うつ病・うつ症状で悩んでいる場合、TMS治療も一つの選択肢となります。
TMS治療自体、うつ病・うつ症状に対するエビデンスがある安全な治療法ですが、
「聞き覚えがなく本当に効果があるのか不安」
「電磁気で刺激と聞くとなんだか怖い」
と感じる人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、TMS治療を選択するメリットや使える症例、エビデンスについて解説します。記事を見ればTMS治療の有効性が分かるので、うつ病・うつ症状の治療法で悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
このコラムの監修医師

新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
うつ症状やうつ病でお悩みの場合、TMS治療が有効です
うつ症状やうつ病は、TMS治療(経頭蓋磁気刺激法)により改善が見込めます。従来の治療法として、薬物療法や心理療法が一般的ですが、これらの治療法は体内循環や思考にアプローチすることで症状の改善を図りますが、個人差があり、薬物療法においては副作用も懸念されます。一方、TMS治療は、身体を傷つけず、副作用もほとんどありません。
また、TMS治療であれば、薬を使用できない方でも使用できることから、うつ症状やうつ病の新しい治療法として注目されています。
TMS治療とは
TMS治療(経頭蓋磁気刺激法)とは、磁気を用いて人間の感情を司る前頭葉に刺激を与えて脳を活性化させ、多様な症状の緩和を図る磁気治療のことです。
うつ病は、脳の機能低下により起こると考えられています。脳の機能が低下している部分に刺激を与えることで、本来の動きになるよう働きを調整できるため、うつ病が改善されるのです。
電磁気で刺激と聞くと不安に感じる方もいるかもしれませんが、治療中のリスクが低く副作用も出にくい安全な治療といわれています。
TMS治療の詳しい解説は、下記記事をご確認ください。
TMS治療がうつ症状・うつ病に効くメカニズム
TMS治療では、脳の特定の部位に電磁気で刺激を与えることで、うつ症状・うつ病を改善していきます。脳の機能低下が起きている場合でも、刺激により神経同士の働きを活発にさせるため、脳がうつ病を起こす前の正常な状態に戻るようです。
脳が正常な働きをすることで、感じていた落ち込みや無気力感が徐々に消失し、うつ症状・うつ病の改善につながるといわれています。
TMS治療でうつ病・うつ症状を治すメリット
TMS治療は、副作用の心配がなかったり効果的な症状改善が見込めたりすることから、うつ病やうつ症状に悩む方々にとってメリットの大きい治療法となります。また、難治性うつ病に該当する場合は保険適用になるため、重く辛いうつ症状が続いている場合でも受けやすいです。
では実際に、TMS治療の具体的なメリットについて詳しくみていきましょう。
TMS治療でうつ病・うつ症状を治すメリット①副作用の心配が少ない
従来の薬物療法では、眠気、体重増加、消化不良などの副作用が現れることがありますが、電磁気で刺激を用いるTMS治療であれば副作用はほとんどありません。
軽い頭痛や頭部の違和感を覚えるケースもあるようですが、治療後はすぐに日常生活に戻れることが多く、違和感はすぐに治まると考えられています。治療中でも副作用の心配が少なく、普段通りの生活を過ごせることは大きなメリットです。
TMS治療でうつ病・うつ症状を治すメリット②薬で効果がなかった人でも改善が期待できる
TMS治療は、脳の特定部位に直接刺激を送るため、薬が効きにくい人に対しても効果が期待できます。そのほかにも、薬物療法が体に合わなかったり投薬を避けたかったりする場合でも、投薬不要で挑戦しやすい治療法です。非薬物療法としては認知行動療法なども存在しますが、TMS治療の方が短期間で効果が現れるようです。
また、うつ病患者の3分の1は抗うつ薬に反応しない治療抵抗性うつ病といわれています。治療抵抗性うつ病の場合、以前は思考にアプローチする心理療法を実践する選択しかありませんでしたが、TMS治療の導入されたことで、より効率的な改善が見込めるようになっています。
TMS治療でうつ病・うつ症状を治すメリット③難治性うつ病は保険適用となる
一般的なうつ病・うつ症状の治療は保険適用外ですが、難治性うつ病であれば保険適用で治療が受けられます。
難治性うつ病とは、従来の薬物療法や心理療法では十分な効果が得られず、症状が長期間改善しないうつ病のことを指します。TMS治療が保険適用となることで、治療自体のハードルが下がるため、患者の経済的・精神的負担の軽減を図れるようです。
うつ病・うつ症状にTMS治療を使える症例
ここでは、TMS治療を使える症例について紹介します。TMS治療は気分の落ち込みや興味喪失などのうつ症状に対する有効性が認められた治療です。うつ症状の他に気分の高揚がみられたり、妄想などの他の症状が出ていたりする場合はリスクが伴うので、TMS治療の対象となる症例を確認してみましょう。
うつ病・うつ症状におけるTMS治療の症例①気分の落ち込みが激しい
気分の落ち込みが激しく自己否定感に苛まれている、朝を迎えることがつらいと感じる、強い落ち込みから元気がなくなり起きられない、などの症状が出ている場合はTMS治療が有効です。
TMS治療では、神経細胞の活性化を促し気分の改善を図れるため、刺激を与えることで酷い落ち込みが軽減されるといわれています。
うつ病・うつ症状におけるTMS治療の症例②うつ病からくる不眠症状がつらい
うつ病により不安感が強くなると、寝る前でも心が落ち着かず興奮状態が続いてしまうようです。TMS治療では、不眠症状の直接的な改善は図れませんが、うつ症状を改善することで間接的に不眠も改善されるといわれています。
また、電磁気で刺激により心身バランスが整うことで、うつ症状に伴い現れる就寝時の考えすぎや緊張なども軽減できるようです。
うつ病・うつ症状におけるTMS治療の症例③何をしても楽しいと感じない
何をしても楽しく感じない、以前は楽しめたことに興味が湧かない、といった症状はうつ病でよくみられます。症状が続くと、引きこもりがちになったり思考が働かなくなったりするようですが、TMS治療を通して脳の状態を平常時に戻すことで症状は改善されるようです。
以前楽しんでいた活動への興味を取り戻すきっかけになるため、うつ症状の回復に役立つといわれています。
うつ病・うつ症状にTMS治療を使う際のポイント
TMS治療はうつ症状に対して効果的な治療法ですが、治療を受けるだけでなく生活習慣の改善も意識することが大切です。また、治療前は十分な睡眠を確保し、アルコール摂取などは控えないと副作用が生じるリスクが高まるので、効果を高めるためにも生活習慣の改善を守るようにしましょう。
うつ病・うつ症状にTMS治療を使う際のポイント①環境調整などを並行して行う
TMS治療の効果を引き出すためには、並行して環境調整や生活習慣の見直しを行うと良いです。例えば、ストレスの少ない働き方に変える、睡眠サイクルを一定に保つ、リラックス時間を設ける、などを意識することで日常生活での負担が減り、うつ症状が回復しやすくなるようです。
環境調整や生活習慣の見直しは、続けると再発予防につながるので完治後も継続的に実践しましょう。
うつ病・うつ症状にTMS治療を使う際のポイント②施術前日は十分な睡眠を確保する
TMS治療を受ける前日は、十分な睡眠を取ようにしましょう。睡眠不足のまま治療を受けると、けいれんリスクが高まると考えられています。
また、治療中に寝てしまうと治療効果が薄れる可能性があるので、最大限に効果を発揮させるためにも前日はしっかり寝ておくと良いです。
うつ症状に対するTMS治療のエビデンス
TMS治療は、うつ症状に対してのみエビデンスが存在します。
日本では、薬物療法に反応しないうつ病患者への治療法として推奨されている一方で、他の精神疾患に対するエビデンスがなく、うつ症状以外に使用した際の悪影響が定かではありません。
例えば、双極性障害でTMS治療をした際、電磁気で刺激によってうつ状態は改善されても、躁状態は悪化する可能性が考えられます。
また、うつ症状のみ又は他の精神疾患の症状がほぼみられないケースではTMS治療を使用しても良いですが、その他のケースでは基本的に使用が推奨されていません。
参考
経頭蓋磁気刺激 (TMS) の基礎と臨床|伊津野 拓司,岩波明
うつ病・うつ症状のTMS治療は精神科・心療内科で受けられる
TMS治療は、専用の設備と知識を持つ医療機関で行われるため、メンタルヘルスを取り扱う精神科・心療内科に相談しましょう。
精神科・心療内科では、検査をした上でTMS治療が適しているか判断し、必要に応じて治療計画を立てます。場合によっては、薬物療法と併用して行われたり、心理療法を導入したりすることもあります。
耳にしない治療法で不安が伴うかもしれませんが、精神科・心療内科では専門知識を備えた医師がサポートしてくれるので安心して治療に挑みましょう。
うつ病・うつ症状で精神科・心療内科を受診する目安
以下の症状に当てはまる場合はうつ病の可能性があるので、精神科・心療内科を受診すると良いです。
- 体がだるく疲れやすい
- 騒音が気になる
- 気持ちが沈む、気が重いと感じる
- 音楽を聴いても楽しいと感じない
- 起床時から気力が湧かない
- 決断力・集中力の低下がみられる
- 首こり・肩こり・頭痛がある
- 食欲が湧かず食べても味がしない
- テレビをみても楽しいと感じない
- 息の詰まりや苦しさを感じる
- のどのつかえを感じる
- 人生が詰まらないと感じる
- 眠れず朝早く目が覚めてしまう症状に悩まされている
うつ病を疑うべき症状やうつ病と診断される身体・精神症状の詳しい解説は下記記事をご確認ください。
参考
女性の健康推進室 女性の健康推進室 Wellness Labo ウェルネスラボ|うつ症状チェック
新宿うるおいこころのクリニックではうつ病・うつ症状に対するTMS治療を行っています
新宿うるおいこころのクリニックでは、TMS治療を用いたうつ病・うつ症状の改善が可能です。
治療では、患者様の症状に合わせてうつ病の治療計画を立てることで、根本的な原因改善を促すことが可能です。また、TMS治療と薬物療法や認知行動療法の併用により、治療効果を最大限に発揮した治療を提供いたします。
うつ病は、適切な治療により改善・抑制ができる疾患です。初期段階で治療することで症状の早期改善を目指せるため、少しでも体調に違和感のある方はどうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
うつ病やうつ症状をTMS療法で治療すると効果はすぐに現れますか?
TMS治療の効果は個人差がありますが、何度か治療を繰り返すことで効果が現れる傾向にあります。すぐに効果が感じられない場合でも、継続した治療により徐々に症状が改善していくので、医師と相談の上、途中で中断せずに一定期間は続けてみましょう。
TMS治療を受けた当日の注意事項はありますか?
TMSの治療後の特別な注意事項はなく、普段通りお過ごしいただけます。軽いめまいや頭痛、耳鳴りが生じることがありますが、通常であれば治療後すぐ~数時間以内に消えます。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激法)のうつ病・うつ症状への効果は?選択するメリットや有効性について
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