適応障害とは、環境に馴染めず大きなストレスがかかってしまう精神障害です。
ストレス環境によって生じるものであり、誰もが陥る可能性を秘めています。
中には、「もしかしたら適応障害かもしれない」「病院に行くのが少し不安」という方もいるのではないでしょうか。
今回は、適応障害の概要や検査方法、治療方法などを解説します。また、症状のチェックリストもご紹介しているので、自分や周囲で心当たりのある方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
適応障害とは
適応障害とは、ライフスタイルの変化や環境に馴染めず、ストレスとなって生活に影響をもたら精神障害のことです。
きっかけはさまざまで、転職や離婚、家族の死などの出来事が原因となり、気分が落ち込んだり、不安やイライラを感じたりすることがあります。また、身体的な症状としては倦怠感や過呼吸、頭痛などがあり、暴食や喧嘩などの問題行動も生じる可能性がある疾患です。
症状は、ストレスから離れることで解消しますが、症状を放置している場合は慢性化してしまうことも考えられます。
そのため、早い段階で休養をとったり、専門医に相談したりすることが大切になります。
適応障害とうつ病の違い
適応障害とうつ病は、気分が低下するという点では似ていますが、適応障害の原因は環境であるのに対し、うつ病は突然起こったり体質的に生じたりするものです。
具体的には、適応障害はストレスに関連したものであり、ストレスが解消されれば症状も改善されることが多いです。一方、うつ病はストレスとは無関係に発症することもあり、環境を整備しても長期にわたって持続することが多い疾患となります。
また、適応障害では楽しいことに対して反応がありますが、うつ病では何に対しても楽しめず、常に気分が落ち込んでしまいます。薬物療法も、適応障害の場合は効きにくい傾向にありますが、うつ病の場合は効果が出やすい傾向にあります。
診断基準や検査方法
一般的に、適応障害の診断基準は下記のようになっています。
- 明らかなストレスにより、日常生活に支障をもたらしている
- ストレス要因に晒されてから、3ヶ月以内に症状がみられる
- ストレスから離れたのち、症状が6ヶ月以内に改善される
- 他の精神障害や身体的疾患がない
適応障害を検査する際は、血液検査や画像検査ではなく、国際基準で定められた精神疾患の診断ガイドラインをもとに問診等を行います。
その際、上記の内容をヒアリングしたり、症状を確認したりすることで、適応障害という診断が下されます。
適応障害の診断チェックリスト
下記に当てはまる場合、適応障害の可能性があります。
自身がいくつ該当しているか、チェックしてみてください
- 常に緊張していたり、落ち着かなかったりする
- 不安を感じることが増えた
- 食欲がなかったり、味がしなかったりする
- 2週間以内に2kg以上の体重の増減があった
- 憂うつな気持ちが続いている
- 寝付けない、目が覚める等の睡眠障害がある
- 寝ても疲れが取れない
- 突然涙が流れる
- 自分はダメな人間だと思う
- めまいや立ちくらみ、動悸がある
- 死にたいと思う
※上記のチェック項目は、あくまで一般的な症状をまとめたものです。適応障害と断定するものではないため、不調を感じている際は早めに精神科・心療内科へご相談ください。
適応障害の主な症状
ここでは、適応障害の代表的な3つの症状をご紹介します。
落ち込むなどの抑うつ気分
抑うつ気分とは、日常生活に対する興味や喜びが失われたり、悲しみや無気力状態が続いたりすることです。集中力の低下やネガティブな思考回路など、負のスパイラルに陥る場合もあり、放置しておくとうつ病に発展してしまう恐れもあります。
動悸や焦燥感などの不安症状
不安症状では、パニックや強い恐怖、焦りなどを感じることがあります。
特に、ストレスとなった出来事を思い出すことで、突然涙が出てきたり、動悸や息切れが起こったりもします。また、手足のしびれや震えが起こることもあり、その際は深呼吸をして体を落ち着かせることが大切です。
涙が止まらないなどの身体症状
身体症状としては、頭痛や胃痛、眠れない、涙が止まらないなどの症状が現れます。
ストレスを感じていたり、思い出したりする際に発生する場合が多く、倦怠感や肩こりなどが生じる場合もあります。ストレスから離れることで解消されますが、距離を置けない場合は別の対処法を検討することが大切です。
適応障害になる原因
適応障害になる原因はさまざまですが、ここでは「生活面」「仕事面」で考えられる原因をご紹介します。
生活面
生活面での原因としては、引っ越し、結婚、離婚、出産、子育て、家族の死などがあげられます。生活面において、自分の役割やアイデンティティを変えたり、新しい環境に慣れる必要があったりする際、ストレスを感じやすいといわれています。
仕事面
仕事面での原因としては、就職、転職、失業、昇進、降格、パワハラ、セクハラなどがあげられます。仕事を通して自分の能力を強く否定されたり、職場の人間関係に問題が生じたりした体験が引き金となるケースが多いです。
適応障害になると顔つきが変わる?
適応障害になると、表情が現れなくなったり無気力になったりするため、無表情でぼんやりとした顔つきが変化する傾向にあります。
周囲の人から「前より顔色が悪い」「疲れているように見える」といわれる回数が増えた際は、少し注意してみると良いでしょう。
適応障害になりやすい人の特徴
適応障害は、個人の性格やストレス耐性によって、なりやすかったり、なりにくかったりする場合があります。
中でも、なりやすい人は下記のような特徴があるといわれています。
- まじめで責任感が強い人
- 几帳面で完璧主義な人
- 心配性で他人の目が気になる人
- 傷つきやすく落ち込みやすい人
- 繊細で変化に慣れるまでに時間がかかる人
- 頼みごとを断れない、助けを求められない人
- 自分で解決しようとする人
適応障害になりやすい人は、ストレスを一人で抱えてしまったり、過度にプレッシャーを感じてしまったりする傾向にあります。また、繊細で傷つきやすく、落ち込みやすい性格傾向も見受けられ、変化に敏感な方が多いです。
これらの特徴が全ての人に当てはまるわけではありませんが、個人の特性に合わせて適度な休憩やリラックス法をとるよう心がけると良いかもしれません。
適応障害の治し方・治療法
一般的に、適応障害の治療では「休養」「環境調整」「精神療法」「専門家に相談」が採用されます。
ここでは、それぞれの治し方について解説します。
休養(休職・休学など)
休養とは、休職や休学などを通してストレス要因から離れ、ゆっくり休むことです。
適応障害は、ストレスによって引き起こされるため、離れることで回復が期待できます。休養中は好きなことをしたり、リラックスしたり、睡眠を十分にとったりしましょう。
ストレスのない環境で安静にすることで心の負担が軽減され、回復に向かえるといわれています。
環境調整
環境調整とは、ストレス要因に触れる機会を減らしたり、避けたりすることです。
例えば、仕事が原因の場合、長期休暇の取得や転勤、転職を検討します。学校が原因の場合、休学や転校、退学を個人に合わせて実施します。
また、生活が原因の場合は一時的に距離を置いたり、相手と話し合ったりするなど、環境調整をすることでストレス源との関わり方を調整できます。
精神療法
精神療法とは、カウンセリングなどを通して自分の気持ちや考え方を整理することです。精神療法には、思考を変える認知行動療法、人間関係に焦点をあてる対人人間関係療法など、いくつかの種類が存在し、症状によって最適なものが選ばれます。
また、必要に応じて治療を組み合わせることもあり、症状の根本改善が期待できる治療法です。
専門家に相談
適応障害に陥った場合、自分だけで治そうとせずに専門家へ相談することが大切です。
専門家とは、心理カウンセラーや臨床心理士だけでなく、精神科・心療内科などの医師も含みます。
知識をもつ医師に相談することで、自分の状況や感情を客観的に見つめ直せたり、適切な治療法を受けたりできます。また、必要に応じて薬物療法も導入できるため、休養や環境調整では症状の改善が見込めない場合でも、回復の可能性が高まるのです。
当院では、個人の症状や希望に合わせた適切な治療法を提案しています。
薬物療法はしたくない、環境は変えられない、などのご相談も可能ですので、詳しくは当院の公式HPをご確認ください。
適応障害で病院に行く目安
目安としては、適応障害の症状が1~2週間継続した場合、病院に行くと良いかもしれません。この数値はあくまで目安であり、学校や会社へ行くことを体が拒んでいるなどの症状がある場合は、早めに受診することをおすすめします。
また、早期に専門家の診断や治療を受けることで、回復が早まることもあります。病院に行くことに抵抗がある場合は、まず信頼できる家族や友人に相談してみましょう。
適応障害は、誰でも経験する可能性がある精神障害です。症状に心当たりがある場合は、自分の気持ちを認めて、周囲の手を借りることが大切です。
適応障害の疑いがある場合、何科に行けばいい?
適応障害の疑いがある場合は、精神科・心療内科に行くことをおすすめします。
精神科・心療内科では、現在の環境やストレス要因、生い立ち、性格などヒアリングした上で、回復に必要な検査や治療法の提案、心理的サポートを行います。
また、気分の落ち込みや意欲低下などの精神的不調を抱えている場合は精神科、食欲不振や倦怠感などの身体的不調を抱えている場合は心療内科など、症状によって選択すると良いかもしれません。
東京の精神科・心療内科新宿うるおいこころのクリニックでは適応障害の治療が受けられる
この記事では、適応障害の概要や検査方法、治療方法についてご紹介しました。
適応障害は、ストレスによって心身のバランスが崩れてしまう精神障害のことで、不安や抑うつなどの症状が現れます。
治療では心理療法や休養、環境調整が用いられ、ストレスとなる原因の改善を行います。また、症状を放置しておくことでうつ病になる可能性もあるため、早めの受診を心がけると良いかもしれません。
当院では精神科・心療内科を併設しており、適応障害の根本治療が可能です。
公式HPやLINEでは24時間予約でき、即日の予約も受け付けています。急ぎで相談したい方や、症状に不安がある方はぜひ活用してみてください。
よくある質問
適応障害は治りますか?
適応障害はストレス要因から離れることで回復します。完治できる病気であるため、重症化する前に早めの受診をおすすめします。
適応障害かもしれません。私が悪いのでしょうか。
適応障害は誰でもなりうる疾患です。環境や大きいストレスが要因であり、決して本人に問題がある疾患ではありません。