えた影響の解明に向けた研究-今後の新興感染症発生時の対策の観点から-」(社会医学部門に関する研究)|厚生労働省
・予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について|厚生労働省
・新型コロナワクチンの接種後の遷延する症状について|厚生労働省
コロナの後遺症(罹患後症状)に至るメカニズム
コロナの後遺症が起こる明確なメカニズムは判明していませんが、「体内に残った一部の病原体が炎症を起こしている」「体を守るはずの免疫が攻撃している」「コロナをきっかけに別の病原体が活性化している」などいくつかの仮説が立てられています。
性別によってメカニズムが違うと考えられている
性染色体や性ホルモンの影響により、男女で免疫反応は異なると言われています。
具体的には、体内に残っている病原体による後遺症は男性に多く、自己免疫の攻撃による後遺症は女性に多いようです。
また、男性の場合はコロナの免疫反応が弱い人ほど後遺症が出る傾向にあり、女性の場合は免疫反応が強い人ほど後遺症が出るとも考えられています。
コロナ後遺症の咳によって、病気がうつるとは言えない
コロナウイルスを感染させる可能性のある期間は、症状が出てから7~10日間程度とされています。したがって、回復後の後遺症として咳が出ている場合は、周囲の人に移す可能性は非常に低いと言えます。
参考文献
・新型コロナウイルスに感染した人が他に感染させてしまう可能性がある期間はどのくらいですか|新型コロナウイルス感染症対策Q&Aサイト
どこからがコロナの後遺症(罹患後症状)なのか
感染後、病原体が消失したにも関わらず、さまざまな不調に悩まされることを後遺症と言います。
後遺症の症状や発生期間は人によって異なりますが、全身のだるさ、息苦しさ、注意力低下などの症状が2か月以上続く場合、コロナの後遺症と判断されます。
WHOが定める定義
WHOでは、「新型コロナを感染した人にみられ、症状が少なくとも2か月以上続き、他の疾患には該当しないもの」を後遺症と定義しています。
後遺症は徐々に治る傾向にありますが、症状により日常生活に支障が出ている、症状が治らない、などでお悩みの場合は医療機関に相談してみると良いです。
参考文献
・新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A|厚生労働省
コロナの後遺症(罹患後症状)で多くみられる症状
ここでは、コロナの後遺症で多くみられる症状について解説します。
症状1. 倦怠感
コロナ後遺症としての倦怠感では、安静にしているときは問題ないが少しでも動くと疲労がたまる、家事をしようと立ち上がろうとしても元気が出ない、などの症状がみられます。
また、倦怠感が悪化している場合は、後遺症による精神的ストレスが原因となっている可能性もあります。
症状2. 頭痛
コロナ後遺症としての頭痛の症状では、元々持っている片頭痛が悪化した、頭痛を感じるようになった、鎮痛剤が効かない、などの症状がみられます。
頭痛が起こるメカニズムは明らかになっていませんが、病原体による損傷や血液中の酸素量の減少、脱水症状ではないかと言われています。
症状3. 食欲不振
コロナ後遺症としての食欲不振では、食事をする気にならない、食べ物を体が受け付けない、摂取量が減ったなどの症状がみられます。
また、後遺症の一つである味覚・嗅覚障害により、食欲がなくなってしまうという方もいます。
症状4. 息苦しい・動悸
コロナ後遺症としての息苦しい・動悸では、動いたときや立ち上がったときに動悸を感じる、階段の上り下りで息苦しくなる、などの症状がみられます。
中には、コロナウイルスの感染により、以前から患わっている喘息や肺気腫が悪化しているケースもあります。
症状5. 脱毛・抜け毛
コロナ後遺症としての脱毛・抜け毛は、回復後から数カ月経った女性にみられることが多いです。脱毛・抜け毛に至る原因は解明されていませんが、休止期脱毛症が関係していると言われています。
参考文献
・Prolonged and Late-Onset Symptoms of Coronavirus Disease 2019|National Library of Medicine
症状6. 味覚障害・匂いがしない
コロナ後遺症としての味覚障害・嗅覚障害では、鼻が詰まっていないのに匂いがしない、こげたような味がする、普段とは違う味を感じる、など人によって異なる症状がみられます。
味覚障害は、コロナ以外にも亜鉛や鉄不足、薬の副作用で発症する場合があるものです。糖尿病や腎不全などにかかっている可能性も考えられるため、症状が治らない場合は医療機関へ受診するようにしましょう。
症状7. 喉の痛みや咳
コロナ後遺症としての喉の痛みや咳では、熱はないのに咳が続く、痰が絡んだ咳が出る、強い喉の痛みがある、などの症状がみられます。
症状が回復しない場合は、気管支喘息やアトピー咳嗽、逆流性食道炎にかかっている可能性があるため、医療機関で詳しい検査をすることをおすすめします。
症状8. 腰痛などの関節痛・筋肉痛
コロナ後遺症としての関節痛や筋肉痛では、体のさまざまな部位で痛みを感じる、特定部位で痛みを感じるなどの症状がみられます。
原因は、病原体に対抗するための炎症反応や感染症に対する精神的疲労と言われており、いくつかの原因が交じり合うことで発症すると考えられています。
症状9. ブレインフォグ
ブレインフォグとは、頭にモヤがかかったようにぼーっとしてしまう状態のことです。
コロナ後遺症としての主な症状は、記憶力が低下する、会話が頭に入らなくなる、考えがまとまらなくなる、文字が読めなくなる、などのうつ病と似た症状がみられます。
コロナの後遺症(罹患後症状)にみられるブレインフォグとは
ブレインフォグとは、集中力低下、意欲低下、決断力低下などの頭がぼんやりした状態が続くことです。感染者の中には、疲労感や倦怠感、頭痛などの身体的症状も伴うブレインフォグに悩まされている人も存在します。
原因は、免疫反応による全身の炎症と考えられており、脳にある情報を記憶・処理するワーキングメモリーに影響を及ぼすことでブレインフォグに至るとされています。
ブレインフォグについての詳細は下記の記事をご覧ください。
コロナの後遺症(罹患後症状)にみられるブレインフォグの症状例
以下では、コロナの後遺症としてみられるブレインフォグの症状例をご紹介します。
何も手につかなくなる
やらないといけないことができない、やる気が出ない、作業が身に入らないなど、何も手につかなくなるという症状がみられる人がいます。
また、症状を放置している場合、家事ができなくなり部屋が荒れ生活環境が悪くなる、という悪循環に陥るケースもあるようです。
うつ症状の悪化
うつ症状が感染後に悪化した、というケースもあります。
ブレインフォグにより文字が読めなくなったり言葉が出なくなったりしたことが、さらにふさぎ込むきっかけを作ったようです。
喋るのも辛い
言葉が出てこなくなる、喋るだけでも体力を使うなどの症状がみられます。
言いたいことが上手く伝えられなくなったり、言葉を出すまでに時間がかかったりすることで、話す量や速度が減少することがあります。
物事を思い出せない
物事を思い出せない、新しい情報を記憶できない、という症状がみられます。
文字を思い出せなくなるケースもありますが、検査をしても身体的異常は見つからない場合が多いです。
考えがまとまらない
物事の整理、分析、計画ができなくなり、話の理解ができなくなるようです。
思考や集中力が低下することで起こるとされており、スマホをみているだけで気分が悪くなるという人も存在します。
周りの音に敏感になる
周囲の音が異常に大きく聞こえたり、耳鳴りや頭痛を引き起こしたりなどの症状を起こす人がいます。
生活音がうるさく聞こえ気分が悪くなるため、家事や仕事が手につかなくなることもあるようです。
会話が頭に入らない
話の内容が理解できなくなったり、聞いたことが頭に入らなかったり、反応が遅れたりすることがあります。
情報処理能力が低下するため、マルチタスクをこなすことが困難になり、仕事で失敗を重ねてしまうケースもあるようです。
コロナの後遺症(罹患後症状)はどこに相談する?
コロナの後遺症で悩まされている場合、保健所、かかりつけ医、精神科・心療内科に相談すると良いです。以下では、悩み事別に行くべき相談先をご紹介します。
最寄りの保健所
保健所では、医療機関の紹介や相談窓口の案内などを行っています。
何の症状で受診すればいいか分からない、かかりつけ医がいないなどの場合は、保健所に相談すると良いです。
かかりつけ医
お悩みの症状に対応可能なかかりつけ医がいる場合は、かかりつけ医に相談するようにしましょう。
また、かかりつけ医がいない場合でも、県のHPに記載されているコロナ後遺症対応医療機関を参考にすることで、対応可能なクリニックを探せます。
【抑うつ・ブレインフォグなど】精神科・心療内科
抑うつやブレインフォグなどの症状が出ている場合、精神科・心療内科へ受診するようにしましょう。精神科・心療内科では、症状発生の原因となっているストレス軽減や生活習慣向上も見込めます。また、カウンセリングや非薬物療法も行うため、負担のない専門治療が可能です。
コロナの後遺症(罹患後症状)はどうやって治すの?
コロナの後遺症治療は、症状によって薬物療法や生活指導、Bスポット療法など最適なアプローチが異なります。また、うつ症状や集中力低下がみられる場合は、脳に電気刺激を与えるTMS療法が採用されます。
次回の記事では、コロナの後遺症治療ついて詳しく解説します。気になる方はぜひ参考にしてみてください。
新宿うるおいこころのクリニックでは、コロナ後遺症(罹患後症状)の治療に対応しています。
新宿うるおいこころのクリニックでは、コロナ後遺症としてあげられるブレインフォグや抑うつの治療に対応しています。また、感染後に悪化したうつ症状や認知機能低下の治療も行っているので、症状でお悩みの場合はぜひ一度ご相談ください。
よくある質問
コロナの後遺症(罹患後症状)が治らない場合は医療機関に行った方が良いですか?
症状の悪化を防いだり、別の疾患である可能性を見つけたりするためにも、医療機関への受診をおすすめします。
コロナの後遺症(罹患後症状)は一年以上続きますか?
後遺症の継続期間は人によって異なるため、明確な期間は判断しかねます。
また、症状は徐々に回復する傾向にありますが、回復がみられない、悪化しているなどの場合は医療機関へご相談ください。
コロナの後遺症が治らない!仕組みや症状、考えられるブレインフォグとは?
この記事の
シェアをする