十分な睡眠が取れないことで、生活の質に大きな影響を与える睡眠障害(不眠症)。
適切な対策をとらないと症状が改善されず、慢性化に至ることも少なくありません。
実際に、「寝ようとしても眠れない」「寝てもすぐ起きてしまう」といった症状に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、睡眠障害(不眠症)の症状や特徴、きっかけとなる生活習慣について解説します。睡眠障害(不眠症)の種類や対策法も含めてお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
このような症状は睡眠障害(不眠症)かも
睡眠障害(不眠症)になると眠れないだけでなく、
「寝付きが悪い」
「朝早く起きてしまう」
「二度寝ができない」
といった症状が出る場合もあります。
症状を放置すると日中の眠気が強くなり、活動意欲や集中力の低下を招く可能性があります。また、体が十分に休まらないことで、うつ病に発展するリスクも高まるため、症状が続く際はクリニックへ相談すると良いでしょう。
目をつぶってもなかなか眠れない
「目をつぶってもなかなか眠れない」
「考え事をしてしまい頭が休まらない」
などの症状は、睡眠障害(不眠症)に当てはまるようです。これらの症状は、ストレスや心配事、漠然とした不安により現れると考えられています。
また、発達障害や他の精神疾患を抱えている場合は、症状が出やすいと考えられています。
本来起きたい時間よりも早く起きてしまい日中に支障が出る
「本来起きたい時間よりも早く起きてしまい抑うつ気分が出る」
「予定より早く目が覚めてしまうことで倦怠感がある」
といった、早く起きるだけでなく日中に支障が出ている場合は、早朝覚醒と呼ばれる睡眠障害(不眠症)の可能性があります。
症状に悩まされる人の中には夜はすぐ眠れる人も存在し、睡眠障害が見逃されているケースもあるようです。
「予定より早く起きてしまう」「若いころに比べて早い時間に目が覚める」などに該当する場合でも体調に問題がなければ睡眠時間が足りているため、病気ではないと判断でき受診する必要はないですが、症状により日中の眠気や活動力低下、抑うつ気分などの支障が出ている場合は、睡眠障害(不眠症)が考えられます。
一度目が覚めると二度寝できない
「一度目が覚めると二度寝できない」
「毎日夜中に必ず目が覚めて、その後眠れない」
などの症状も睡眠障害(不眠症)に該当します。
一度目が覚めてもすぐ眠れれば問題ありませんが、睡眠障害(不眠症)の場合は眠ることができず、数時間そのまま起き続けてしまうようです。
睡眠障害(不眠症)の種類と特徴
睡眠障害(不眠症)には症状ごとに種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ここでは、睡眠障害(不眠症)の種類と特徴について解説します。
睡眠障害(不眠症)の種類
睡眠障害(不眠症)は、入眠の困難さや眠りの質により「早期覚醒」「入眠障害」「中途覚醒」「熟眠障害」に分類されます。
睡眠障害(不眠症)は、不眠症状により日中に支障が出ている際に診断されるものです。何らかの症状があっても、日中に支障が出ていない場合は診断されないので、症状のみに悩まされている場合は生活習慣や睡眠環境を見直してみましょう。
早期覚醒の特徴
早朝覚醒は、本来の起床時間より早い時間に目が覚めてしまう症状のことです。
眠れたとしても熟睡できないことが特徴で、日中の活動力低下を引き起こすといわれています。早期覚醒は、体内時計の乱れがみられる高齢者に多いとされていますが、若者でもストレスや生活習慣の影響で発症する可能性があります。
早朝覚醒に伴う早寝早起き自体は問題ないですが、体内時計の乱れによって日中眠くなったり倦怠感が続いたりと日中に支障が出ている場合は、慢性化不眠症の可能性があるので病院へ受診することが大切です。
入眠障害の特徴
入眠障害は、寝る体制に入ってからも中々眠りにつけない症状のことです。
睡眠障害(不眠症)の代表的な症状であり、夜間スムーズに眠れないことで睡眠自体がプレッシャーになったり、抑うつ気分を起こしたりするといわれています。
寝付くまでの時間は個人差がありますが、30分以上かかる場合は入眠障害の可能性が考えられます。
参考
・「日常診療で役立つ睡眠学の知識」不眠の鑑別診断とその進め方|鈴木 正泰(日本大学医学部精神医学系精神医学分野)
・高齢者のライフスタイルと快適覚醒・快適睡眠|堀 忠雄(広島大学総合科学部)
・身体活動と睡眠の関連性についての疫学研究レビュー|北畠 義典(埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科)
中途覚醒の特徴
中途覚醒とは、睡眠中に何度も目が覚めてしまう症状のことです。夜間に頻繁に目が覚めるため寝た気がしないことが多く、日中の活動に影響が出てしまうと考えられています。
中途覚醒は、
「睡眠時間が不規則な仕事に就いている」
「寝る前に過度なカフェインを摂取している」
などの生活習慣から発症に至る場合もあるといわれています。
熟眠障害の特徴
熟眠障害は、睡眠はとれているが起きた時に熟睡感が得られない症状のことです。
体が回復せず朝起きた瞬間から疲れているため、「仕事へ行きたくない」「外に出かける気分にならない」といった症状を招くといわれています。熟眠障害は見逃されやすく、いつのまにか疲労が積み重なっていくようです。
睡眠障害(不眠症)を引き起こす生活習慣
睡眠障害(不眠症)は、生活習慣が深く関わっていると考えられています。知らず知らずのうちに続けている生活習慣が、睡眠障害(不眠症)を引き起こす可能性もあるので詳しくみてみましょう。
睡眠障害(不眠症)を引き起こす生活習慣①寝る前にスマホを触っている
寝る前にスマホを触ると、画面に含まれるブルーライトによって体内時計が乱れ、睡眠障害(不眠症)を引き起こすといわれています。
実際に文化庁が実施した調査によると、寝る直前にスマホを使用する子どもの方が、触っていない子どもに比べて朝起きるのがつらいと感じているという結果が出ています。
参考
・情報を教える教員養成学生がブルーライト睡眠障害の教授に用いる情報源の信頼性と利便性|和田 正人(教育実践研究センター)
・睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(概要)|文部科学省
睡眠障害(不眠症)を引き起こす生活習慣②悩みやストレスを抱えている
ストレスや悩み事を抱えていると、体が興奮状態になりリラックスできなくなるため、睡眠障害(不眠症)につながるようです。
また、眠ろうとしても頭の中で考え事が止まらず、悩みや不安が頭から離れなくなることで、眠りが浅くなったり入眠に時間がかかったりするといわれています。
参考
・第2章 心のケア 各論 1.心のケアの基本|文部科学省
睡眠障害(不眠症)を引き起こす生活習慣③不健康な食生活を送っている
不健康な食生活も、睡眠障害の原因となるといわれています。
例えば、
「野菜や魚を食べない」
「菓子類やカップ麺をよく食べる」
「糖分の高いジュースやエナジードリンクを飲んでいる」
などの食生活は、睡眠の質の悪さにつながるようです。また、朝食をとらなかったり間食をしたりする習慣も、悪影響を及ぼすと考えられています。
参考
・野菜摂取量の少なさ、菓子類摂取量の多さ、不健康な食習慣は日本人中年女性労働者において睡眠の質の不良と関連する|片桐 諒子、朝倉 敬子、児林 聡美、須賀 ひとみ、佐々木 敏
睡眠障害(不眠症)で眠れない症状を改善するための対策法
ここでは、睡眠障害(不眠症)で眠れない時に試してほしい対策法についてご紹介します。対策法を通して身体をリラックスさせることで、少しずつ改善を目指してみましょう。
睡眠障害(不眠症)での対策法①寝る前に軽くストレッチする
ストレッチは、副交感神経を優位にする効果を持つため、寝る前に行うことで寝付きが良くなるといわれています。
ストレッチを行う際は、軽く体を伸ばすだけでもリラックス効果が期待できるようです。日中に溜まった疲労をほぐす習慣が快眠につながるので、お風呂上がりや就寝前に実践してみましょう。
睡眠障害(不眠症)での対策法②体を温めてリラックスを促す
就寝前に体を温めるとリラックス効果が期待でき、自然に眠りに入りやすくなるようです。例えば、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かったり、温かいタオルで目元を温めたりすると良いでしょう。
また、足元は冷やさないように靴下を履く、室温は18度に保つなど、睡眠環境を整えることも睡眠障害(不眠症)の対策になるといわれています。
下記記事では、上記対策の他にも、睡眠障害(不眠症)の改善方法や治療法についてご紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
参考
・室温と高血圧、睡眠の関係|健康づくりネット(厚生労働省)
睡眠障害で病院に行く目安
下記の症状がみられる場合は、受診の目安にすると良いかもしれません。
- 「入眠困難」
- 「睡眠維持困難」
- 「早朝覚醒」
- 「就寝拒否」
- 「親や介護者がいないと眠れない」
- 「疲労感や倦怠感」
- 「注意力・集中力・記憶力の低下」
- 「日常生活を送る上での機能障害」
- 「気分が落ち込む・イライラする」
- 「日中の眠気」
- 「攻撃的・衝動的になったり過活動がみられたりする」
- 「やる気・意欲低下」「不注意や事故を起こしやすくなる」
- 「十分な睡眠環境があるのに①の症状がある」
- 「①・②の症状が、週に3回以上みられる」
- 「①・②の症状が3カ月以上続いている」
- 「①の症状は、他の睡眠障害に当てはまらない」
参考
・「日常診療で役立つ睡眠学の知識」不眠の鑑別診断とその進め方|鈴木 正泰(日本大学医学部精神医学系精神医学分野)
少し眠れないと感じる場合でも病院に行っていい?
「少し眠れない」
「日中への支障はない」
など症状が軽度であっても、気になる場合は病院へ行くと良いでしょう。
背景にはストレスが関係していることが多く、放置すると悪化リスクが高まります。早めの対策により、心身への負担軽減につながるので、我慢せず自身のタイミングで病院に行くことがオススメです。
睡眠障害(不眠症)の症状がもたらすリスク
ここでは、睡眠障害によって起こり得るリスクについて解説します。
睡眠障害(不眠症)の症状がもたらすリスク①日中のパフォーマンスが低下する
睡眠不足が続くと、日中のパフォーマンスが低下すると考えられています。
例えば、集中力や判断力の低下により作業効率が悪くなったり、イライラしやすくなることで友人と疎遠になったりするといわれています。また、仕事でミスが増えることで、長期的なキャリアに影響が出る可能性もあるようです。
睡眠障害(不眠症)の症状がもたらすリスク②生活習慣病になりやすくなる
睡眠障害(不眠症)により、常に体が休まらない状態が続くと、生活習慣病になりやすくなるといわれています。
実際に睡眠障害を抱えている人は、抱えていない人よりⅡ型糖尿病になるリスクが約2,3倍高いようです。生活習慣病のほかにも、うつ病に先行して睡眠障害(不眠症)の症状が出る傾向にあるなど、他の疾患との関連性が指摘されています。
参考
・生活習慣病と睡眠障害|筒井 末春(日本心身健康科学会会長、人間総合科学大学)
睡眠障害(不眠症)の症状がもたらすリスク③免疫力が低下して感染症にかかってしまう
睡眠障害(不眠症)が続くと、免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなるようです。
免疫力の低下は、病気の回復を遅くしたり疲れやすくなったりなど、健康面で大きな影響を及ぼすと考えられているので、健康を維持するためには十分な睡眠が大切となります。
また、下記記事では睡眠障害(不眠症)を放置するリスクについても解説しています。併せてご覧ください。
睡眠障害(不眠症)の症状に心当たりのある方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
今回は、睡眠障害(不眠症)の症状やきっかけとなる生活習慣、対策法について解説しました。
睡眠障害(不眠症)は、十分な睡眠が取れず日常生活に支障をきたす症状のことで、原因は寝る前のスマホ使用や不摂生、ストレスなどさまざまです。放置していると、生活習慣病やうつ病に発展するリスクもあり、改善には適切な治療が大切となります。
日中に支障が出ていなければ、セルフケアで改善できるケースもありますが、症状が悪化していたり改善がみられなかったりする場合は病院へ受診するようにしましょう。
新宿うるおいこころのクリニックでも、睡眠障害(不眠症)の診断・治療に対応しています。
治療では、睡眠障害(不眠症)の原因を探った上で、認知行動療法や薬物療法を組み合わせるため、1人ひとりに合わせた治療提案が可能です。原因が発達障害やうつ病の場合も、症状に寄り添う適切なアプローチにより根本改善を目指せます。
「何となく眠れていない」
「疲れが取れない」
など軽い症状も治療により改善が期待できるので、まずはお気軽にご相談ください。
<新宿うるおいこころのクリニックの睡眠障害(不眠症)の治療についてはこちら>
よくある質問
病院では睡眠障害(不眠症)をどのように改善しますか?
病院では、原因を特定した上で生活習慣や睡眠環境の改善指導を提案します。必要に応じて、薬物療法や認知行動療法を取り入れながら、根本的な改善を目指します。
睡眠障害(不眠症)の症状がみられても、支障がなければ放置していいですか?
支障がない場合でも、徐々に慢性化する可能性があるため放置はおすすめできません。まずは日常生活でできる対策を行い、症状が改善しない場合は病院へ相談することが大切です。