「電車に乗っていると突然息苦しくなる」「体の不調はないのに動悸が治らない」このような症状がみられる場合、パニック障害にかかっているかもしれません。パニック障害は、突然動悸や呼吸困難、震えなどの発作がみられる精神疾患です。
この記事では、パニック障害の原因や症状があらわれるきっかけ、タイミングなどをご紹介します。また、有効とされる治し方についても解説しているので、参考にしてみてください。
目次
パニック障害とは
パニック障害は、突然発生する強い不安や恐怖により、パニック発作が起こる精神疾患です。発作が起こると、呼吸をしづらくなったりめまいが出たりします。症状は数分から数十分程度で収まりますが、突然起こる発作の恐怖から外に出るのが怖くなるケースもあります。
パニック障害は、複数の原因が重なることで発症するといわれています。放置すると私生活に支障をきたしたり、うつ病を併発したりする可能性があるので、心療内科や精神科で適切な治療を受けることが大切です。
パニック障害に多い症状
パニック障害では、突然起こる強い恐怖や不快感により、以下の症状が4つ以上起こるとされています。
- 動機
- 汗が出る
- 体の震え
- 息苦しさ
- 息の吸いにくさ
- 胸の痛み
- 吐き気
- めまい、倒れそうな感覚
- 寒気、ほてり
- 全身のしびれ
- 自分ではなくなる感覚
- 頭がおかしくなりそうな恐怖
- 死ぬかもしれないという恐怖
症状は長くても1時間以内に収まる傾向にありますが、「また発作が起こったらどうしよう」という恐怖から、回避行動をしたり不安感がつきまとったりするようになります。
こんな人はパニック障害になりやすい
以下の特徴に当てはまる人は、パニック障害になりやすいといわれています。
- 完璧主義者
- 周囲の目が気になる
- こだわりが強い
- 感受性が強く敏感
- うつ病になったことがある
周囲の目を気にしやすい人や、気付かないうちに自分を追い込んでしまいがちな人は、パニック障害になりやすいといわれています。
下記記事では、これらの性格がなりやすい理由について解説しています。当てはまると感じる方は、ぜひチェックしてみてください。
パニック障害の原因
パニック障害は、脳内神経伝達物質のバランスが乱れることで発症するといわれています。以下では、バランスの乱れにつながるとされる原因について解説します。
パニック障害の原因①トラウマ
事故や災害、虐待などのトラウマが原因で、脳内のストレス反応システムが過敏になり、パニック発作につながるといわれています。
似た症状としてPTSDがあげられますが、PTSDはトラウマがフラッシュバックすることで発症する、パニック障害は脳の異常により突然発作が起こる、という違いがあります。
パニック障害の原因②ストレス
慢性的なストレスが続くと、体内のストレスホルモンが過剰に分泌され、不安や恐怖に関連する脳機能に異常をきたすと考えられています。
原因になり得るストレスは、過労や対人関係のトラブル、引っ越しなどの環境変化、知人の死などさまざまです。
パニック障害の原因③喫煙
毎日喫煙をしている場合、パニック障害の発症率は増加するとされています。
タバコが与える影響としては、「体内に一酸化炭素が増えることで脳が危険信号を送るから」「ニコチンによる抗不安作用が出た後に不安症状を引き起こすから」「慢性的な呼吸不全が引き起こされるから」など複数の原因が考えられています。
参考
・Breslaw & Klein,Arch Gen Psychiatry1999;56:1141
パニック障害の原因④カフェイン
カフェインには、興奮状態にならないために大切な「アデノシン」の働きをストップさせる作用があるといわれています。
適量であれば問題ないですが、過剰に摂取するとパニック障害が誘発される可能性があるため、飲み過ぎには気を付けると良いでしょう。
パニック障害の原因⑤性別・年齢
女性は男性に比べて発症率が約2倍といわれています。年齢は、思春期から若年成人期にかけて発症することが多く、特に20代~30代の若い世代がかかりやすいようです。
この時期は、ライフスタイルの変化やホルモンの変動によるストレスが起こりやすく、パニック発作を引き起こす原因になるとされています。
参考
・塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く|日本精神神経学会
パニック障害の原因⑥遺伝
家族にパニック障害を持つ人がいる場合、同様の障害を発症するリスクは高まるとされています。詳しい原因は判明していませんが、パニック障害に関わる遺伝子は一つではなく、複数の遺伝子と環境要因が重なることで発症に至るようです。
パニック障害の原因⑦偏桃体の過活動
脳内で感情の処理をしている偏桃体は、ストレスや危険を感じると活性化し、恐怖感情を生み出します。偏桃体が過活動している状態では、些細な事柄に対しても必要以上の恐怖や不安感が出てしまうため、パニック発作につながるとされています。
パニック障害の原因⑧過労・睡眠不足
過労や睡眠不足が続くと、ストレスホルモンの分泌量が増え神経の興奮が起こります。その際、体内でストレスに対する防衛反応が起こるため、パニック障害につながるのです。
また、疲れによる乳酸の蓄積も原因と考えられているため、適度な運動や休息を取り入れることが大切です。
パニック障害になる原因をシーン別に紹介
パニック障害は、日常生活のさまざまな場面がきっかけとなり発症します。
以下では、「職場」「家庭」「外出」のシーン別に、きっかけとなりやすい場面を解説します。
職場編
- 職場における原因としては、過重労働や厳しい納期、上司や同僚との人間関係のトラブルなどがあげられます。
- 厳しい納期や業務量の増加による過度なプレッシャー
- 上司や同僚との対立やコミュニケーションの困難
- 大勢の前でのプレゼンテーションやスピーチへの恐怖
- 業務内容や役割が不明確なことによる不安
- 長時間労働や睡眠不足による心身の疲労とストレス
- 急な業務変更や突然のプロジェクトキャンセルなど、予期せぬ出来事によるストレス
家庭編
家庭環境における原因としては、家族間の対立や育児疲れ、介護負担によるストレスなどがあげられます。
- 配偶者や家族との頻繁な喧嘩
- 育児に伴う過度なプレッシャー
- 家計の困窮に伴う金銭的な不安
- 家族の介護による心身の負担
- 家事や家計管理などを一人で担うストレス
- 家族とのコミュニケーション不足からくる孤立感
- 幼少期に経験したDVなどによる慢性的なストレス
外出編
外出時は、混雑した場所や公共交通機関、大勢の人が集まるイベントなどで強い不安感を感じることがあります。
- 通勤・通学時の混雑した公共交通機関での圧迫感
- ショッピングモールの人混みや混雑
- 多くの人が集まる場所の圧倒感
- 渋滞時、車内に閉じ込められた感覚
- 空港のセキュリティ検査での長い列や厳しい検査からくるストレス
- 高層ビルのエレベーターが突然停止したときの閉塞感
- 初めて訪れる場所での不安感
パニック障害が出現する原因やタイミングは?
パニック障害は、予期せぬタイミングで発作が起こることが特徴ですが、閉鎖的な空間やリラックス時、発作の恐怖がよみがえったときに誘発されやすいといわれています。
以下では、それぞれの原因や起こるタイミングについて解説します。
閉鎖的な空間
閉鎖的な空間では、空気が薄い、圧迫感がある、自由に動けないといった感覚がストレスを増幅させ、パニック発作の引き金となることがあります。例えば、エレベーターや飛行機、混雑した公共交通機関など、逃げ場がないと感じる場所で強い不安感や恐怖感が生じます。
また、美容院でシャンプーをしているときやマッサージを受けているときでも、人によっては自由に動けないことがストレスにつながるので、落ち着けるサロンを選んだり事前に症状を伝えたりすることが大切です。
リラックス時
休暇中や入浴中、就寝前などのリラックスできる状況で、突然強い不安感に襲われることがあります。リラックス時にパニック発作が起こる原因は、身体がストレスから解放される際に、蓄積された緊張や不安が一気に放出されるからといわれています。
発作を防ぐためには、定期的なストレス発散を意識し、心身のバランスを保つことが大切です。
発作の恐怖がよみがえったとき
過去に経験したパニック発作の恐怖がよみがえることも、再び発作を引き起こす原因となります。特定の場所や状況に行くとき、「あの時の発作がまた起きてしまう」と恐怖感にかられてしまうのです。
症状が続くと、外に出られなくなったり眠れなくなったりなど、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。パニック障害からうつ病に発展する可能性も考えられるので、早めの対処が大切です。
パニック障害はどう治すの?
パニック障害を治す際は、生活習慣の改善と病院での治療の組み合わせにより、症状の緩和や再発防止を目指せます。
以下では、それぞれの具体的な治し方やポイントについてご紹介します。
生活習慣の改善
生活習慣の改善を行うことで、ストレスが軽減されたり体の緊張緩和につながったりします。規則正しい生活習慣を身に付け、十分な睡眠を確保しましょう。栄養バランスの取れた食事や適度な運動も対策として有効とされています。
また、ヨガや瞑想、深呼吸などのリラクゼーションを取り入れ、自分と向き合う時間を確保すると良いです。
病院での治し方
病院での治し方としては、薬物療法と心理療法が一般的に用いられます。
薬物療法では、神経伝達物質のバランスを整えるために抗うつ薬や抗不安薬が処方されます。心理療法では、不安を引き起こす考え方や行動パターンを見直し、恐怖に至るまでの思考を変えていくことで症状軽減が期待できます。
病院での治療法について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
心療内科新宿うるおいこころのクリニックでは、パニック障害の原因を診断したうえで治療します
新宿うるおいこころのクリニックでは、パニック障害の治療に対応しています。
治療では、詳しい検査を行ったうえで個々に合わせたアプローチが可能です。また、発作が出た際の対処法についても習得できるので、私生活への影響の軽減が期待できます。
ご予約は、公式HPやLINEから24時間承っておりますので、症状にお悩みの方はお早めにご相談ください。
よくある質問
パニック障害の原因に遺伝は関係ありますか
パニック障害の原因は、ストレスや不安などさまざまですが、そのうちの一つとして関係しているケースもあります。
パニック障害を一瞬で治せますか
パニック障害を一瞬で治すことは難しいですが、時間をかけて治すことで再発や症状緩和を目指せます。クリニックでは、パニック発作を収めるためのリラックス法なども習得できるため、症状にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。