睡眠の質と脳の神経障害は、深く関わり合っている存在です。
そのため、睡眠の質の低下を放置すると病気につながる可能性や、難病の初期症状を見逃してしまうこともあります。
この記事では、睡眠の質低下と神経障害の関係性や放置するリスク、代表的な睡眠障害についてご紹介します。また、脳の神経障害が関係するレム睡眠行動障害についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
睡眠の質低下と脳の神経障害との関係性
睡眠の質の低下と脳の神経障害は、互いに作用しあうものです。
例えば、睡眠の質が低いと脳が回復するタイミングを失い、脳の神経に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、脳の神経障害が起こると脳が正常に働かなくなるため、睡眠時無呼吸症候群や不眠症、概日リズム睡眠障害などの睡眠の質を下げる障害を引き起こします。
睡眠の質が低い状態とは
睡眠時は、眠りの浅い「レム睡眠」と眠りの深い「ノンレム睡眠」のサイクルによって、体を十分に休息させています。
睡眠の質が低い状態では、2つのサイクルバランスが乱れるため、寝ているはずなのに疲れがたまったり途中で起きたりします。
脳の神経障害が起こるとどうなる?
脳の神経障害が起こると、脳内にある脳細胞や神経伝達物質が正常に働かなくなります。
また、睡眠の質にかかわる自律神経を乱したり、興奮作用を働かせたりするため、さまざまな睡眠障害を引き起こすのです。
睡眠の質を下げる、脳の神経障害が起こる原因とは
脳の神経障害は、日中に受けたストレスや感染症、偏食などが脳にダメージを与えることで起こります。また、交通事故や転倒などの外傷性脳損傷が原因となることもあり、感情のバランスの崩れによって引き起こされるケースもみられます。
脳の神経障害による睡眠の質低下を放置するリスク
脳の神経障害による睡眠の質低下を放置していると、高血圧や心疾患、脳卒中などさまざまな病気を引き起こす恐れがあります。
高血圧
睡眠不足を放置していると、ホルモンバランスを乱し血圧を上昇させたり、心臓や腎臓などの臓器に負荷をかけてしまったりするため、高血圧を引き起こします。
高血圧になると、弾力性を持つはずの血管が徐々に硬くなっていき、脳出血や脳梗塞の原因である動脈硬化リスクを高めます。
心疾患
睡眠の質低下による睡眠不足が続くと、心臓が体内へ十分な酸素を送れなくなり、心疾患のリスクを高めます。
心疾患は心臓に起こる病気の総称で、血液循環が上手くいかず血管が詰まったり、心臓の機能が低下したりすることで起こります。
クモ膜下出血などの脳卒中
睡眠の質の低下を放置すると、脳卒中を起こす原因となる低酸素血症や自律神経の乱れ、高血圧につながります。
脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりする病気の総称で、代表的な疾患としては「くも膜下出血」「脳梗塞」「脳出血」などがあげられます。
脳の神経障害が関係する代表的な睡眠障害
疾患の種類 | 疾患名 | 症状 |
睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群) 不眠症 |
・閉塞性睡眠時無呼吸 ・中枢性睡眠無呼吸 ・入眠困難 ・中途覚醒 ・早期覚醒 |
激しいいびき、寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、日中の集中力低下、意欲低下など |
中枢性過眠症 | ・ナルコレプシー ・中枢病変による過眠症 |
日中の過剰な眠気、情動脱力発作 |
概日リズム睡眠障害 | ・睡眠相後退症候群 ・睡眠相前進症候群 |
夜中の不眠、日中の眠気など、睡眠サイクルが乱れる |
睡眠関連運動障害 | ・むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群) | じっとしていると足がむずむずする |
睡眠時随伴症 | ・レム睡眠行動障害 ・睡眠時遊行症(夢遊病)など |
睡眠時に突然大きな声を出す、暴力をふるう、無意識に歩き回る |
睡眠時無呼吸症候群やその他の睡眠障害の可能性があるいびきのサイン
以下のいびきがみられる場合は、睡眠時無呼吸症候群やその他の睡眠障害の可能性があります。
- 大きくてうるさいいびき
- 息苦しさを感じるようないびき
- いびきの途中で呼吸が止まる
- 自分のいびきで目が覚める
このように、いびきの症状の重症度によって、原因となっている病気の進行度がわかる場合があります。いびきメディカルクリニックでは、最新の機器を用いて自宅で簡単に睡眠検査を受けることができますので、症状に心当たりがある場合はお気軽にご相談ください。
特に、脳の神経障害が原因で起こる睡眠障害の中でも、レム睡眠行動障害はパーキンソン病やレビー小体型認知症などといった、シヌクレイノパチーと呼ばれるタンパク質の異常構造が特徴である難病の初期症状である場合が示唆されます。これらの病気は早期発見・治療が大切です。
単発的な睡眠障害や寝不足だと思っていたものが、実は病気の前兆だったなどということもあるので、ぜひ知っておきましょう。
レム睡眠行動障害とは
レム睡眠行動障害とは、夢でみているものと同じ行動をとってしまう病気です。
通常、睡眠時には体を動かす筋肉が抑制されますが、レム睡眠行動障害の場合はこの抑制機構に異常が起こり自由に動ける状態になるため、夢の中での行動が現実に反映されてしまいます。
発症の頻度
愛知医科大学の調査によると、神経変性疾患への罹患は40~65%という結果が出ています。
また、中高年層に多い変性神経疾患に多くみられたり、レム睡眠行動障害が疾患の前兆になっていたりするといわれています。
レム睡眠行動障害の症状
主な症状は、睡眠中に大きな声を出したり、腕や足が動いたりすることです。
症状が酷くなると、ベッドから出る、興奮して手をあげるなどの症状がみられ、近くにいる人に危害を加えてしまうこともあります。
レム睡眠行動障害の原因
明確な原因は判明していませんが、脳の神経障害や生活習慣、内服薬の影響と考えられています。また、悪夢をみているときに現れる傾向にあるため、ストレスが関係しているのではないかといわれています。
レム睡眠行動障害セルフチェック診断
寝ているときに以下の行動が生じている場合、発症している可能性があります。
- 大きな寝言をいう
- 突然叫ぶことがある
- 寝ているのに起き上がって歩き出す
- 近くで寝ている人に手をあげる
上記の項目は、疾患を断定するものではありません。心当たりのある方は、医療機関へ受診するようにしましょう。
レム睡眠行動障害を放置するリスク
症状を放置すると、近くで寝ているパートナーや家族にけがをさせてしまったり、関係悪化につながったりすることがあります。
また、パーキンソン病やレビー小体型認知症などの前兆である可能性も考えられるため、放置によって神経変性疾患のリスクを高める場合もあります。
レム睡眠行動障害を発症しやすい人とは
幅広い年齢に起こり得る疾患ですが、中高齢の男性に多く生じる傾向があります。そのため、加齢や中枢神経の機能不全も関係しているといわれています。
レム睡眠行動障害を発症しやすい疾患
以下の疾患にかかっている場合、初期症状としてレム睡眠行動障害が生じる傾向にあります。
疾患名 | 症状 |
パーキンソン病 | ドパミン不足により、手足が動かしにくくなる |
レビー小体型認知症 | 幻覚をみたり、認知機能に障害が起こったりする |
脳腫瘍 | 歩けない、言葉が出にくいなどの障害が生じる |
レム睡眠行動障害と間違えやすい病気
以下のような病気は、レム睡眠行動障害と就寝中の状態が似ているため、自己判断では間違えてしまうことがあります。
疾患名 | 就寝中の状態 |
てんかん | いきなりてんかん発作を起こす |
せん妄 | 夜間にいきなり大声を出す、暴れる |
睡眠時遊行症 | 寝ているのに歩き回る、叫ぶ、食事をする |
睡眠時驚愕症 | 突然泣き出す、パニックを起こす |
レム睡眠行動障害は何科にいけばいい?
大きい寝言や激しい動きに悩まされている場合は、脳神経外科に行くと良いです。レム睡眠行動障害の症状以外にも、日中に感じるストレスや入眠困難等の悩みがある場合は、精神科・心療内科へ受診することで根本改善が叶うでしょう。
レム睡眠行動障害の診断方法
診断する際は、血液検査や頭部MRI、終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査を実施し、他の疾患との関連性や寝ているときの動きを検査します。
血液検査・頭部MRI検査
血液検査や頭部MRIをとることで、別の疾患である可能性を探ることができます。別の疾患と判断された場合は、状態に合わせた適切な治療を行ないます。
終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査
終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査は、体にセンサーを付けて寝ているときの活動を確認する検査です。寝ている間の脳波や眼球運動を把握することで、夜間の異常行動を把握したり疾患の断定ができたりします。
レム睡眠行動障害の治し方・対処法
レム睡眠行動障害になった場合は、以下の治し方・対処法を実践してみましょう。
運動をする
日中に運動をして疲労をためることで、深い眠りの促進につながります。また、体を適度に動かすことは血行促進や代謝改善になるため改善に有効です。
ストレスを減らす
ストレスを減らすことで、悪夢をみる回数の軽減が期待できます。また、入眠時に感じる緊張をほぐす効果によって、眠りの質の向上が叶うでしょう。
睡眠リズムを整える
睡眠リズムを整えることで、眠りの質を向上させる効果が期待できます。毎日同じ時間に起きる、昼寝を控える、就寝前にカフェインをとらない、など小さなことを日々意識してみましょう。
睡眠環境を整える
睡眠環境は眠りの質に大きな影響を与えます。就寝する際は部屋を暗くしたり、湿度や温度を一定にしたり、アロマをたいたり、寝具を清潔に保ったりなど、リラックスできる空間づくりを心がけましょう。
病院へ行く
自己管理で治らない場合は、病院へ行くことがおすすめです。場合によっては、他の疾患の前兆である可能性も否定できないため、異常がみられた際はなるべく早く受診すると良いです。
レム睡眠行動障害の病院で処方される治療薬
病院では、治療にあたり薬物療法が用いられます。以下では、治療薬として処方される抗てんかん薬(クロナゼバム)について解説します。
抗てんかん薬(クロナゼパム)
ロナゼバムは、抗てんかん薬として承認されている治療薬です。
脳の神経を落ち着かせる作用を持ち、夜間異常が生じるレム睡眠行動障害に効果をもたらします。副作用として日中の強い眠気やふらつき、呼吸抑制がみられますが、即効性が高く作用時間が長いため、比較的依存性が低いとされています。
しかし、レム睡眠行動障害の治療薬は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発させていた場合に症状を悪化させる危険性があるため、注意が必要です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を並行して行うことで、双方の病気を安全な状態で改善へ向かわせることにつながります。
いびきメディカルクリニックでは、切らない・痛くないいびきレーザー治療「パルスサーミア」を導入し、睡眠時無呼吸症候群の治療に対応しています。
詳細はいびきメディカルクリニックの公式HPをご覧ください。
精神科・心療内科新宿うるおいこころのクリニックでは、さまざまな睡眠障害の治療を行なっています
新宿うるおいこころのクリニックでは、レム睡眠行動障害をはじめとするさまざまな睡眠障害に対応しています。検査時に別の睡眠障害と判明した場合でも当院で治療を行なうため、スムーズな根本改善が可能です。
また、治療法には薬物療法以外にも「TMS治療」「オーソモレキュラー栄養療法」を導入することで、安全で負担の少ない治療を実現しています。
眠りに関する小さなお困りごとにも対応可能ですので、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
レム睡眠行動障害の人は夢を覚えていますか?
レム睡眠行動障害の場合、夢の内容を覚えている人が多い傾向にあります。また、症状が出ているときに声をかけると、比較的目が覚めることも特徴の一つです。
レム睡眠行動障害は治りますか?
レム睡眠行動障害は適切な治療によって回復が見込める疾患です。