発達障害の1つであるADHDやASD(自閉スペクトラム症)。
それぞれ異なる特徴や症状を持っていますが、イマイチ違いが分からず混同している方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)について特徴や症状例、診断基準から解説します。違いを知っておくことで特性に対する理解を深められるので、記事を通してそれぞれの違いをチェックしてみましょう。
このコラムの監修医師
新宿うるおいこころのクリニック 院長
大垣 宣敬
患者様が抱えているものは1人1人異なっており、症状の種類や程度も千差万別です。 私たちは患者様からお話を聞くことで悩みを共有し、ご希望や思いを丁寧に汲み取りながら、患者様中心の医療を共に実践していけるよう心がけています。
目次
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の違いとは
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症)は、発達障害という大きな括りでは一緒ですが、症状や特徴は異なります。
例えば、ADHDは主に注意力の欠如や衝動的な行動、多動性が目立つ症状が特徴で、社会的な状況において困難を感じることが多いです。一方、ASD(自閉スペクトラム症)はコミュニケーション難や強いこだわりが特徴といわれています。
両者には、ミスの多さや計画性の無さといった共通点もありますが、症状の出方や影響が異なるため、それぞれの障害への正しい理解が大切となります。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)はどちらも発達障害に分類される
先ほども説明したように、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)はどちらも発達障害に分類されます。
発達障害とは、脳機能の発達に関する先天的な障害のことで、ADHD・ASD(自閉スペクトラム症)のほかに学習障害、知的障害、協調運動症、チック症、吃音が発達障害に含まれます。
発達障害の種類ごとに特性が存在しますが、人によって現れ方や度合いに差があることが特徴です。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の特徴の違い
では実際に、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の特徴についてみていきましょう。
ADHDは多動や不注意がみられる
ADHDは、多動性と不注意が特徴としてみられます。多動性とは、落ち着いて座っていられない状態のことを指し、常に動き回る、突発的に行動するなどの動作がみられるようです。不注意とは、生活において注意を払うことが難しい状態を指し、気が散りやすく集中が続かない、細かいミスを繰り返す、指示に従えないといった形で現れる傾向にあります。
ASD(自閉スペクトラム症)はコミュニケーション難がみられる
ASD(自閉スペクトラム症)の代表的な特徴は、対人関係におけるコミュニケーションの難しさです。例えば、相手の感情の読み取りが難しかったり、会話を広げられなかったりするため、相手との関係構築が苦手といわれています。
また、興味関心のある出来事に過度に集中したり、同じ行動を繰り返したりする傾向にあるため、自分の世界に閉じこもりがちなようです。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の症状例からみる違い
ここでは、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の症状から違いを解説します。よくみられる症状例をご紹介しているので、自身の特徴がどちらに当てはまるかチェックしてみましょう。
ADHDの代表的な症状
ADHDの代表的な症状は以下のとおりです。
- 集中力が続かない
- すぐに上の空になってしまう
- 1つの作業を最後まで終わらせられない
- 忘れ物、なくし物が多い
【じっとできず動きたくなる(多動性)】
- 立ち上がってはいけない場面で歩き回る(授業中、会議中など)
- 落ち着かず手足を動かす
- しゃべり続けてしまう
【考える前に行動する(衝動性)】
- 相手の話を遮ってしゃべりだす
- 順番待ちや我慢が苦手
- 思い立ったら考えるより先に行動してしまう
ADHDの症状例①「常に落ち着けず作業ミスが多い」
じっとできず常に動き回る傾向にあるため、集中が続かずミスを繰り返すことが多いといわれています。
例えば、学校のテストや職場での作業で細かいミスをしてしまったり、途中で集中力が途切れて別の事を考え出したりします。また、ミスの連発によって周囲の評価が下がることもあるようです。
ADHDの症状例②「計画を立てられず遅刻してしまう」
計画立案や時間管理が苦手な特性から、時間通りに物事を進めることができず遅刻しがちなようです。
例えば、約束の時間に間に合わなかったり、準備が不十分なまま出発したりすることが頻繁にあります。時間通りに準備をしても突然他のことに気を取られるため、予定を守れないといわれています。
ADHDの症状例③「衝動的で余計なことを口にしてしまう」
思いついたことをすぐに口に出してしまう衝動さも、特徴の一つとしてあげられます。
会話の中で余計なことをいったり、相手の話を遮ってしまったりすることがあるため、対人関係においてトラブルを引き起こしやすいといわれています。
また、衝動さはコミュニケーション以外にもみられ、思い付きのまま突然仕事を辞める、衝動買いをする、計画なしに旅行を決めるなどの行動面にも現れるようです。
ASDの代表的な症状
ASDは、「対人関係への苦手意識」「コミュニケーション難」「興味関心の狭さ、偏り」がみられることが特徴です。代表的な症状は以下のとおりです。
- 想像が苦手で目で得た情報の方が理解しやすい
- 冗談が通じず言葉通りに受け取ってしまう
- 相手の気持ちに気が付きにくい
- 総合的に考えることが苦手
- 臨機応変な対応が苦手
- 漠然とした空間、時間の把握が苦手
- 金銭感覚がおおざっぱ又は異常に厳しい
- 感情の調整が苦手
- 将来に対するイメージが苦手
- 決断が苦手
- マルチタスクが苦手
ASD(自閉スペクトラム症)の症状例①「相手の考えていることが分からない」
相手の気持ちや考えを理解できない特性から、相手の気持ちを無視する発言をしたり、誤解を招いたりする場面が多いようです。表情やボディランゲージによる感情の読み取りも苦手な傾向にあるため、会話の中で相手の意図に対する正しい理解が難しいといわれています。
ASD(自閉スペクトラム症)の症状例②「強いこだわりがあり自分の世界を崩されたくない」
日常生活の中で強いこだわりを持つことが多いため、物事が計画通りに進まないと強い不安を感じたり、マイルールが乱されると大きなストレスを起こしたりするようです。想定外の出来事にも敏感で、対応できないとパニックを起こすといわれています。
ASD(自閉スペクトラム症)の症状例③「感覚過敏があり職場の雑音に耐えられない」
音や光に対して非常に敏感で、普通の人では気にならない音や刺激に過剰に反応する傾向にあるといわれています。
例えば、職場の雑音が耐えられないほど強く聞こえてしまう場合、集中力の持続が難しく強いストレスを感じるようです。感覚過敏は、触覚刺激としても起こる可能性があるため、衣服の素材に対して強いこだわりを持っている人もいます。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の症状例からみる違いまとめ
それぞれの違いは、以下のようにまとめられます。
- 注意力と集中力の違い
ADHDでは集中力が続かず、作業ミスを繰り返すことが多い。ASDでは集中力はあるが特定の物事にのみ発揮され、広範な関心が苦手。 - 衝動性の違い
ADHDでは衝動的に行動し、余計なことを口にしたり計画なしに行動を起こす傾向がある。ASDの場合は、衝動的な行動よりも強いこだわりやマイルールに固執する。 - 対人関係の苦手さ
ADHDは、対人関係において多動や衝動が原因のトラブルを引き起こしやすい。ASDでは相手の気持ちや意図を理解するのが難しく、コミュニケーションで誤解を招くことが多い。 - 時間と計画の管理
ADHDでは計画性に欠け、時間管理が苦手で遅刻しがち。ASDでは計画通りに物事が進まないと強い不安を感じ、マイルールを崩されるとストレスを感じる。 - 感覚過敏の違い
ADHDでは注意欠如から集中力が切れることがある。ASDでは音や光に対して非常に敏感で、感覚過敏から集中力が途切れることがある。 - 柔軟性の違い
ADHDでは突発的な行動や判断をしてしまいがち。ASDでは柔軟性に欠け、予測外の出来事に強いストレスを感じたりパニックを起こしたりすることがある。
参考
発達障害の理解~メンタルヘルスに配慮すべき人への支援~|厚生労働省
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の診断基準の違い
ここでは、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の診断基準から違いを解説します。
ADHDの診断基準
ADHDの診断基準は以下のとおりです。
- 社会生活や学業・仕事に影響を及ぼす程の多動症・衝動性又は不注意症状が少なくとも6カ月以上持続したことがある
- 症状は12歳になる前からみられた
- 症状は特定の状況だけでなく、2つ以上の状況でもみられる(学校、職場、休日など)
- 症状により日常生活に支障をきたしている確かな証拠がある
- 症状は他の精神疾患に該当しない
ASD(自閉スペクトラム症)の診断基準
自閉症スペクトラム(ASDの診断基準は以下のとおりです。
- コミュニケーションや対人関係の構築に問題がある
- 人間関係の発展・維持・理解が難しい
- 行動・興味・活動に対するこだわりがある
- 感覚過敏又は鈍感
- 症状は発達早期からみられていた
- 症状により問題が生じている
- 症状は知的発達に該当しない
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)からうつ病などの精神疾患を合併する可能性も
ADHDやASD(自閉スペクトラム症)を持つ人は、うつ病や不安障害、ストレス障害などの精神疾患を併発するリスクが高いとされています。精神疾患の発症には、特性によって生じるストレスや社会的な困難が影響しているようです。また、社会との適応が難しく孤立を感じやすいことが、精神的な問題につながるともいわれています。
精神疾患の合併が疑われたら精神科・心療内科に相談
ADHDやASD(自閉スペクトラム症)に伴う精神的な問題が疑われる場合、精神科・心療内科に相談すると良いです。精神科・心療内科では、抑うつ状態や強い不安、ストレス関連障害などに対する治療を主に提供しているため、精神疾患によるトラブルの解消を目指せます。
精神的な症状を対処することは、生活の質の向上につながるとも考えられているので、問題が生じた際は抱え込まず医師に相談してみると良いでしょう。
発達障害に適応障害等他の精神疾患を併発している場合は新宿うるおいこころのクリニックへお越しください
新宿うるおいこころのクリニックでは、適応障害や不安障害といった発達障害に伴い生じた精神疾患の診断・治療に対応しています。
特性による不眠などの症状に悩まされている場合でも、1人ひとりに応じた治療提案により無理のない症状改善を目指せます。治療では、患者様の不安を減らすため「副作用が怖い」「通院負担を減らしたい」などのご要望にも柔軟に対応可能です。
ご予約は公式HPやLINEから24時間承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
アスペルガー症候群とASD(自閉スペクトラム症)の違いは何ですか?
以前は、知的発達や言語発達に遅れがないものをアスペルガー症候群として分けていましたが、現在は、ASD(自閉スペクトラム症)の一部として扱われ、診断基準が統一されています。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の違いを教えてください
ADHDは注意力の欠如や衝動的な行動が特徴、ASD(自閉スペクトラム症)は、強いこだわりやコミュニケーション難が特徴という違いがあります。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の違いは?特徴や症状例、診断基準から比較
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