ASD(自閉スペクトラム症)は先天性の特性ですが、大人になって気付くケースも多いです。
例えば、子どもの頃はコミュニケーションが円滑に進んでいても、社会に出てから人間関係につまずいたり、仕事の進め方に悩んだりする場面があります。
また、性格だと思っていたものが、実はASD(自閉スペクトラム症)だったというパターンもあるので、まずはチェックリストを参考に症状を確認してみましょう。
このコラムの監修医師

新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
大人でもASD(自閉スペクトラム症)と診断されることがある
ASD(自閉スペクトラム症)は、発達障害の一つであり、大人になってから診断されるケースも多々あります。大人になって診断された場合、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)の症状が認識されずに過ごしている場合があるため、成人になってからの診断が遅れることも多いようです。また、軽度の症状では他の精神疾患と間違われたり、社会的な適応の困難さがそのまま大人になっても続くことがあります。
また、大人のASD(自閉スペクトラム症)では、主に社会的なコミュニケーションの困難や特定の興味への偏り、繰り返しの行動などが特徴として現れます。大人の場合、これらの症状が職場やプライベートの人間関係に影響を与えることが多く、生きづらさからストレスを感じることがあるようです。
まずは大人のASD(自閉スペクトラム症)をチェックリストで確認すると良い
大人でASD(自閉スペクトラム症)を疑う場合、まずは自分の症状をチェックリストで確認することがおすすめです。ASD(自閉スペクトラム症)の特徴としては、社交的な困難や、特定の活動への執着、反復的な行動がみられる傾向にあります。自分の行動や思考パターンを振り返り、周囲の人とのコミュニケーションに問題があると感じる場合は、チェックリストと照らし合わせてみましょう。
大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストと症例をチェック
では実際に、大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストと症例をお伝えしていきます。
チェックリストでは症状のチェックができます。確定診断は心療内科へ行く必要があるので、必要に応じて受診しましょう。
※新宿うるおいこころのクリニックでは、ASD(自閉スペクトラム症)の確定診断は行なっていません。ASD(自閉スペクトラム症)の確定診断を受けたい場合は、ASD(自閉スペクトラム症)の確定診断が可能な心療内科にご相談ください。
大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリスト
- ①<コミュニケーションにおける困難がある>
・アイコンタクトや顔の表情、体を使ったコミュニケーションが少ない
・同じ年代の人と関係を築くのが難しい
・自分が興味を持っているものを、他の人に見せたり、渡したりすることが少ない - ②<意思を伝えるのが難しい>
・言葉を使って自分の考えを伝えるのが難しい
・会話の発達に遅れがあったり、特定の言葉を繰り返したりすることがある - ③<行動や興味が限られていたり、同じことを繰り返す>
・ある物や行動、考えに強いこだわりを持つ
・固定観念や自分の思い込みで行動する
・自傷行為などを繰り返すことがある
参考
・自閉症スペクトラム障害の発達と支援|山本 淳一、楠本 千枝子
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症例①相手の言っていることを理解できない
大人のASD(自閉スペクトラム症)の特徴の一つに、他者の言葉や意図を理解するのが難しいという特性があります。例えば、相手が冗談を言っているのに真に受けてしまったり、比喩表現をそのまま受け取ってしまったりすることがあるようです。
相手が何を本当に求めているのか、感情的なニュアンスや暗黙のメッセージの読み取りが難しいこともあり、社会的なやり取りがうまくいかず、誤解を生むケースが多いといわれています。
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症例②集団行動が苦手
大人のASD(自閉スペクトラム症)の人は、集団で行動することが苦手な場合が多いようです。例えば、会議やグループディスカッションで他の人と意見交換をする際、意思を伝えることが難しく感じたり、他の人が話している内容に共感できず、会話についていけなくなったりすることがあります。
また、集団の中での自分の役割を理解しにくいため、グループから距離を置こうとするケースも多いといわれています。
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症例③社交的な場面での適切な振る舞いがわからない
社交的な場面での適切な振る舞いが分からない例としては、初対面の人と会ったときに、どんな話題を選ぶべきか分からず、会話がぎこちなくなったり不自然な振る舞いになったりする行動があげられます。
また、相手の気持ちを考慮した行動を取れないため、場の空気に合わない発言をしてしまうこともあるようです。初めての社交的な場面では、誰しもが戸惑うことがあるかと思います。ASDの症例としては、いつでも、常に適切な振る舞いがわからないケースが該当します。
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症例④些細な音が気になり集中できない
大人のASD(自閉スペクトラム症)の特徴として、音に対して敏感で、些細な物音が気になって集中できない例があげられます。例えば、オフィスでのキーボード音や話し声などが気になり、作業が手につかなくなったりイライラしたりすることがあります。
また、音以外にも視覚や触覚などが過敏な場合、静かな環境を求める傾向が強く、周囲と距離を置く人も多いようです。
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症例⑤話を言葉通りに受け取りすぎる
相手の言葉を文字通りに受け取る例としては、話し手の意図を読み取れず、誤解を招くといった行動があげられます。
例えば、冗談で「〇〇やっといて」といった言葉をそのまま真に受けてしまい、必要以上に行動してしまうことがあります。コミュニケーションにおける柔軟な理解が難しいため、社会的なルールや表現のニュアンスを理解できず会話で困難を感じるようです。
大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストに当てはまる人の特徴は?
ここでは、大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストに当てはまる人の特徴について解説します。
自分の考えを伝えられない
大人のASD(自閉スペクトラム症)の人は、感情表現が苦手な傾向にあります。話をする際に言いたいことを上手く言葉にできなかったり、話しすぎてしまったりするため、相手から批判を受けることもあるようです。
また、相手の気持ちを理解しにくいため、どのように反応すれば良いのか迷ってしまい、沈黙が続いてしまう場面も多いといわれています。
臨機応変に対応できない
急な予定変更や予想外の出来事に直面すると、強いストレスを感じてしまうことがあります。その場に適応できないため、混乱したり不安になったりして、適応するための柔軟性がなくなってしまいます。
また、予測通りに物事が進まないとパニックを起こす特性により、職場での来客応対などで思わぬ行動を取りがちです。
刺激などの感覚に偏りがある
特定の音や光に対して過剰に反応したり、逆に他の刺激に対して無関心だったりすることがあります。感覚が過敏な場合、電車の音がうるさく聞こえて乗れなかったり、映画館に行けなかったりするようです。
大人の女性のASD(自閉スペクトラム症)の場合、幼少期は症状が目立ちにくいという特徴もある
大人のASD(自閉スペクトラム症)の女性の場合、幼少期は症状が目立ちにくい傾向にあります。女性は、社会的なルールを学んだり、コミュニケーション能力を発達させたりすることが比較的早いため、発達障害の特徴が見過ごされやすく、大人になってから気づくようです。
大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストに当てはまったらすること
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症状がチェックリストに当てはまった場合、早期の対応が大切です。自分の特性を理解し、周囲と協力しながら適切な支援を受けることで生活の質を向上できます。また、次に紹介する対応策を実行することで、生活の困難を軽減できるかもしれないので早速見ていきましょう。
【困り事がある場合】身近な人に相談する
大人のASD(自閉スペクトラム症)の症状により困り事が生じている場合、まずは身近な人に相談するようにしましょう。
悩みを相手に打ち明けることで、協力を得られたりストレス軽減につながったりするといわれています。また、「自分には味方がいる」という安心材料も得られるため、一人で抱え込まず相談してみましょう。
【仕事で困難が生じている場合】環境調整をしてみる
業務についていけない、ミスが多くてプレッシャーとなっているなど仕事で困難を感じている場合、まずは環境調整を考えると良いです。
例えば、業務の進め方や働く時間帯、場所の変更をすることで、働きやすくなり作業効率が向上するかもしれません。また、音や光に敏感な場合は静かな場所での勤務を希望したり、リモートワークに切り替えたりといった柔軟な働き方の導入により、職場で感じるストレスを最小限にできます。
【不眠などの二次障害が辛い場合】精神科・心療内科へ行く
大人のASD(自閉スペクトラム症)によるストレスが増えると、不眠やうつ症状といった二次障害が現れることがあります。
二次障害が出た場合、自己解決しようとせず精神科や心療内科に相談すると良いです。精神科・心療内科では、二次障害の原因となる悩みの解消を目指せたり、症状に応じた治療を受けられたりするので、ASD(自閉スペクトラム症)の特性による困難の軽減につながるかもしれません。
下記記事では、大人のASDとの向き合い方について解説しています。併せてご覧ください。
大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストに関するQ&A
以下では、大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストに関するよくある質問にお答えします。
Q.大人と子供のASD(自閉スペクトラム症)ではチェックリストの内容が変わりますか?
大人と子供のASD(自閉スペクトラム症)では、チェックリストの内容に一部違いがあります。
例えば、子供の場合は言語発達など基本的な動作が評価の基準になることが多いです。一方、大人の場合は、言語や基本的な社会スキルは備わっていることが前提となるため、日常生活における適応能力や人間関係での困難、感覚の過敏性などが評価されます。
Q.大人の女性のASD(自閉スペクトラム症)でも同じチェックリストで診断していいですか?
大人の女性のASD(自閉スペクトラム症)でも、基本的な診断基準は男性と同じです。
但し、女性は男性に比べて、症状が表面化しにくい傾向にあるため、内面に表れている特性を考慮しながら診断を行うと良いです。
新宿うるおいこころのクリニックでは大人のASD(自閉スペクトラム)の二次障害でうつ症状に対応しています
新宿うるおいこころのクリニックでは、大人のASD(自閉スペクトラム症)による二次障害としてみられるうつ症状の治療に対応しています。
二次障害を放置すると、社会復帰が困難になったりASD(自閉スペクトラム症)の特性からくるストレスが増す恐れがあるため、早めに治療を受けることが推奨されています。
当院では、カウンセリングや認知行動療法、薬物療法を通じて、患者様が日常生活や仕事で直面する困難を乗り越えられるようサポートをいたしますので、症状でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
よくある質問
大人のASD(自閉症スペクトラム症)のチェックリストは確認するべきですか?
大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストは必ず確認するべきものではありませんが、自分の症状を理解するためにおすすめの手段といえます。
特に、大人になってから症状に気づいた場合、なんとなく自覚症状はあっても「多分性格だろう」「自分に限って発達障害ではない」と症状を見逃している人も多いといわれています。
チェックリストを通じて、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴を把握することで、病院へ受診する目安になるので、「もしかするとASD(自閉スペクトラム症)かも?」と不安な場合はチェックリストで確認をしてみましょう。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)のチェックリストに該当した場合、どうすればいいですか?
チェックリストの結果だけでは診断が確定しないため、病院へ受診し、正しい診断を受けた上でサポートを受けるようにしましょう。ただし、新宿うるおいこころのクリニックでは、ASD(自閉スペクトラム症)の確定診断はできません。ASD(自閉スペクトラム症)の確定診断を希望される場合は、確定診断ができる心療内科にご相談ください。
また、大人のASD(自閉スペクトラム症)のチェックリストに該当した場合でも、何らかの不都合が生じていなければそのままでも問題ありませんが、困り事がある場合は医師に相談してみましょう。
大人のASD(自閉スペクトラム症)をチェックリストで確認!当てはまる人の特徴や症例とは
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