ASD(自閉症スペクトラム)とは?特徴やアスペルガー症候群との違いは何?

ASD (自閉症スペクトラム)

ASD(自閉症スペクトラム)とは?特徴やアスペルガー症候群との違いは何?

ASD(自閉症スペクトラム)とは、コミュニケーションに困難が生じる発達障害の1つです。
先天性の発達障害ですが、大人になってから気付く方も多く、診断や治療を受けることで日常生活が過ごしやすくなります。

この記事では、「もしかしたら自分はASDなのかもしれない」「身近な人が診断されて症状を知りたい」といった方向けに、ASDの特徴や原因、症状、治療法についてご紹介します。
また、セルフチェックもご紹介しているので、心当たりのある方は参考にしてみてください。

ASD(自閉症スペクトラム)とは、発達障害のひとつ

ASD(自閉症スペクトラム)とは、相手の感情を読み取るのが苦手、こだわりが強い、空気を読めない、などの特性を持った発達障害のことです。
大人になってからASDの傾向に気付くケースも多く、社会生活でより高度なコミュニケーションを求められたり、恋愛や結婚などの人間関係を築いたりする上で、自分と周囲のズレが露呈し発覚したという方もいます。

ASD(自閉症スペクトラム)の原因

ASDは後天的に生じるもではなく、生まれつきの脳の機能異常であり、病気ではなく個性という考えが推進されています。
ここでは、生まれつき発症する原因として考えられる「遺伝要因」「環境要因」について解説します。

遺伝要因

ASDの原因は完全には解明されていませんが、ASDの家族内発生率は高く、一卵性双生児の一方がASDである場合、もう一方もASDである確率も高くなるといわれています。
両親にASD患者がいない場合でも、ASDを持つ子どもが生まれることはあり、遺伝要因のみならず環境要因も影響を与えていると考えられています。

環境要因

ASDの発症に影響する環境要因としては、妊娠中や出産時の合併症、早産や低出生体重、母親の高齢出産などがあげられます。
また、妊娠中のタバコや食生活なども影響するという研究データも存在します。

ASD(自閉症スペクトラム)の発生割合

国立大学法人弘前大学の調査によると、5歳児におけるASDの有病率は3.22%と報告されています。
この調査により、これまで考えられていた有病率より数値が高いことが判明した他、ADHD(注意欠如多動症)やID(知的発達症)などの発達障害を同時に発症しているケースも88.5%と高い数値であることを明らかにしました。

参考
・[調査]我が国の自閉スペクトラム症の有病率は3.22%|健康保険福祉研究情報システム

ASD(自閉症スペクトラム)とアスペルガー症候群の違い

ASDは、言葉の遅れがある「アスペルガー症候群」、興味に偏りがある「自閉症」、強いこだわりがある「高機能自閉症」の総称のことです。
以前はそれぞれ別の発達障害として捉えられていましたが、それぞれの特性を少しずつ持った「グレーゾーン」が多くいるため、「ASD」としてまとめるようになったのです。

そのため、ASDとアスペルガー症候群の違いは、特性をひとつにまとめたものをASD、細かく分けたものをアスペルガー症候群と覚えておくようにしましょう。

大人のASD(自閉症スペクトラム)の症状

ここでは、ASDの症状を軽度と重度に分けてご紹介します。

軽度の場合

軽度の場合、相手のいっていることの理解は問題なく行えますが、思ったことを口に出してしまったり、他人への関心が少なかったり、こだわりを持っていたりなどの症状がみられます。
周囲には変わっている人だなと思われることが多いため、なぜかコミュニケーションがうまくいかない、友達ができないなど、対人面で生きづらさを感じていることも多いです。

重度の場合

重度の場合、会話が成り立たなかったり、呼びかけに反応しなかったり、目を合わせられなかったりなどの症状がみられます。
重度のASDは、幼少期の言語の遅れや関心のなさから発覚するケースが多く、社会的なコミュニケーションや行動に大きな困難を抱えています。

大人のASD(自閉症スペクトラム)の3つの特徴

ASDには、「社会性・対人関係面」「コミュニケーション面」「行動面」において代表的な3つの特徴があります。
ここでは、それぞれの特徴についてご紹介します。

社会性と対人関係の障害

社会性・対人関係面では、他人の感情や考えを理解することが難しい傾向にあるため、コミュニケーションや会話において支障が生じることがあります。
例えば、空気を読まずに発言してしまい場を乱す、相手の言動を文字通り解釈してしまう、起こっている理由が分からない、などの特徴があげられます。

また、目を見て話したり、自分の感情を表現したりすることも苦手なため、友人や恋人作りや職場での人間関係を築く上で苦労する方が多いです。

コミュニケーションや言葉の発達の遅れ

コミュニケーション面では、言葉の理解や発話に遅れがあることがあります。
例えば、比喩や皮肉などの言葉遊びを理解できない、話題の転換ができない、話す内容の偏り、話し方が単調などの特徴があります。

また、話し手や聞き手の立場に応じて話し方を変えることが困難だったり、思ったことを口にしたりすることから、日常会話やビジネスコミュニケーションに困難を感じる方が多いです。

行動や興味の偏り

行動面では、こだわり強かったり、特定の物事へ強い関心を持ったり、同じ行動を繰り返したりなどの特徴がみられます。
そのほかにも、変化や新しいことに対して敏感な面や、細かい音や光などに対して過敏に反応する面、などがあり、自分の興味以外の物事に対して無関心な傾向にあります。
強いこだわりを抱えていることから、ASDの方は生活や仕事に柔軟性や適応力を持つことに苦労することが多いです。

大人のASD(自閉症スペクトラム)で起こりうる二次障害

ASDの症状が原因となり、精神面や行動面でさまざまな二次障害が起こる可能性があります。ここでは、それぞれで起こりうる二次障害についてご紹介します。

精神面での症状

大人のASDの場合、子どもの頃からのストレスや適応の問題が蓄積し、適応障害、不安障害、強迫性障害、依存症、引きこもりなどの二次障害を引き起こす可能性があります。
二次障害は、ASDの特性や社会的要因によって引き起こされるものであるため、適切な治療や支援を行うことで改善が期待できます。

適応障害

適応障害は、環境からくるストレスによって気分の低下や不安感、うつ気分などを引き起こす精神障害です。
ASDの場合、コミュニケーションが苦手や場の空気を読まない、思ったことを発言するなどの特性から、学校や職場などの環境に適応することが困難になり、適応障害につながる可能性があります。

不安障害

不安障害とは、強い不安感や恐怖により、パニック発作や呼吸困難などの症状が現れる精神障害です。
ASDの特性である、予測できないことや変化に対して敏感な一面により、物事に対して過度な不安や恐怖を引き起こすことがあります。

強迫性障害

強迫性障害とは、不合理な思考やイメージに頭が支配されてしまい、その考えを取り除くために反復的な行動を行い続ける精神障害です。
ASDの特性としてあげられるルーティンや秩序を好む傾向が過剰になると、強迫性障害に発展する可能性があります。

依存症

依存症は、薬物やアルコール、ギャンブルなどの物質や行動に対して強い欲求や執着を持ち、やめることができなくなる状態のことです。
ASDの人は、自分の興味や関心に没頭することがあります。興味の対象が健康や社会生活に悪影響を及ぼすようなものである場合、依存症に陥る危険性があります。

引きこもり

引きこもりは、何らかの原因により家庭や学校や職場から離れ、自分の部屋や家から出られなくなる状態のことをいいます。
ASDのコミュニケーションが苦手な傾向により、人間関係にストレスを感じたり孤立したりしてしまい、引きこもりにつながってしまうことがあります。

行動面での症状

行動面の症状としては、分の感情をコントロールすることが難しい特性により、暴力的な行動や自傷行為や自殺企図などの危険な行動を引き起こすことがあります。
また、感覚刺激に対して過敏または鈍感だったりすることがあるため、音や光や触覚などに対して過剰に反応したり無反応だったりすることも考えられます。

大人のASD(自閉症スペクトラム)チェックリスト

下記に当てはまる場合、ASDの可能性があります。もしかして自分はASDかも?と思っている方は、参考にしてみてください。

  • 人の気持ちや考えが想像できない
  • 雑談がうまくいかない
  • 冗談が分からない
  • 空気を読めず、変な発言をしてしまう
  • 小説やドラマの登場人物の気持ちが分からない
  • 趣味や興味のあることには没頭する
  • 一方的に話してしまうことが多い
  • 音やにおいに敏感でマルチタスクができない
  • こだわりが強い
  • 細かい作業に苦手意識がある

※このチェックリストは、一般的な特性をまとめたものであり、ASDを断定するものではありません。症状に不安がある方や正しい診断を受けたい方は、医療機関へ相談するようにしましょう。

大人のASD(自閉症スペクトラム)の診断基準

ASDの診断基準は、DSM-5という精神障害の分類と診断のためのマニュアルに基づいています。DSM-5では、以下の3要素を満たしていることが必要です。

  • 社会的コミュニケーションや相互作用に関する持続的な欠陥
  • 言語に関するコミュニケーション障害
  • 年齢相応の発達に関する障害

また、以下の5つ中2つ以上の要素に当てはまる必要もあります。

  • 反復的な行動や単調な話し方
  • 強いこだわりや執着
  • 言語・非言語における儀式的な行動パターン
  • 興味関心の事柄が限定的
  • 感覚が通常より敏感または鈍感、周囲環境への音や匂いに敏感

さらに、以下の条件も満たしていることにより、ASDの診断がくだされます。

  • 症状は早期発達期に現れる
  • 症状は日常生活や社会的機能に重大な障害を引き起こしている

大人のASDの診断は、専門家による面接や検査を行うことで行われます。また、自分で気付いていない症状や過去の発達歴などを把握するために、家族や友人などの協力も必要です。

大人のASD(自閉症スペクトラム)の治療法

ASDは現在の医療では完治することができません。そのため、社会生活に適応していくことを目的とした治療が行われていきます。
ここでは、代表的な治療法である心理社会療法についてご紹介します。

薬物療法

ASDに対して有効とされる薬はないとされている一方、各症状の緩和を目的として薬物療法が用いられることがあります。よく副作用が怖いために薬物療法をできる限り取り入れたくないと考える患者様がいらっしゃいますが、専門医のもと正しく使用すれば、内服薬も怖いものではありません。指定された用法を守って正しく治療を続けることが大切です。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法とは「物事の捉え方が心理的に大きく影響する」という考え方で、ストレスなどで生じた偏りのある考えや行動を崩し、自由に考えたり行動ができたりするように働きかける心理療法です。ASD以外の精神病治療にも用いられることがあります。

心理社会的療法

心理社会的療法とは、ASDの人が社会生活に適応するために必要なスキルやコミュニケーション能力を向上させることを目的とした治療法です。
心理社会的療法には、ストレス・不安管理を学ぶ「個人療法」、他社との協調性を学ぶ「グループ療法」、家族間の問題に向けた「家族療法」などがあります。
治療では、自分の特性を理解することができ、自己コントロール法や生活満足度を高める効果を得られます。

大人のASD(自閉症スペクトラム)にお悩みの方はうるおいクリニックへ

うるおいクリニックでは、ASDの治療を行なっています。
コミュニケーションに不安を感じる、職場に馴染めない、家族間での接し方が分からないなど、どんなお悩みにも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

よくある質問

軽度の自閉症と診断を受けました。今後どうしていけばいいですか?

軽度の自閉症と診断された場合、まずは自分の特性を把握することが大切です。
心理社会的療法や薬物療法などの導入は、医師と相談しながら検討していくと良いでしょう。

もしかしたら自閉症かもしれません。必ず専門医に受診するべきですか?

自閉症だと感じる場合でも、必ず専門医に受診する必要はありません。
ただし、「職場に馴染めない」「人間関係に困難がある」などの支障がある場合、適切な治療により改善が見込まれるので、できるだけ早く専門医に受診することをお勧めします。

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