「早く寝ているのに疲れが取れない」「日中にやる気が出ない」
などの原因不明の不調に悩まされている場合、自律神経失調症が関係している可能性があります。
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れることで不調が現れる状態を指しますが、どのような行動がきっかけとなるのでしょうか。
そこでこの記事では、自律神経のメカニズムや主な働き、自律神経失調症によくみられる症状、乱れを起こす生活習慣について解説します。
目次
自律神経失調症とは
自律神経失調症とは、自律神経バランスが乱れることで生じる不調のことです。
症状としては、頭痛やめまい、動悸、不眠、意欲低下など心身にさまざまな不調が現れますが、病院を受診しても身体的な異常がみられないことが特徴です。
放置をすると、日常生活や仕事に支障が出る可能性もあるため、自律神経の仕組みや乱れの原因を知っておき正しく対策することが大切です。
自律神経失調症は自律神経のバランスが乱れることで起こる
自律神経失調症は、交感神経と副交感神経から成り立つ自律神経のバランスが崩れることで発症します。
自律神経の乱れは、ストレスや不規則な生活、過労などにより、交感神経が過剰に働いたり副交感神経が抑制されたりすることで起こるといわれています。
自律神経が正常に機能しなくなると、体内リズムや機能調整がうまくいかなくなるため、疲労感や心身の不調が生じやすくなるようです。
参考
・自律神経失調症候群の精神身体医学的研究|佐野 昇(日本内科学会雑誌)
自律神経の主な働き
自律神経は、呼吸を調整する、気持ちを落ち着かせたり興奮させたりする、排泄を促す、消化を促進・抑制するなど、生きていく上で欠かせない行動が適切に行われるようにコントロールする働きを担っています。
自律神経のバランスはどのように保たれている?
自律神経は、興奮を促す交感神経とリラックスを促す副交感神経が、相互に切り替わることでバランスを保っているようです。
例えば、交感神経は運動や仕事をしている時に活発に働き、集中力を高めたり呼吸を早くしたりします。一方副交感神経は、リラックスしている時や睡眠中に優位になり、体を休めたり回復を促したりします。
しかし、体に負担がかかると、適切ではないタイミングでそれぞれの自律神経が働くようになるため、就寝時なのに体が興奮して眠れなくなる、体の緊張状態が続いてしまうなどといった不調が現れるようになるのです。
自律神経は気候の影響を受けやすい
自律神経は、低気圧や温度変化といった気候の影響を受けやすいといわれています。
例えば、寒暖差が激しい季節の変わり目で関節が痛くなる、天候が悪化すると偏頭痛やしびれが出るといった症状がみられるようです。
気候の影響を受ける原因は、気候変化で生じたストレスと考えられており、ストレスから交感神経が興奮することが痛みにつながっているとされています。
自律神経の乱れで起こる主な不調
自律神経の乱れで起こる主な不調は、以下のとおりです。
- 全身倦怠感・疲労感
- 体重減少
- 微熱
- 寝汗
- 足のだるさ
- 不眠
- めまい・頭痛
- しびれ
- 肩こり・腰痛
- 動悸
- むくみ
- 食欲不振
- 胃痛
- 便秘・下痢
- 吐き気
参考
・第74回日本自律神経学会総会 自律神経研究の歴史―情動と自律神経―|田村 直俊(埼玉医科大学脳神経内科)
・気象変化と痛み|佐藤 純(名古屋大学動物実験支援センター)
・自律神経失調症候群の精神身体医学的研究|佐野 昇(日本内科学会雑誌)
自律神経失調症に多い症状
自律神経失調症では、吐き気や意欲低下、不眠などさまざまな症状が現れます。ここでは、自律神経失調症に多くみられる症状と考えられる原因について解説します。
自律神経失調症に多い症状①疲れやすくなる
疲労感は、交感神経が優位になり体が常に緊張状態になることで起こるとされており、寝ても疲れが取れない、疲れやすくなる、だるさが取れないといった症状がみられるようです。
慢性的な疲労感が続くと体力や集中力の低下を引き起こし、仕事でミスが増えたり作業効率が落ちたりと日常生活に支障をきたすリスクが高まります。
自律神経失調症に多い症状②イライラする
交感神経が過剰に働くと、血圧や脈の上昇が起こりイライラしやすくなるようです。イライラした状態では冷静な判断ができなくなり、ストレスをさらに感じやすくなるといわれています。
また、ストレスホルモンが多く分泌されることで、心身の負担が増大し、強い不安から眠れなくなる、胃痛や下腹部痛、腹部違和感などの症状が 起こるとされています。
参考
・第72回日本自律神経学会総会 心理ストレスに対する交感神経反応と行動反応の中枢神経メカニズム|片岡 直也、中村 和弘(名古屋大学大学院医学系研究科統合生理学分野)
自律神経失調症に多い症状③肩こりや腰痛が起きる
肩こりや腰痛などの症状は、筋肉の緊張や血流不良により引き起こされるといわれています。
一見軽い症状と思われがちですが、慢性化すると頭痛に発展したりめまいが起こったりする可能性もあるので、ただの不調と思わず早めに改善しておくことが大切です。
自律神経の乱れをセルフチェック診断
以下に当てはまる場合、自律神経が乱れている可能性があります。
- よく耳鳴りがする
- 鼓動が速くなることがある
- 座ってもいても息切れをすることがある
- 気候の変化で体調が悪くなる
- 夏でも手足が冷える
- 吐き気がある又は吐いている
- 消化が悪い
- 胃の具合が悪い
- 下痢・便秘に悩まされている
- 肩や首が凝っている
- 頭痛や頭の重さにより気分が滅入る
- 急に体が暑くなったり冷たくなったりする
- 手足が震えることがある
- 少し作業をするだけでも疲れる
- 体の一部にしびれがある
- 起床時の段階で疲れ切っている
※上記のチェックリストは、あくまで自律神経失調症の目安となるものです。症状に該当する場合は、医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。
自分が自律神経失調症の治療を受けるべきか悩んでいる方は、下記記事も合わせてご覧ください。
参考
・自律神経失調症候群の精神身体医学的研究|佐野 昇(日本内科学会雑誌)
自律神経失調症につながる生活習慣
自律神経失調症は、生活習慣の乱れが影響することが多いようです。以下では、自律神経失調症につながる生活習慣を解説するので、自身の生活と照らし合わせてみてください。
自律神経失調症につながる生活習慣①寝る時間がバラバラ
「夜更かしをしがち」「日勤と夜勤を繰り返している」などの生活習慣から寝る時間が不規則だと、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、疲労感やストレスが増すことがあるといわれています。
また、体内時計が乱れることで、体が睡眠モードに入らなくなったり睡眠の質が低下したりしてストレスが溜まり、自律神経バランスが崩れるようです。
自律神経失調症につながる生活習慣②栄養が偏っている
「コンビニ弁当が多い」「自炊をしない」などの生活習慣から栄養が偏ると、体内バランスが崩れて自律神経の調整が難しくなるといわれています。
特に、ビタミンやミネラルは体の調子を整える役割があるため、不足すると自律神経失調症につながるようです。
栄養バランスだけでなく、決まった時間に食事を摂ることも大切なので、「食事の時間がバラバラ」「朝食を食べない」などの生活習慣は見直すと良いでしょう。
自律神経失調症につながる生活習慣③水分を摂らない
「必要最低限しか水を飲まない」「喉が渇いても放置している」といった生活習慣を送っていると、体内の血液量が減少するようです。水分不足になると、一度の心拍でより多くの血液を送ろうと交感神経が過剰に働くため、自律神経失調症につながるといわれています。
自律神経のバランスを整える行動
自律神経のバランスを整えるためには、生活習慣の見直しや積極的な健康管理が大切となります。ここでは、日常生活に取り入れられる自律神経のバランスを整える行動をお伝えします。
自律神経のバランスを整える行動①健康的な食事を心がける
毎日決まった時間に食事を摂ることで、セロトニンの分泌が促され、自律神経を整えられるといわれています。
食事の際は、主食・主菜・副菜が揃った食事を意識しましょう。バランスの良い食事を摂ることで、体を整えるビタミン・ミネラルを補えたり、体内では作れない必須アミノ酸を摂取できたりします。
自律神経のバランスを整える行動②体の緊張をほぐす
ストレッチやヨガを取り入れて緊張をほぐすことで、副交感神経が活性化され、リラックス状態を作れるといわれています。
ストレッチを行うだけでなく、生活にメリハリを付けると自律神経が整いやすくなるので、日中は運動して交感神経を適度に働かせ、夜はリラックスして副交感神経が優位になるよう促すと良いでしょう。
自律神経のバランスを整える行動③自律訓練法を取り入れる
自律訓練法とは、リラックスした状態を意識的に作り出し、自律神経の調整を図る自己催眠法のことです。
生活に取り入れることで自律神経バランスの回復が促されるので、1回3~5分程度を目安に毎日2,3回行ってみましょう。
簡単な自律訓練法の流れは以下のとおりです。
- ①部屋を暗くし、静かで落ち着ける空間にする
- ②仰向けに寝る又は椅子に腰をかける
- ③軽く目を閉じて、「気持ちが落ち着いている」「右腕→左腕→両足が重たい」「右手が温かい→左手が温かい→両脚が温かい」と順番に心の中でゆっくり唱える
- ④終える時は、大きく伸びをしたり両手を強く握ったりして、自己催眠状態を解く
参考
・自律訓練法の健康効果とは|健康長寿ネット(長寿科学復興財団)
自律神経の乱れが続くと生活習慣病を引き起こす可能性も
自律神経の乱れが続くと、心身にさまざまな影響を及ぼし、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす可能性があるといわれています。
また、自律神経の乱れからくる不眠や疲労感によりうつ状態になる可能性も高まるので、症状を軽く考えず適切なケアを受けることが大切です。
自律神経失調症が疑われる場合は病院へ受診
自律神経の乱れが疑われる場合、病院へ受診し適切な治療を受けることがおすすめです。
病院へ行く際は、不眠や意欲低下などの精神的な問題があるなら精神科・心療内科、胃の不調がある場合は内科、肩こりが酷い場合は整形外科と、症状に応じた診療科へ相談すると良いです。
専門医の診断を受けることで正確な病状の把握ができ、生活習慣の見直しについてのアドバイスも受けられるので、根本的な改善につながるでしょう。
自律神経失調症でお悩みの方は、新宿うるおいこころのクリニックへ
今回は、自律神経のメカニズムや主な働き、自律神経失調症によくみられる症状、乱れを起こす生活習慣について解説しました。
自律神経は、生きていく上で欠かせない働きをしている神経で、水分不足や不規則な食生活により乱れると疲れやすくなったり、イライラしたりする症状が出るようになります。
慢性化すると、生活習慣病を引き起こすリスクも高まるので、日ごろから不健康な生活を送らないように気を付けておきましょう。
セルフケアをしても疲労感や不眠などの症状が治らない場合は、新宿うるおいこころのクリニックにご相談ください。
新宿うるおいこころのクリニックでは、自律神経失調症により生じた精神症状の治療に対応しています。経験豊富な専門医が症状に応じて治療を提案することで、一人ひとりに合わせた症状改善を目指せます。
ご予約は公式HPやLINEから24時間承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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よくある質問
自律神経失調症とうつ病の違いは何ですか?
自律神経失調症は、体内の自律神経バランスが崩れることで、心身に不調を来たす疾患のことです。一方、うつ病は脳内の神経伝達物質の異常が原因で、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失といった症状が出る精神疾患という違いがあります。
自律神経失調症が辛い場合はどうすればいいですか?
自律神経失調症が辛い場合は、生活習慣の見直しと並行して病院へ受診することがおすすめです。症状に合わせた治療を受けることで、回復を目指せるといわれています。