目次
こんなお悩みありませんか?
統合失調症
チェックリスト
- テレビ番組や本が自分のことを話題にしている
- 考えていることが周りに漏れている気がする
- 自分は誰かに監視されている、見張られている
- 誰もいないはずなのに声が聞こえてくる
- 今まで取り組んでいたことや他人との関わりに興味がなくなった
- 会話が脱線したり途切れたりしてうまくいかない
- 周りの人が話していることは全て自分に対する悪口・嫌がらせだ
- 集中力や注意力がなくなり、仕事ができなくなった
このような症状にお悩みの場合は、統合失調症かもしれません。特に、日常生活に大きな影響がある場合は専門クリニックへの受診を強くおすすめします。
統合失調症とは
統合失調症とは、心や思考がまとまりにくくなる精神疾患です。妄想や幻覚に悩まされたり、感情や社交性が失われたりすることで、日常生活に支障が出るおそれがあります。
統合失調症は世界人口の約1%にみられる病気で、決して珍しくはありません。日本の患者数は、約80万人だと言われています。早めに治療するほど症状が悪化しにくいとされていますが、自分は病気であるという自覚を得られないケースが多いです。妄想や幻覚の症状は、本人にとって現実味のある出来事だからです。周囲の人が統合失調症の症状に気づくことが、早期発見・早期治療のために大切だと言えます。
統合失調症の症状
統合失調症の症状は、大きく分けると以下の4種類です。
- 陽性症状
- 陰性症状
- 解体症状
- 認知症状
陽性症状
正常な精神機能に歪みが生じることで、発症前にはなかった状態が現れるのが陽性症状です。代表的な陽性症状は、妄想と幻覚です。
妄想
妄想では、通常あり得ないことや間違ったことを現実だと確信してしまいます。周囲の人が違うと説得したり、明らかに矛盾する証拠があったりしても、患者は妄想だと受け入れることができません。妄想にはさまざまな種類があり、「スパイや集団ストーカーに狙われている」という普通起こらない内容もあれば、「パートナーに裏切られた」という現実的な内容もあります。
統合失調症の妄想は、さらに以下のように分けられます。
- 関係妄想:日常的な物事と自分を結びつける
(例:テレビ番組や本などが自分のことを話題にしている、車の色や時計の数字は自分へのサインだ) - 被害妄想:周囲の人が自分を陥れようとしていると思う
(例:パートナーが浮気している、近所の人が自分の邪魔をする) - 注察妄想:周囲に見張られていると思う
(例:家に盗聴器が仕掛けられている、外を歩くと通行人が監視してくる)
幻覚
幻覚は、実際にはないものを知覚する現象です。感じさせるものや人がいないはずなのに聞こえたり、見えたり、味わえたりします。統合失調症による幻覚の中で最も起こりやすいのは、幻聴です。他の人には聞こえない声が直接話しかけてくるケースもあれば、声同士が自分について話すケースもあります。幻聴に対する反応も、無視する・会話する・怒鳴り返すといったようにさまざまです。
陰性症状
感情や意欲、社会性など、発症前からあった機能が低下したり失われたりするのが陰性症状です。具体的には、以下のような症状が現れます。
- 感情表現の減少(感情鈍麻)
- 発語の乏しさ
- 快感消失
- 非社会性
感情表現の減少(感情鈍麻)
喜怒哀楽の表現が乏しくなり、表情や身振り手振りの動きも少なくなります。以前は感情をもって反応していた出来事に対しても、反応を示しません。また、他人の感情や表情への理解も苦手になります。
発語の乏しさ
口数が減ります。何か話しかけられても、短い単語でそっけない返答をします。
快感消失
以前よりも喜びを感じられなくなります。今まで心地よいと感じていた活動に対しても興味を失います。
非社会性
他人と関わることに興味がなくなります。人づきあいを避けたり、引きこもるようになったりします。
解体症状
解体症状では、思考や行動のまとまりがなくなります。
思考障害
考えがまとまらなくなり、支離滅裂なことを考えたり話したりします。話のつながりが見えないので、周囲の方は何を伝えたいのか理解するのが難しく感じるでしょう。
奇異な行動
通常ではみられない変わった行動をします。子どもじみた行為をしたり、外見が不適切・不衛生になったりなどの形で現れます。
認知症状
認知症状では、集中力や記憶力、整理能力など、さまざまな認知機能に問題が生じます。「仕事や勉強に集中できなくなった」「何かを覚えるのに時間がかかる」といった症状が当てはまります。
統合失調症の経過
統合失調症の経過には個人差がありますが、一般的には時間をかけて回復をしていきます。統合失調症の経過は、前兆期・急性期・消耗期(休息期)・回復期の4種類に分けることができます。
参考文献
統合失調症とは –
原因、症状、治療方法などの解説 | すまいるナビゲーター | 大塚製薬
4つの病期の特徴 |
統合失調症の経過 | 統合失調症を知る | 統合失調症ナビ
前兆期
前兆期では目立った症状はありませんが、以下のような軽い変化がみられます。
- 眠れなくなる
- 音に敏感になる
- 焦りや不安を感じる
- 気分が変わりやすくなる
急性期
急性期では、統合失調症特有の症状である妄想や幻覚が目立つようになります。変化を自覚できても病気を疑えずに、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなったり、周りの出来事に敏感になったりします。
具体的には、以下のような症状が現れます。
- 通常はあり得ないことを信じる(妄想)
- 他の人には見えないものや聞こえないものを感じる(幻覚)
- 眠れなくなる
- 不安や緊張を強く感じる
- 自分と他者との境界があいまいになる
- 感情が不安定になる
消耗期(休息期)
消耗期(休息期)では妄想などの目立った症状が落ち着いていく反面、陰性症状が中心になります。急性期に心身のエネルギーを消耗したことが原因だと考えられています。ちょっとした刺激で急性期に逆戻りしやすく、充分に休むことが重要です。
- 感情や意欲がなくなる
- 自信をもてなくなる
- 体がだるい、引きこもるようになる
- 眠気が強い
回復期
回復期では、心と体が少しずつ安定していきます。無気力も解消されていきますが、認知症状が目立つケースがあります。
- 意欲や関心、ゆとりが出てくる
- 集中力や記憶力などの認知機能が低下する
統合失調症の原因
統合失調症は、詳しい原因・メカニズムが分かっていません。遺伝的な要因や環境的な要因によって統合失調症になりやすい人が、ストレスや緊張をきっかけに発症すると考えられています。
さまざまな原因の中でも、遺伝の関与は強く示唆されています。通常、統合失調症の発症リスクは1%程度ですが、統合失調症の親や兄弟姉妹をもつ人では約10%、一卵性双生児の片方が統合失調症の場合だともう一方の双生児では約50%だと言われています。
統合失調症の治療法
統合失調症の治療は、基本的に薬物療法が中心です。抗精神病薬で妄想や幻覚といった症状を緩和したうえで、患者に合った技法や制度を利用しながら改善を目指します。クリニックでの専門的な治療のほか、生活習慣を整えたりリラックスしたりすることも良いと言われています。
統合失調症の具体的な治療法は以下の通りです。
- 薬物療法
- 心理社会的療法
薬物療法
統合失調症の薬物療法で使われるのは、抗精神病薬です。妄想や幻覚、まとまらない思考といった症状を軽減する効果があり、継続的な服用で再発の可能性を抑えられます。患者様の状態によっては、抗不安薬や睡眠薬、抗うつ薬などが使われることもあります。
薬物療法を続けることで症状は改善されていきますが、自己判断で量を減らしたり中止したりすると再発のリスクを高めてしまうので注意が必要です。
心理社会的療法
心理社会的療法は、普通の社会生活を営めるように練習する治療法です。患者の症状や生活に合わせて、さまざまな方法が用いられます。
統合失調症の陽性症状は薬物療法で改善できますが、陰性症状や認知症状は残ることがあります。そこで、心理社会的療法で病気との付き合い方や日常生活の送り方、人との関わり方を学び、社会で自立できるようサポートします。
心理社会的療法には、以下のような種類があります。
- 心理教育:病気や治療について学び、正しい対処法などを知る
- 作業療法:料理や運動などの軽作業を通じて、生活能力の向上を目指す
- 就労支援:相談やコーディネートを通して、就労をサポートする
- 認知行動療法:ものの受け取り方や考え方、行動を柔軟にする
- 生活技能訓練(SST):ロールプレイなどを通して、対人関係や社会生活のスキルを学ぶ
参考文献
心理社会的療法 | 統合失調症の治療方法 | これから診断・治療へと進む患者さん | 統合失調症ナビ
統合失調症 情報提供 ガイド –
国立精神・神経医療研究センター
統合失調症の主な抗精神病薬と副作用
統合失調症に使われる抗精神病薬は、定型抗精神病薬(第1世代薬)と非定型抗精神病薬(第2世代薬)に分けることができます。
抗精神病薬の主な副作用は以下の通りです。
- 錐体外路症状:手が震えたり、筋肉や関節が硬くなったりする
- プロラクチンの上昇:月経異常や乳汁分泌、性欲低下が起こる
- その他:のどの渇きや便秘、体重増加、起立性低血圧など
定型抗精神病薬(第1世代薬)
定型抗精神病薬(第1世代薬)は、従来使われてきた抗精神病薬です。幻覚や妄想などの陽性症状に対して効果があります。
非定型抗精神病薬に比べ、錐体外路症状や高プロラクチン血症の副作用が出やすい傾向にあります。
非定型抗精神病薬(第2世代薬)
非定型抗精神病薬(第2世代薬)は、比較的新しい抗精神病薬です。陽性症状に効果的で、定型抗精神病薬に比べると陰性症状に対する効果がより高いと言われています。
副作用として、手が震えたり筋肉や関節が硬くなったりする錐体外路症状が少ないです。一方、定型抗精神病薬よりも体重増加や糖代謝障害などの副作用は出やすい傾向にあります。
統合失調症の予後
統合失調症の予後は、薬物療法の継続が大きく関わります。
薬物療法を行わない場合、診断から1年以内に70~80%の患者が再発します。継続する場合、再発率は30%程度に下がるうえ、ほとんどの場合重症度が大きく軽減します。
また、早期治療に取り組んだケースや、陰性症状・認知症状が少ないケースでは、予後が良好になると言われています。
参考文献
統合失調症 – 統合失調症 – MSDマニュアル家庭版
統合失調症についてのよくある質問
- 統合失調症は再発する可能性がありますか?
- 統合失調症は、再発しやすい病気です。 症状が改善したからといって自己判断で治療薬の服用を止めると、再発を引き起こしやすいです。医師の指導のもと、治療を続けることが大切です。
参考文献
統合失調症|こころの情報サイト
- 統合失調症は治すことができますか?
- 統合失調症は治療によって完治を目指せる病気です。ただし再発しやすく、長期的な治療が必要となるケースも多いです。
早めの治療で重症化を防ぎやすいので、早期発見・早期治療することが大切です。
参考文献
Schizophrenia in Japanese | Translations
- 統合失調症を発症する人はどれくらいいますか?
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