大人に多くみられる適応障害は、年々増加傾向にあるようです。
背景には、所得減少や共働きといった生活環境の変化が示唆されており、現代人は気付かないうちにストレスを抱えているといわれています。
この記事では、大人の適応障害が増えた要因や症状、気付いたきっかけ、対策法について解説します。適応障害が疑われる際は早期治療が大切となるので、症状を知って早めに対策を行うようにしましょう。
このコラムの監修医師
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。
私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
適応障害は大人に多い精神疾患
適応障害は、仕事や家庭でのストレスが引き金になることが多く、大人に多い精神疾患といわれています。
大人になると、気を遣ったり責任を負ったりする瞬間が増え、些細な悩みがいつの間にか大きな負担となり、適応障害に発展することがあるようです。
中には、適応障害に気付いていないケースもあり、
「出勤時に倦怠感が強くなる」
「平日だけ抑うつ症状がみられる」
などの体調不良で悩まされ続けている人もいると考えられています。
適応障害の患者数は年々増えている
調査によると、2008年時点では適応障害の患者数は約4.1万人でしたが、2017年には約10.1万人とされ9年で約2倍の増加となっています。
一方、気分障害は約1.31倍、統合失調症は変動なしと他の精神疾患では大きな増加がみられていません。適応障害のみが顕著に増えていることから、社会的な変化によるストレスが表面化しつつあると考えられています。
参考
・日本における「適応障害」患者数 の増加―メンバーシップ型雇用からの考察―|池田 朝彦
適応障害の症状を訴える大人が増えた要因
適応障害に至るきっかけは、人間関係のストレスや生活環境の変化、仕事での悩みなど人によって様々です。以下では、適応障害が増えた要因として考えられる2つの事柄に ついて解説します。
適応障害の症状を訴える大人が増えた要因①所得の減少や共働きの増加などで働き方が変化
所得の減少や共働きの増加、永年雇用の終了などに伴い、1人ひとりの負担が増していることが患者数増加に影響を与えていると考えられています。
例えば、長時間労働や業務の過剰負担、家計圧迫によるプレッシャーなど、仕事への過度な責任感がストレスを引き起こしているようです。
適応障害の症状を訴える大人が増えた要因②職場での人間関係に困っている人の増加
リモートワーク推進による人間関係の希薄化、ハラスメント問題からくるストレスなど、人間関係における悩みが増えていると考えられています。
例えば、
「セクハラといわれるのが怖くて話しかけられない」
「コミュニケーションが上手く取れず相談できない」
などの悩みがあるようです。
人間関係で困りごとを抱えると、適応障害として不眠になったり活動意欲が低下したりするといわれています。
このような症状は大人の適応障害かも
大人が適応障害を発症した場合、日常生活や仕事で様々な心身の不調がみられることがあります。以下では、適応障害に当てはまる症状について解説します。
仕事に行っている時に涙が止まらない
「出勤中になぜか涙が止まらない」
「支度をしていると悲しくないのに涙が出る」
などは適応障害で多くみられる症状の一つといわれています。
涙はストレス緩和作用をもっており、過度のストレスを 感じていると無意識の自衛反応として涙を流すことがあるようです。
何か理由がある訳でもないのに涙が出る時は、自分でも気付かぬストレスに体が反応している可能性があり、心が限界に達しているサインかもしれません。
参考
情動性の涙のストレス緩和作用に関する研究(ストレス科学研究 2015, 30, 138-144)|高路 奈保、中野 友佳理、満居 愛実、上利 尚子、有安 絵理名、吉村 耕一
平日は気分が落ち込んでいるが、休日になると気分が復活する
「仕事がある平日は気分が落ち込んでいるが、休日は元気に過ごせる」という症状は、適応障害の特徴といわれています。
適応障害は、特定のストレスが原因で発症する精神疾患のため、ストレスに触れていなければ比較的安定した気分で過ごせる傾向にあります。
元気になる日があると「まだ大丈夫だ」と思い込みがちですが、症状が長引くとうつ病に発展するリスクを高めるようです。
特定のストレスに対して強い不安を感じ眠れてない
「特定のストレスが頭から離れず眠れない」
「体が休まった気がしない」
といった不眠症状も適応障害に当てはまるといわれています。
何らかのストレスを抱えている状態だと、心が常に緊張したり自律神経が乱れたりすると考えられており、適応障害でも同様の症状がみられるようです。
また、慢性的な睡眠不足がネガティブ思考を招くとされているので、ストレスがさらに強まる悪循環を引き起こすといわれています。
下記記事では、適応障害のセルフチェックについて解説しています。併せてご覧ください。
参考
睡眠がメンタルヘルスに与える影響に関する研究動向と今後の展望――交替制勤務者に着目して――
大人の適応障害になりやすい人はいる?
適応障害は誰でも発症し得る精神疾患ですが、完璧主義の人、心配性で気にしすぎる人、自己解決しようとする人はなりやすいといわれています。
特徴に当てはまる人は、小さな不安や失敗が大きなプレッシャーになる傾向から、自分を追い込みがちで知らない間にストレスを溜めてしまうようです。
適応障害の症状がみられる大人 は顔つきが変わる
適応障害になると、抑うつ気分や不眠症状が出るため、顔つきが変わるようです。
例えば、眠れなくなることで顔色が悪くなったり、抑うつ気分から元気のない顔つきになったりするといわれています。
顔つき以外にも、
「口数が減る」
「外見に気を遣わなくなる」
「全体的に元気がなくなる」
など、精神状態が外見や行動に現れる傾向にあります。
適応障害になりやすい人の特徴については下記記事でも詳しく解説しています。
参考
日本における「適応障害」患者数 の増加―メンバーシップ型雇用からの考察―|池田 朝彦
大人の適応障害に気付いたきっかけ
適応障害は、気付かないうちに症状が進行しているケースもあるため、些細な違和感に気付くことが大切といわれています。以下では、適応障害に気付いたきっかけ3選を解説します。
大人の適応障害に気付いたきっかけ①同僚に指摘された
適応障害に気付くきっかけの一つに、同僚からの指摘があげられます。
仕事中に感情的になったり、集中力が欠けたりする様子から、
「最近元気がない」
「何かおかしい」
と心配されることがあるようです。周りからの指摘によりストレスに気付き、自身を客観的に見直すきっかけになると考えらえています。
大人の適応障害に気付いたきっかけ②通勤中の体調不良がみられた
通勤中に体調不良が頻繁に起こることも、適応障害に気付くきっかけになるといわれています。
例えば、通勤途中に吐き気やめまいを感じたり、動悸がしたりして病院を受診したところ適応障害と診断されるケースがあるようです。
体調不良は、身体疾患だけでなく適応障害からくる場合もあるので、ストレスが関与している可能性を考え精神科・心療内科へ受診してみると良いです。
大人の適応障害に気付いたきっかけ③強い不安感から眠れなくなった
強い不安感が原因で眠れなくなることも、適応障害に気付くきっかけとなるようです。
日中のストレスが高まると、眠りにつく前に考えすぎたり体が興奮したりして、眠れなくなるといわれています。
そのため、
「眠れないことがつらい」
「不眠により日中の活動に支障が出ている」
などの不眠症状を訴えたところ、適応障害と診断され気付くケースもあるようです。
大人の適応障害の治し方
ここでは、大人の適応障害を治すための方法を紹介します。
大人の適応障害の治し方①負担のないよう生活習慣を見直す
適応障害を改善するうえで、生活習慣から生まれる負担を減らすと良いといわれています。
生活習慣が悪いと、自律神経やホルモンバランスの乱れを招くと考えられており、疲労が抜けない原因になったり免疫力が低下したりするようです。
生活習慣の見直しによりストレス軽減が期待できるので、バランスを考えた食事や早寝早起き、軽い運動などを取り入れてみましょう。
大人の適応障害の治し方②会社と相談して仕事量を減らす
過剰な仕事量や無理な納期設定は、適応障害の悪化を招くといわれています。
体がつらい際は、業務の見直しを行ったり柔軟なスケジュール調整を心がけたりして、負担を軽減させると良いです。また、休憩を挟んで脳を休ませると、体の緊張状態がほぐれてリフレッシュできると考えられています。
大人の適応障害の治し方③転職をして環境を変える
限界を感じた場合は、転職をすることで症状が改善されるかもしれません。
転職は大きな決断となるため、
「退職は逃げではないか」
「職場を変える勇気がない」
と悩む方もいるかもしれませんが、無理に頑張ろうとせず、心身に寄り添いながら新しい環境を検討することが大切です。
大人が適応障害になった時はどう対策する?
以下では、適応障害に対する具体的な対策法を紹介します。
大人が適応障害になった時の対策法①症状を引き起こすストレス源を明確にする
仕事のプレッシャーや人間関係、生活環境の変化など、ストレス源を特定することで原因から距離をおけるようになるため、根本改善が期待できます。
また、ストレスを感じやすい環境を知ることで、転職で役立ったり同じようなストレスを避けたりでき、再発予防になるといわれています。
大人が適応障害になった時の対策法②ストレス源から離れてゆっくり休む
適応障害を治すためには、ストレス源から離れてゆっくり休息をとることが大切です。
例えば、長期休暇でリフレッシュしたり趣味に時間を使ったりすると、心身の疲労が回復するといわれています。
また、回復後のメンタル維持に向けて、休息中にストレス解消法を見つけておくことも大切です。
大人が適応障害になった時の対策法③無理をしないで休職を検討
適応障害によって、日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、無理をせず休職を検討することが大切です。
休職によりプレッシャーから解放され、治療や回復に専念できるようになります。精神科・心療内科から診断書をもらうことで、休職手続きを進められるので、症状がつらい場合は早めに相談しましょう。
大人の適応障害の症状でお悩みの方は新宿うるおいこころのクリニックへご相談ください
今回は、大人の適応障害が増えた要因や症状、気付いたきっかけ、対策法について解説しました。
大人の適応障害は年々増えており、背景には所得の減少や共働きの増加、永年雇用の終了といった生活環境の変化が影響しているようです。
症状は、周りに指摘されたり強い不安が出たりした際に気付く人が多いようですが、早めに治療をすることで慢性化を防げるので、体調に違和感がある場合は精神科・心療内科に受診してみてください。
新宿うるおいこころのクリニックでも、適応障害の治療に対応しています。
経験豊富な専門医が、ライフスタイルや回復度合いに応じて治療提案をすることで、1人ひとりに合わせた症状改善を目指せます。
根本的な改善を目指すには、正しい治療と継続したサポートが大切です。
「なんとなく不安を感じている」
「仕事に行きたくない」
などのお悩みにも対応していますので、まずはお気軽にご相談ください。
<新宿うるおいこころのクリニックの適応障害の治療について>
よくある質問
大人の適応障害の診断基準はありますか?
大人の適応障害は、DSM-5の診断基準に基づき診断されます。
下記記事では、セルフチェック診断や詳しい症状をご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
大人の適応障害は治りますか?
大人の適応障害は、適切な治療やカウンセリングによって改善するケースが多いです。
ストレスから離れることも大切となるので、症状が治らない場合は休職を検討すると良いかもしれません。