突然のパニック発作に悩まされるパニック障害。
症状として現れる強い動機や息苦しさは想像以上の苦痛が伴うため、パニック障害の人に対して
「なんで我慢できないの?」
「それくらい大丈夫でしょ」
といった声掛けをすると、プレッシャーを感じて症状が治りにくくなる可能性があります。
この記事では、パニック障害の人に言ってはいけない言葉をいくつかご紹介します。サポート時のポイントも含めてお伝えするので、是非参考にしてみてください。
このコラムの監修医師

新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
パニック障害の人に言ってはいけない言葉はある?
パニック障害は、前触れもなく強い不安に襲われて、息苦しさや動悸を伴う発作に苦しめられる精神疾患です。
パニック障害になると、発作により日常生活に大きな支障をきたすことがあるため、周囲の理解と適切なサポートが求められます。しかし、本人を励まそうとかけた言葉が、かえってプレッシャーを与えるきっかけになることもあります。
以下では、パニック障害の人に言ってはいけない「無理強いする言葉」「励ましの言葉」について、理由をくわしく解説するので、一つずつチェックしてみましょう。
そもそもパニック障害について先に知りたい方は下記記事をご覧ください。
パニック障害の人に無理強いする言葉を言ってはいけない
パニック障害の人に対して、
「大丈夫だからやってみて」
「これをすれば治るから」
といった無理強いする言葉をかけてはいけません。無理強いする言葉は、一見励ましているように思えますが、パニック障害の人にとってはプレッシャーになる可能性があります。
また、パニック障害は本人の意思のみで克服できる精神疾患ではないので、無理に何かをさせようとすると悪化リスクを高めると考えられています。
無理強いする言葉のほかにも、「あの人はすぐ治ったらしいよ」といった誰かと比較する言葉も避けるといいでしょう。パニック障害の人は、自分の状態に対して不安を抱えていることが多いため、比較されると自己嫌悪に陥ってしまうようです。
パニック障害の人には安易に励ましの言葉を言ってはいけない
本人を元気付けたいと思っても、
「そんなに周りを気にしないで」
「深刻に考えなくても大丈夫」
といった安易な励ましの言葉をかけないようにしましょう。
安易な励ましの言葉は、パニック障害の人の苦しみを軽視しているように受け取られる可能性があります。また、気持ちを理解してもらえていないと感じさせ、ふさぎ込むきっかけになり得るので、無理に励ますのではなく「いつでも味方だよ」「ずっと待ってるよ」と寄り添う言葉をかけるといいでしょう。
パニック障害の人に言ってはいけない言葉
ここでは、パニック障害の人に言ってはいけない言葉の具体例をご紹介します。
パニック障害の人に言ってはいけない言葉はいくつかありますが、悪気がなくても間違った声掛けをしてしまうこともあります。
事前に具体的なNGワードを押さえておくことで、正しいサポートができたりパニック障害に対する理解を深められたりするので、具体例をひとつずつみていきましょう。
「病気だからって甘えてる」「そんなことは甘えだよ」などの理解のない言葉
パニック障害の人に対して
「甘えているだけ」
「そんなことは甘えだよ」
と理解のない言葉は避けた方がいいでしょう。パニック障害は医学的に認められた精神疾患であり、本人の甘えから生じるものではありません。
周囲の理解が不足していて、「パニック発作が出るのはただのわがまま」といった認識を植え付けると、パニック障害の人が孤立してしまい、ストレスから症状が悪化する恐れも考えられます。
また、本人が「甘えだから頑張らないと」と無理をしてしまう可能性もあるので、サポートをする際は本人のつらさを受け入れて、パニック障害を正しく理解するといいでしょう。
「気持ち次第だよ」「気合いで治るよ」など無責任な励ましの言葉
パニック障害は、気持ちで克服できるものではありません。そのため、パニック障害の人に対して、
「気持ち次第だよ」
「気合いで治るよ」
と無責任な励ましをしないようにしましょう。
パニック障害は、気の持ちようで何とかなると考える人も一定数存在しますが、実際には正しい治療をしないと適切な症状改善は見込めません。パニック障害の人に対して、気合いで何とかなるものだと思わせる行為は、治療の妨げになるかもしれないので、間違った精神論を押し付けないようにしましょう。
「薬を飲んでいるんだから大丈夫」「平気だよ」などの治療に関する言葉
パニック障害の治療の一環として薬物療法は有効と考えられていますが、薬を服用しても必ず症状が治まるわけではありません。薬はあくまで発作を和らげるものであり、完治を目指すためには考え方を見直したり生活習慣指導を受けたりすることが大切です。
周囲が
「薬を飲んでいるんだからもう大丈夫」
「平気だよ」
と言ってしまうと、薬を飲んでいるのに改善しない自分はおかしいのかと思い込むきっかけになり得ます。その結果、パニック障害の人が自分の症状を隠そうとして、周囲に助けを求められなくなる可能性も懸念されるので、薬によって治らない場合もあることを理解しておきましょう。
「気にしすぎだよ」「いちいち気にすることないよ」などのアドバイス的な言葉
パニック障害になると、発作が起きる恐怖から特定の場所に行けなくなったり、外出自体が怖くなったりする「予期不安」と呼ばれる症状があらわれます。
予期不安に悩まされているパニック障害の人に対して、
「気にしすぎだよ」
「いちいち気にすることないよ」
と言ってしまうと、余計に外に出づらくなってしまう可能性があります。
また、パニック障害の人は、自身の症状を大げさに話しているわけではありません。実際に、身体的・精神的苦痛を感じているので、症状が大丈夫だと決めつける発言は控えるといいでしょう。
「自分でなんとかしなよ」「他人に頼らないでよ」など突き放すような言葉
パニック障害の人に、
「自分でなんとかしなよ」
「他人に頼らないでよ」
と突き放すような言葉をかける行為は適切ではありません。パニック発作が起きると、本人は強い恐怖に襲われ、正常な判断ができなくなることがあります。
症状がつらい時に支えだと思っていた相手に突き放されると「自分で乗り越えるしかない」と感じ、ますます追い詰められてしまう可能性があります。身近な人がパニック障害になった際は、突き放すのではなく「何かあったら声をかけてね」と優しく伝えることが大切です。
正しい声掛けによって、治療に対して前向きに考えるきっかけになるかもしれないので、協力する姿勢を見せるようにしましょう。
「あなたの心が弱いだけだよ」「もっと強くならないと」などの攻めるような言葉
パニック障害を抱えている人に対して、
「あなたの心が弱いだけだよ」
「もっと強くならないと」
と言ってしまうと、自分を責めてふさぎ込んでしまう可能性があります。
パニック障害の改善には、本人の意志の弱さは関係なく、治す際は医学に基づいた正しい治療が大切となります。あまりに責めてしまうと、「治療をしても無駄なのか」という思考に陥り、治療自体を放置するリスクも高まるので、パニック障害の人を傷付ける発言はしないように気を付けましょう。
「そんなことでパニックになるの?」「パニックになるなんておかしい」などのプレッシャーを与える言葉
パニック発作が起きた際に、
「そんなことでパニックになるの?」
「パニックになるなんておかしい」
と言ってしまうと、症状を出してはいけないというプレッシャーを与えてしまいます。パニック発作が起きる原因は人それぞれ異なり、特定の状況や環境が引き金になることもあります。
また、発作のコントロールは難しく、本人も突然起こる症状に悩まされているので、思わぬ場面でパニック発作が出ても「いつでも側にいるよ」「心配しなくて大丈夫だよ」と優しく見守ることが大切です。
「普通の人はそんなことないよ」「できないのはあなただけだよ?」などの不安を煽る言葉
パニック障害の人に対して、
「普通の人ならこんなことで困らないのに」
「できないのはおかしい」
と声をかける行為も控えた方がいいでしょう。
普通の基準を押し付けてしまうと、「自分は普通ではない」と不安を駆り立てるきっかけになってしまいます。
パニック障害の症状は人それぞれで、適切なアプローチ法や完治までの期間は異なります。身近な人にパニック障害を治した人がいる場合でも、同じ経過を辿るとは限らないことを理解した上で声掛けを行うといいでしょう。
パニック障害の人をサポートするポイント
ここでは、パニック障害の人をサポートする際の3つのポイントを解説します。
サポートする際は聞き手になる
パニック障害の人をサポートする際は、聞き手になることを意識して、話をじっくりと聞く姿勢を持つといいでしょう。安心できる場所を提供することで、パニック障害の人は胸の内を打ち明けやすくなるかもしれません。
話を聞いた際も、「こうするべきだ」と無理にアドバイスしたり、「気にしすぎだよ」と軽く励ましたりすると逆効果になる恐れがあるので控え、共感を示しながら「つらかったね」「何かできることがあれば教えてね」と寄り添う言葉をかけましょう。
負担のないよう適度な距離感を守る
パニック障害の人をサポートする際は、相手にとって負担にならないよう適度な距離感を保つことも大切です。
例えば、定期的に「最近どう?」と連絡をとったり、比較的元気に見える時に遊びに誘ったりと、相手のペースに合わせながら接しましょう。
パニック障害の人は、気持ちが不安定になりやすい傾向にあるため、過度に干渉するとストレスから症状が悪化するケースもあるといわれています。
病状などは間接的に聞くようにする
パニック障害の人に病状を聞くときは、無理に病気について話させるのではなく、間接的に聞き出すことを意識しましょう。
パニック障害の人の中には、病気についてあまり話したくない人や聞かれること自体にプレッシャーを感じる人もいるので、本人が話やすい雰囲気作りを意識しましょう。
また、「病気のことは無理に話さなくてもいいよ」と伝えると、パニック障害の人は自分のタイミングで話しやすくなるので、常に寄り添う姿勢を見せるようにしましょう。
新宿うるおいこころのクリニックではパニック障害の治療に対応しています
新宿うるおいこころのクリニックでは、パニック障害の治療に対応しています。
パニック障害の症状は人によって異なりますが、新宿うるおいこころのクリニックでは、症状や進行具合に応じて治療を提案しているため、一人ひとりに合わせた症状改善が可能です。
また、患者様に安心して治療を受けてほしいという思いから、「副作用が怖い」「通院負担を減らしたい」などのご要望にも柔軟に対応いたします。
ご予約は公式HPやLINEから24時間承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
パニック障害の治し方や治療については下記記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
よくある質問
パニック障害になりやすい人の特徴を教えてください
パニック障害になりやすい人の特徴としては、几帳面で責任感が強い人やストレスを抱え込みやすい人があげられます。
一概に上記の性格の人が発症するとは限りませんが、これらの性格に当てはまる人は、自分を追い込んだり一人で何とかしようとしたりする傾向にあるため、パニック障害になりやすいといわれています。
パニック障害の人に言ってはいけない言葉を教えてください
パニック障害の人に対して言ってはいけない言葉には、「気にしすぎ」「そんなことでパニックになるの?」といったアドバイス的な言葉があげられます。
また、励ましの言葉として多く使われる「頑張れ」「気合いで乗り越えよう」といった言葉も、パニック障害の人にとってはプレッシャーになると考えられています。
声掛けをする際は、「無理しなくていいよ」「いつでも支えになるよ」と寄り添う姿勢を見せるといいでしょう。