多くの人がストレスにさらされている現代社会。
心身への負担が大きいとうつ病になるリスクも潜んでいますが、うつ病の初期症状は疲れなどと勘違いされることもあり、症状が出ていても見逃してしまう人もいるようです。
そこでこの記事では、自分でうつ病を確認できるチェック項目や症例をご紹介します。心身の健康を保つためにも、体の不調が続いている方は確認してみてください。
このコラムの監修医師

新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
うつ病を疑ったら自分でチェックしてみよう
うつ病を疑った際は、自己チェックを通して症状にいくつ当てはまっているか確認すると良いでしょう。例えば、症状は人によって異なりますが、主に気分の落ち込みや無気力感といった症状が出るため、いくつか当てはまることでうつ病に気づくきっかけになるでしょう。また、チェックを通して早期段階でうつ病だと気づくと、症状の悪化を防いで治療の負担も軽減できるかもしれません。
うつ病かチェックすると症状が分かる
うつ病の症状を自分でチェックすることで、漠然とした不調の原因がうつ病によるものなのか、それとも一時的なストレスなのかを判断しやすくなります。
うつ病は早めの対処が大切ですが、症状に気づかず放置してしまう人も多いようです。チェックにより、今の自分の状態を客観的に把握できると、医師に相談するきっかけをつくれるでしょう。
また、うつ病が軽度の場合、気分の落ち込みを単なる疲れや怠けと考えてしまいがちです。放置すると日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があるため、チェックを通して症状と自分の状態を知っていくことが大切です。
うつ病かチェックすることで別の病気に気づくこともある
うつ病のチェックにより、別の病気の兆候に気づくこともあります。例えば、慢性的な疲労感がある場合、うつ病と似た症状を持つ甲状腺機能低下症や貧血の可能性も考えられます。また、強い不安感を伴う場合は、不安障害やパニック障害といった別の精神疾患に該当するかもしれません。
このように、うつ病のチェックをすることが心身の異変に気づくきっかけになります。うつ病のチェック項目に当てはまらない場合でも、うつ病ではないからといって安心せず、気になる症状が続く際は医師の診察を受けると良いでしょう。
実際にうつ病かチェックしてみよう
うつ病になると、精神面・身体面・行動面でそれぞれ症状があらわれるようになります。うつ病の症状は個人差があり、ただの疲れやストレスと勘違いされるケースもありますが、意欲低下などの症状が続いている場合は、うつ病の可能性もあるので意識してチェックを行うと良いでしょう。
以下では、精神面・身体面・行動面に分けて症状を説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
うつ病チェック項目①精神面での症状
うつ病の精神面でみられる主な症状は以下のとおりです。
- 悲しみや憂うつな気分が一日中続き、気持ちが晴れないことが多い。
- 以前楽しんでいたことに興味を持てず、何をしても楽しさを感じられない。
- 自分には価値がないと思い込むことが多く、自信を失ってしまう。
- 小さなことでもイライラしたり、怒りっぽくなったりすることが増える。
- 疲れやすく、日常的なことをするのも面倒に感じ、何もしたくない。
- 集中力が欠け、物事に対する決断をするのが難しくなる。
- 死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思うことが増えた。
うつ病チェック項目②身体面での症状
うつ病の身体面でみられる主な症状は以下のとおりです。
- 食欲が減ることが多く、食べ物に対する興味が薄れる。または過食になり、無意識に食べ過ぎてしまうことがある。
- 眠れないことが多く、夜中に目が覚めたり寝つきが悪かったりする。または寝すぎることがあり、長時間寝ても疲れが取れないと感じる。
- 朝の方が体調や気分が悪く、夕方になると少し楽になることがある。
- 朝起きるのが非常に辛く感じ、仕事や日常生活に支障をきたすことがある。
- 常に疲れやすく、元気が出ない。
- ちょっとした動作でも疲れてしまい、日常生活が億劫に感じる。
- 身体が重く感じたり動きが鈍くなったりして体調不良に気づくが、治すための気力がわかない。
うつ病チェック項目③行動面での症状
うつ病の周りから指摘される行動としてみられる主な症状は以下のとおりです。
- 以前と比べて表情が暗く元気がない様子が目立つようになる。
- 笑顔を見せることが少なく感情表現が減る。
- 体調不良を訴えることが増えて身体の痛みや倦怠感から休む機会が多くなる。
- 疲れやすさや体のだるさを頻繁に訴える。
- 仕事や家事の能率が低下し、効率的に物事をこなせなくなる。
- ミスが増えて集中力の欠如が目立つようになる。
- 周囲との交流を避けるようになり、友人や家族とのコミュニケーションを取らなくなったり、積極的に参加したりしなくなる。
- 遅刻や早退、欠勤が増加する。
- 以前は楽しんでいた活動への興味を失ってしまう。
- 飲酒量が増え、ストレス解消や気分を紛らわすために飲酒を繰り返すことが多くなる。
参考
うつ病|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~(厚生労働省)
うつ病チェック項目に当てはまる症例を解説
ここでは、うつ病チェック項目に当てはまる
「眠り過ぎてしまう」
「疲れが取れない」
「死について考える」
「落ち着きがなくなる」
「集中力が低下する」
の具体例を解説します。
当てはまると感じる症状がある場合、自身の普段の行動と照らし合わせながらチェックしてみてください。
うつ病チェック項目に当てはまる症例①眠りすぎてしまう
うつ病になると、夜に十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中も強い眠気に襲われて長時間眠り続けてしまうことがあります。また、寝ても疲れがとれず、さらなる眠気をもたらすこともあるようです。
睡眠が乱れると、日中に何もできなくなったり生活リズムが乱れたりして、心身への負担が高まりうつ病の症状を悪化させるといわれています。
うつ病チェック項目に当てはまる症例②疲れがとれない
うつ病で疲れが取れない場合、十分な休息や睡眠をとっても疲れが抜けず、常に体が重いと感じるようです。また、身体的な疲れだけでなく、精神的にも「何をするのも面倒」「やる気が出ない」と感じることが多くなります。
このような疲れが出た場合、単なる疲労ではなくうつ病の可能性が考えられるため、長期間続く場合は医師に相談すると良いでしょう。
うつ病チェック項目に当てはまる症例③死について考える
うつ病が進行すると、死について考える機会が増える場合があります。
例えば、
「自分は価値がない」
「いなくなったほうがいい」
といった思考が繰り返されて、未来に対して悲観的に考え出すようです。
中には、自殺を考え出すケースもあります。このような症状を放置していると、最悪の事態を招くおそれも考えられるため、症状が辛い場合はできるだけ早く信頼している人や病院を頼ると良いでしょう。
うつ病チェック項目に当てはまる症例④落ち着きがなくなる
うつ病になると、そわそわしたり、じっとできなくなったりすることがあります。例えば、手足を常に動かす、貧乏ゆすりを頻繁にするなどの症状があげられ、怒りっぽくなる、イライラする場面が増えるといった性格の変化もみられるようです。また、漠然とした焦りから何かをしなければならないと感じる一方で、実際に行動を起こす活力がないため、強い不安や焦燥感を生み出すといわれています。
うつ病チェック項目に当てはまる症例⑤集中力が低下する
うつ病になると、何かに取り組んでも集中が続かず、ミスが増えたり理解力が落ちたりすることがあります。また、本を読んでも内容が頭に入らない、映画を観てもストーリーを追えないといった症状もみられるようです。
集中力が低下すると、周囲の人からの評価が下がり、悪循環を招くともいわれています。また、集中力の低下から、間違った決断をしてしまうトラブルを招くリスクも高まるようです。
うつ病の正しい診断は精神科・心療内科へ行こう
うつ病のチェック項目に当てはまる場合、正しい診断を受けるためには精神科や心療内科に行くことが大切です。自己判断では、何らかの症状を見逃したり別の病気に気付けなかったりするので、適切な検査を受けて不調の原因を探るようにしましょう。
また、医師への相談により適切な治療が可能となります。自己判断で行う間違ったケア方法では、症状の悪化を引き起こすこともあるので、医師を頼り専門的な治療を受けると良いでしょう。
うつ病の病院での診断基準
病院で行ううつ病の診断には、特定の基準が設けられています。以下の症状のうち、①または②の症状が必ず該当した上で、その他の症状が4つ以上同時に2週間以上続くと、うつ病だと診断されます。
- ①ほとんど1日中、抑うつ気分が続く
- ②すべての活動に対して興味や関心がなくなる
- ③著しい体重増加又は減少がみられる
- ④不眠や過眠などの睡眠障害が生じる
- ⑤話し方や動作が普段より遅い、またはじっとしていられない
- ⑥思考力や決断力の低下がみられる
- ⑦日常的に疲労感や気力の喪失を感じる
- ⑧無価値感や自己否定感を抱く
- ⑨集中力や思考力の低下がみられる
- ⑩自殺や死に関する考えが浮かぶ
これらの症状は、うつ病の典型的な特徴といわれています。特に、抑うつ気分や興味関心の喪失はうつ病の代表的なサインであり、長期間みられる場合は専門的な治療を受けることが大切となります。
参考
うつ病の診断と治療|荒井 稔(順天堂大学医学部精神 医学講座客員助教授)
うつ病でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
今回は、うつ病の自分でできるチェック項目について解説しました。うつ病かもしれないと思った際は、まずはチェック項目で心身の状態を客観視してみると良いでしょう。
また、複数項目に当てはまる場合は、そのまま放置せず病院へ受診し正しい診断と治療を受けるようにしましょう。
新宿うるおいこころのクリニックでは、うつ病の治療に対応しています。当院では、薬物療法やTMS治療などの治療法をお客様の症状に合わせて診療しているほか、公認心理士も在籍しており、カウンセリング体制も整っています。
一人ひとりに寄り添う症状改善を可能にしているので、うつ病でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
よくある質問
病院でのうつ病の治し方を教えてください
病院でのうつ病の治療は、主に薬物療法、カウンセリング(心理療法)、生活習慣の改善指導が採用されます。また、新宿うるおいこころのクリニックでは、TMS治療も採用しているため、薬物療法で効果がなかったうつ病患者様でも別の治療法を選択できます。
うつ病の症状は人によって異なり、適切なアプローチも変わるので、自己判断せず病院で治すようにしましょう。
うつ病を自分でチェックするメリットを教えてください
うつ病を自分でチェックするメリットは、自分の不調を客観的に把握できるようになることです。うつ病の症状を単なる疲れと判断してしまうこともありますが、セルフチェックをすれば「自分はうつ病の可能性があるのか」と気付くきっかけになるでしょう。また、チェックを通して早めにうつ病に気付くこともできるので、気軽に症状チェックをしてみると良いでしょう。