TMS治療と修正型電気けいれん療法は、どちらも脳へ刺激を与える治療法ですが、その仕組みにおいて大きな違いがあります。
特徴や対象となる人、副作用なども異なり、治療を決める際は自分の症状に合ったものを選ぶことが大切となるので、治療を検討する際は事前に違いを知っておくと良いです。
この記事では、TMS治療と修正型電気けいれん療法の違いを特徴やメリットから比較しています。それぞれの副作用もまとめているのでぜひチェックしてみてください。
このコラムの監修医師

新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
修正型電気けいれん療法(m-ECT)とは?
修正型電気けいれん療法(m-ECT)は、脳に電流を流し、一時的なけいれん発作を引き起こすことによって、精神的な障害を治していく治療法です。治療は、全身麻酔によって行われ、治療直後は混乱する患者も一定数いるといわれています。
また、治療の効果がみられるペースは人によって異なり、少しずつ回復する人や効果が出ない人など個人差が大きいようです。
修正型電気けいれん療法の有効性
修正型電気けいれん療法は、1938年からある長い歴史を持つ治療法です。
主に、うつ病・躁病・重症の統合失調症が対象となり、安全性が高いことから精神科治療の1つとして扱われています。
また、高齢者のうつ病患者や身体疾患を併発している人も受けられることが特徴ですが、副作用として頭痛や吐き気、認知機能障害といった症状が出る可能性もあるようです。
参考
・国立精神・神経センター病院におけるECT. 精神神経学雑誌|野田隆政
TMS治療とは
TMS治療は、磁気刺激を用いて脳の特定部位に刺激を与える治療法です。TMS治療では、脳内の神経回路のみに磁気刺激を送るため、患者への負担が少ないといわれています。
また、治療中は痛みや副作用はほとんどなく、通院での治療が可能という特徴をもっています。仕事に行きながらうつ病の根本改善を目指せるので、日常生活への影響を最小限に抑えつつ治療に専念できるでしょう。
TMS治療の有効性
TMS治療は、うつ病患者に対して有効性が証明されており、日本では2019年6月に健康保険が適応になっており、有効性と安全性が認められています。
但し、TMS治療の保険適応には2か月の入院が必要であったりと適応条件が厳しく、保険適応でTMS治療を実施している医療機関はほとんどありません。
TMS治療が導入されたことで、薬物療法では効果がみられない患者や他の治療法では副作用が強い患者にとっての新たな治療の選択肢となりました。また、治療後の再発予防にも一定の効果が期待されているため、長期的な症状改善が叶うといわれています。
TMS治療と修正型電気けいれん療法の違い
TMS治療と修正型電気けいれん療法は、どちらも脳に対して刺激を与える治療法ですが、使用される技術や目的が異なります。例えば、TMS治療は、磁気刺激を用いてピンポイントに刺激を送ります。一方、修正型電気けいれん療法は、麻酔をした上で脳内で一時的にけいれんを引き起こし、脳の神経回路を再活性化していく治療法です。
TMS治療と修正型電気けいれん療法は、治療法も大きく異なるため、以下で詳しい違いをみていきましょう。
TMS治療は脳に磁気刺激を与えて、正常な状態に戻す治療法
TMS治療は、磁気を用いて脳に直接刺激を送る治療法です。脳が正常に働いていない箇所にピンポイントで磁気刺激を送れるため、うつ病の根本改善が叶うといわれています。
治療時は、患者が意識を保ちながら受けることが特徴で、脳の動きを確認しながら刺激を調整していきます。治療期間は、数週間にわたり行われることが一般的で、効果が現れるまでに一定の時間がかかる傾向にあります。
修正型電気けいれん療法は脳に電気刺激を与えて、てんかん発作時と同じ状態にする治療法
修正型電気けいれん療法は、脳に電流を流して人工的にけいれんを引き起こす治療法です。電気刺激によって、てんかん発作と同じ状態にすることが特徴で、脳内の神経回路にけいれんを起こして再活性化し、脳の機能を改善していきます。
修正型電気けいれん療法の場合、治療時には全身麻酔が用いられます。副作用としては記憶障害があげられますが、症状は個人差があり、中には長く続く人もいるようです。
参考
・電気けいれん療法(ECT)推奨事項 改訂版
・神奈川県立精神医療センター|修正型通電療法(m-ECT)
TMS治療と修正型電気けいれん療法のメリットからみる違い
TMS治療と修正型電気けいれん療法では、それぞれ異なるメリットを得られます。
例えば、TMS治療の最大のメリットは、副作用がほとんどなく安全であることです。患者は治療中も意識を保てる上に痛みがほとんどないため、通院治療で行えます。
一方、修正型電気けいれん療法は、うつ病のほかにも統合失調症やパーキンソン病、強迫性障害なども治療の対象になることがメリットとしてあげられます。
TMS治療のメリット
TMS治療のメリットとしては、患者への負担が少ないこと、治療後すぐに日常生活に戻れること、麻酔が必要ないこと、通院で治療が行えることなどがあげられます。
また、副作用もほとんどなく治療中も痛みが少ないため、精神的な負担が軽減できるといわれています。うつ病の治療を受けている人の中には、薬物療法では副作用の影響がつらいと治療を中断する人も一定数いますが、TMS治療であれば安心して治療を続けられることもメリットです。
修正型電気けいれん療法のメリット
修正型電気けいれん療法のメリットは、うつ病以外にも、様々な精神疾患に対して有効なことです。また、ピンポイントの刺激により脳を正常に戻すのではなく、脳全体にけいれんを起こすことで症状改善を目指すため、重度の精神障害が治るといわれています。
そのほかに、安全な治療を提供するための判断基準は設定されているものの、死亡などのリスクがないと考えられていることも、メリットの一つとしてあげられます。
TMS治療と修正型電気けいれん療法の副作用の違い
TMS治療と修正型電気けいれん療法は、副作用においてそこまで大きな違いはありません。例えば、どちらの治療においても、倦怠感や頭痛などの副作用が起こることがあります。
しかしながら、修正型電気けいれん療法では、一時的な記憶障害が副作用としてみられるケースもあるので、事前に起こり得る副作用について知っておくことが大切です。
TMS治療は副作用がほとんどない
TMS治療は、麻酔や切開を必要としないため、安全で副作用がほとんどない治療法といわれています。
また、TMSの治療中には頭痛や頭部の不快感を覚える人もいますが、症状は数時間以内に治まる傾向にあり、違和感程度で済んだり何も感じなかったりする人も多いようです。
参考
・平成 29 年度 新医療機器使用要件等基準策定事業 (反復経頭蓋磁気刺激装置)事業報告書
修正型電気けいれん療法は副作用として記憶障害が起こる
修正型電気けいれん療法の治療後は、一時的に記憶があいまいになることがあります。記憶障害に伴い、精神的な混乱や頭痛、筋肉痛、吐き気などが起こるケースもあるようです。
修正型電気けいれん療法で起こると考えられている副作用は、以下のとおりです。
- 頭痛、筋肉痛
- 吐き気
- 記憶障害
参考
・国立精神・神経センター病院におけるECT. 精神神経学雑誌|野田隆政
TMS治療と修正型電気けいれん療法には対象となる人にも違いがある
TMS治療は、うつ病やうつ症状を抱えている人のみが対象となる一方で、修正型電気けいれん療法は重度のうつ病や双極性障害を抱えている人が主な対象となります。
以下では、TMS治療と修正型電気けいれん療法の対象となる人をそれぞれ解説するので、チェックしてみてください。
TMS治療の対象となる人
TMS治療の対象となる人は、以下のとおりです。
- 中等症状以上のうつ病・うつ症状で悩んでいる人
- 薬物療法で十分な効果が得られなかった人
TMS治療は、うつ病・うつ症状で悩んでいる人が対象となります。中等症状以上であれば受けられるため、幅広い人が対象となりますが、身体的な問題により抑うつ症状が出ている人や自殺リスクがある人、拒食などの症状により命の危険があると判断された人は対象外です。
参考
・平成 29 年度 新医療機器使用要件等基準策定事業 (反復経頭蓋磁気刺激装置)事業報告書
修正型電気けいれん療法の対象となる人
修正型電気けいれん療法の対象となる人は、以下のとおりです。
- 症状により拒食などがみられていることで、体が衰弱している人
- 自殺リスクがある人
- 薬物療法では効果がみられない人
- 高齢者や妊婦など、他の治療法よりも修正型電気けいれん療法の方が安全性が確保できる人
- 重度の症状がみられる人
- 以前おこなった修正型電気けいれん療法で非常に良い効果が見られた人
修正型電気けいれん療法は、TMS治療に比べて重度の症状で悩んでいる人向けの治療法です。そのため、軽度〜中度のうつ病に悩まされている場合は、軽度であれば環境調整や薬物療法、中度であればTMS治療が良いと考えられています。
負担を抑えてうつ病を治したい場合はTMS治療がおすすめ
治療における身体的負担を抑えてうつ病を治したい場合、TMS治療がおすすめです。うつ病の治療は長期化することもありますが、負担の少ないTMS治療であれば、精神的・身体的な負担を軽減できるため治療を続けやすいようです。
また、TMS治療は、入院の必要がない上に1回の治療時間も比較的短く、治療後にすぐ日常生活に戻れます。痛みもほとんどないため、毎回の治療を安心して受けられるでしょう。
TMS治療は精神科・心療内科へ相談
TMS治療を受けたい場合は、TMS治療を実施している精神科・心療内科を受診しましょう。
TMS治療を実施している精神科・心療内科では、TMS治療が適しているか総合的に判断してもらえます。
また、
「うつ病ではなく統合失調症だった」
「症状が軽度でTMS治療の必要がない」
など、TMS治療が適していない場合であっても症状に合わせた治療提案を受けられるでしょう。
新宿うるおいこころのクリニックではTMS治療が受けられます
新宿うるおいこころのクリニックでは、TMS治療によるうつ病・うつ症状の改善を目指せます。治療では、患者様のうつ症状に合わせて治療提案をしていくことで、根本的な原因改善や再発防止を目指すことができますまた、効果を最大限に発揮するために、薬物療法や認知行動療法の併用も行っています。
うつ病は、適切な治療により改善・抑制ができる精神疾患です。早めに治療を受けることで症状の早期改善を目指せるため、
「気分の落ち込みが続いている」
「何に対してもやる気が出ない」
と不調を感じている方はどうぞお気軽にご相談ください。
<新宿うるおいこころのクリニックにおけるTMS病治療の詳細はこちら>
よくある質問
TMS治療と修正型けいれん療法は注意点に違いはありますか?
TMS治療と修正型電気けいれん療法は、注意点において違いがあります。TMS治療の場合、脳の動きをみながら治療を進めるため、治療中に寝る行為は推奨されていません。一方、修正型けいれん療法は、全身麻酔で治療進めていくため、治療前は体調を整えておくことが大切です。
TMS治療と修正型けいれん療法の違いはなんですか?
TMS治療と修正型電気けいれん療法の違いは、脳に与える刺激の種類です。TMS治療では、磁気刺激を用いて脳の特定部位に刺激を与えます。一方、修正型けいれん療法では、電気刺激によって脳全体に刺激を与えて症状改善を目指します。